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Chapter #0001 First Battle with "Good" Enemy / Segment 1-2 死地へ

マルゲリータが商隊に戻ったときにはコンプレットは坐禅をしながら待っていた。

「チビクロ、首尾は?」


コンプレットは淡々としている。

「あとはドラゴンだけです」


マルゲリータは、ぐるると喉をうならせた。

「拙者より早くワイバーンを片付けたか。やっぱできる子じゃん、不遇だったな……チビクロ呼びはやめるよコンプレット。さて、ドラゴン討伐の先行事例はギルドどころか軍にもない……我らが最初となる! たぎるたぎる」


マルゲリータは両手の拳を打ち付けあって修羅の愉悦に満ちた笑みを浮かべた。コンプレットはそれを見て慈愛に満ちた顔をした。


商隊の警備隊長ゴリラ人男性が問う。

「どうなりました」


マルゲリータは彼の前にウィンドウを展開。

「既にワイバーンを2取り、西に1東に1の骸。ドラゴンと推測される正体不明のデカいのは北から攻めてきたが東へ移動した。そちらの状況は」


警備隊長はザッと音を立てて敬礼した。

「ドラゴンブレスに備え神通耐火フィールド展開中、更に広範囲に魔法探知遮断フィールドも展開中であります」


マルゲリータは頭を下げた。

「最適です、ありがとう。だが神通消費が激しい、早くカタをつけます」


コンプレットは目をつぶり坐禅しながら冷静かつ優しい声で言った。

「ドラゴンはワイバーンの骸を検分中。我が手にかかったものの検分を終え、ここを南へ迂回し西へ」


マルゲリータが自らの前のウィンドウを見つめる。

「光学ステルス魔法は切っているな。無駄だと判断したのだろう。西で止まった。ワイバーンの骸と同座標……少し周囲をうろうろしている。でもドラゴンが商隊いびりするか……都市を襲撃して軍と交戦した例はあるけど総指揮官としてだし、ギルドには交戦記録そのものがないはず」


コンプレットは飄々と言った。

「私の初陣に挨拶にきたのかもしれませぬ」


マルゲリータは笑った。西での交戦を決め、商隊に東へ逃げるよう打電。

「はは! 面白いなコンプレットさんてば、こんな時に冗談かよ。初陣ってマジ? 嘘だろ? まぁいい、西へ打って出よう! 商隊の装備じゃドラゴンには無力。二人でシンガリだ、後ろに乗れい!」


20秒も経たずにコンプレットとマルゲリータは濃霧に出くわした。マルゲリータが顔をしかめる。

「この霧、アレか」


サンプルを解析すると鏡状の氷だ。

マルゲリータは命令調だ。

「これは吸うな。バイクの神通でクリアしながら進む」


すぐに視界がほぼゼロになった。霧というより積乱雲の濃度である。バイクの赤外線/Cバンド電波ハイブリッドセンサーはゆっくり回避動作している巨体を捉えている。


意図して敵と異なる方向に弱い試し打ちをして、その減衰を解析しレーザーがそれに到達することは不可能であることを確認した。


マルゲリータは低輝度モードのウィンドウを見ながらニヤリとした。

「よし『鏡霧』を引き出した! 確かにレーザーはあれに弱い。最大出力の10kJでも通せない。近ごろのあいつらは科学に強い。鏡霧は遣われ始めてまだ一年も経っていない、アレにやられた冒険者もまだ少ないが、拙者は鏡霧状態ではかえって実弾が有効なのをグリフォン戦・キメラ戦で実証済み。いまどき実弾なぞ遣う者は、向こうもこちらを見えていないことを分かっている者だけだ。相手はドラゴン、ジャベリン・プラスをケチらないで全弾行く。赤字覚悟の大サービス、最大火力で飽和攻撃だ。こちらはハイブリッドで照準、着弾までの誘導はバイクのAIと神通通信、念のために暗号化もする。ジャミングされるやもしれぬ、誘導弾の自律AIにヤツを学習させる。西洋の書物ではドラゴンの弱点は心臓。三発は心臓を、二発は頭を狙う」


バイクのクッション格納部から5つの多目的誘導弾を取り出し、バイクのAIとリンクさせてからスイッチを押す。神通光学ステルスをかけて目標座標を先行入力、自律神通移動で1分かけてドラゴンを東西南北と上から距離100mで包囲。ソフトローンチの進化形だ。

「すべて距離約100、AIリンク良好・自律AI学習量安全率すべて1.25突破」


ディスプレイでそれらを確認したあと、挙げた右拳を鋭く振り下ろした。

「てーッ!」


5つの砲弾のロケットエンジンが火を噴き、神通通信による誘導が開始された。こうなると神通ステルスは意味がないので自動的に切れる。同時にドラゴンの方角で金色の光が輝き、ディスプレイが多少時差しつつ赤い四角を5つ映した。


マルゲリータは不敵に笑った。

「全弾コントロール不能! やはり神通通信はジャミングされた。砲弾の自律AI頼みだ、ダメかもしれない。商隊が退避する時間稼ぎ、接近戦に移る……コンプレット、どうする? 商隊を警護するか、拙者とともにシンガリか」


コンプレットはにこにこと無言でバイクの後部座席に乗った。


マルゲリータが自分の頭をツンツンしてニヤリと笑う。

「そんなに死にてぇのか、頭おかしいんじゃねぇの?」


コンプレットはふわあとあくびを真似た。

「ようやく前座が噺を終えましたね。悪いけど退屈でした」


マルゲリータもシートに座る。

「ドラゴンだ。二つ目じゃねぇ、真打ちのトリだぞ。分かっているよな?」


ドラゴンの方角で七色にきらめく呪符と魔法陣が5つずつ重なって0.1秒で15m大まで広がり、バイクと二人を照らす。

「三遊亭圓生を期待してよさそうですね。名人の独演会……早く聞きに行きましょう」


遅れて激しい爆発音が二人に到達する。

「ああ、きっと死ぬほど聞き惚れるぜ」


互いが霧雨に濡れてバイクのライトを反射している。雨滴の音は静寂よりも静かだ。二人は二秒ほど見つめあった。


タンデムなのでコンプレットはマルゲリータに抱きつき、腹に腕を回して右頬と右耳を背中に押しつけた。


マルゲリータは座り直して死地へとアクセルをひねった。

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