LEVEL-83 潜入キングダムオブマーゾ②
オルタナと再会したたかしだったが、久しぶりの父親はもう虫の息だった。その父の最後の言葉が今、最愛の息子へと伝えられようとしていた。
「たかし?母さんは元気か?」
「うん、滅茶苦茶元気だよ!エリアハンで平和に暮らしてる。」
「そうか…。それなら良かった。たかしは随分大きくなったな。」
「俺、もう16だぜ?父さんが最後に俺を見て10年も経ってる。」
「ふん…。仲間がいるんだな?大切にしてやらないと、父さんみたいになるぞ?」
「どういう訳だよ?最初から一人旅してたんじゃねーのかよ?」
「残念だがそれを詳しく話している時間はない様だ。」
「おい、こんなところでくたばるんじゃねーぞ?まだ何も親孝行してやってない。」
「甘えるな!お前も勇者を名乗るなら、腹をくくれ!そんな覚悟では、大魔王マーゾを打ち負かす事など出来ないぞ?ここまで来れたと言う事は最早この私よりも、お前達の方が実力では上と言う事だろう。例えこの私が死んでも貴様らが世界を平和にしてくれる。心置き無くスッキリ死ねるってもんだ。」
「生きてその平和を見届ける事は出来そうに無いのか?」
「自分の体だ。自分が一番よく知っているに決まっているさ。」
すると、オルタナが地面に突っ伏した。
「親父?しっかりしろ!」
「たかし、お前ならやれる。何せ俺の自慢の息子だからな。」
そうして、オルタナは息を引きとった。エリアハン生まれの英雄が死んでしまった日になった。しかしながら、たかしは悲しみにくれている暇など無い。ここまで来たのだから、大魔王マーゾを倒すのみである。いったん、オルタナの遺体をキングダムオブマーゾからダールリムルまで運び、マーゾを倒してから父オルタナの埋葬をする予定であった。たかしは強い男だ。己の父親が死したにも関わらず、それを顔に表す事なく、勇者として己がなすべき事をわきまえている。顔にも言葉にも表す事は無かったが、たかしは泣きたい気持ちであった。しかしながら、自分にはまだ泣く前にやる事がある。それをやらなければならない。
「まさか、回復魔法が効かないなんて。」
「仕方ねーよ。それほど生命力を消費してたって事だろ?」
「せめて蘇生魔法でもあればな。」
「それはこの世界では契約不可能な魔法では?」
「んなこたぁ、百も承知。ここが天命だったんだ。」
「オルタナさん、悔しげだったな。」
「いや、愛する息子に最後に会えてほっとしたんちゃう?」
「そうかもな。死に顔はとても良い表情をしている。」
と、父さんにしばしの別れを告げたたかし達はいよいよキングダムオブマーゾの最深部に入って行った。




