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――はずであった。
「おぎゃああああああああああああ」
「あらあら、かわいい女の子ですこと!」
(………………ん?????なんかふわふわする。それに体もちっちゃいような……?声なんて、おぎゃあって……。おぎゃあ??)
「おぎゃああああああああ!?(なんで私赤ちゃんになっているの!?)」
死んだはずの瀬奈。目を開けるとどういうわけか見覚えのないところにいた。
しかも、瀬奈の目の前にいる女性たちは何やらドレスのようなものを着ている。その奥に見える室内も、煌びやかでとても日本とは言い難い。
(え、何この状況?誰?ここはどこ??ていうか私殺されたんだよね?)
瀬奈は玄道に刺された恐怖を思い出し、心臓が早鐘を打ち出した。
(蒼真は?どうなったの……?)
「_____」
目の前の女性たちが何やら話しているが、その間にも瀬奈の心臓は休むことなく早鐘を打ち続ける。
(変な部屋……。そこら中に宝石?みたいなのがあるし、ゲームの中みたい……。……いや、まさか。そんなことってあるの……?信じられない……だけどもしかしたら)
息が詰まり、体が混乱に支配されていく中、瀬奈の脳内にある一つの可能性が浮かぶ。だが、赤ん坊の脳には情報が多すぎたのか、頭が割れそうに痛み、視界がゆがむ。
(もう、無理……)
そして瀬奈の意識は深い闇へと沈んでいった――。
(う………………)
目が覚めると、そこはどこかのお金持ちの部屋か、というくらい豪華な部屋であった。
「ああ、アリア!目が覚めたのね!」
(……アリア??ああ、やっぱり異世界なんだ、ここ……)
自分は異世界転生したのだということを確信した瀬奈は、どこかで聞いたことがある名前だなあとぼんやりしている頭で思いつつも、アリアという名前が今世の名前だということを認識した。
「かわいいかわいいわたくしたちの子!」
徐々に意識がはっきりしてくると、瀬奈――もといアリアは違和感を抱いた。
(あれ、アリアって《マリアの幸せ》のアリアじゃない?いや、世界にアリアはたくさんいるかもしれないけど!)
この両親らしき人物の顔が、ゲーム内にほんの少しだけ出てきた、まさにアリアの両親のそれなのだ。
(うそでしょ、最悪……!じゃあ私将来的に国外追放という名の処刑エンド迎えるってこと!?逃げられないじゃん……死亡確定じゃん……)
生まれて早々終わった、と絶望するアリア。
だが、そんな本人の思いなど知る由もなく、アリアの両親は飛び上がって喜び続けている。
しかしアリアは、まだ希望はある、と策を考えていた。
(何とかして第二王子との婚約を避けないと……!そのためには出会いも避ける必要があるよね……。理由を考えないと。何かないかな……)
そこまで考えて、アリアはぱっとひらめいた。
(そうじゃん、病弱だって設定にすればいいんだ!)
幸いアリアは生まれたばかりで健康状態は知られていない。さらに、夜会やデビュタントなども「病弱だから」「体調が悪いから」という理由であれば避けられるはずだ。万が一第二王子に出会ってしまって婚約などという話が出てきたとしても、病弱だから妃にはなれませんと断れるはずである。
(私天才かもしれない。それに本当に病弱かもしれないし)
先ほどまで飛び上がって喜んでいた両親はアリアを見ると、
「ああ、アリア。どうか元気に育っておくれ」
といった。
(ごめんなさい、お父様、お母様。私は病弱設定で生きていきます!)
若干の罪悪感を抱きつつも、気づかないふりをして――
――十三年の時がたった。
結局、アリアは実際に病弱だったのか、というと……。病弱とは程遠い、健全すぎるのであった。
(うーん、これまでは何とか病弱設定でやってこれたけれど……。もうすぐデビュタントがあるんだよね……。行かなくて済んで、あわよくば第二王子にあわないといいなぁ……)
十三歳になったアリアは、これまで病弱なふりをして様々な人を欺いてきた。そのたびに罪悪感はあったものの、生きていくためだと自分に言い聞かせてきた。
(お母様たちに打診してみるか)
「お母様……」
そばにいた母を呼ぶ。
勿論、病弱な女の子らしくか弱い声で。病弱令嬢らしい行動もなかなか板についてきたようだ。
「どうしたの、アリア?」
「その、もうすぐデビュタント、ですわよね……?わたくし、とてもいけるような体調では……」
ケホッ、とせき込むふりをしてみれば、母はすぐにこういった。
「ああ、それならもうお断りの状を出してあるわ。デビュタントに出られなかったものは、同年代の第二王子殿下が直々に各邸に来てくださるそうよ」
「……は?」
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