LEVEL-97 凱旋
エリアハンに戻ると多くの国民がたかし達の帰りを待っていた。この国を旅立った事の記憶がつい昨日の様に思い出される。
それもそのはず、まだ一年しか経っていなかった。様々な経験をして戻って来たのである。まずはそれを、エリアハン国王に報告した。たかしは成長した姿でエリアハン国王に接見した。
これを持ってたかし、ゴパン、リュラプス、オイツォフのパーティーは解散となった。それぞれ思う所はあったが、もう魔王と言う共通の敵がいなくなった今、パーティーを存続する意味は無い。これからは個々にやりたい事をやる。それがエリアハン国王からの最後の命令であった。
それからたかしは、実家へも久しぶりに顔を出した。元気そうな母の姿に嬉しく、また母も息子の成長した姿に感動した。ガルドアレフで大魔王マーゾが倒された事は、地上世界にもきちんと伝え広がっていた。噂と言うのは風に乗り伝わるものである。
さて、一仕事終えたたかしはとりあえず疲れたので少し自分の部屋で休む事にした。先の事はそれから考えても遅くはない。大勇者であり、英雄となったたかしにとって目指すべきものは、己の強さへの探求であり、新たなフィールドへと向かっていた。今度は仲間の助けを借りない。一人でどこまで行けるか、試して見たくなった。
たかしは実家で荷物の整理をした。預かり所を利用して、手には最低限の物しか持たない。それがたかし達パーティーの流儀であった。預かり所では住所を指定すると、その指定した場所まで送り届けてくれるシステムもある。そのサービスを利用して実家には大量のアイテムが送られていた。それを整理する所からたかしの第2章は始まっていたのである。重要アイテムはパーティー解散前に全て返却したが、大量のアイテムを前に感傷に浸っている暇はない。たかしは次なるステージに向けた想いをどんどん膨らませていた。その事ばかりを考えてしまうのだが、たかしはその心の高ぶりを、はやる気持ちを抑えるのに苦労した。
「おい?これから俺達どうすんだ?」
「たかしが勝手にパーティー解散したからね。アイーダの酒場戻りさ。」
「たかしに考え直す様に何とか言いなさいよ?」
「その必要はないからこうやって新たな勇者を待ってるんじゃ無いか?」
「所詮俺達は雇われの傭兵。大した話ではない。」
「大魔王マーゾを倒した伝説の勇者ご一行が勇者待ちですか?」
「仕方ねーだろ?たかしの奴に呼ばれるかも知れねーし。」
と、たかしの解散宣言でパーティーの一味は大混乱していた。