LEVEL-96 つかみとった未来
「ぐわぁぁあー!!」
大魔王マーゾは皆デインをくらうと、その場に倒れ込んだ。もう立ち上がる事は無いだろう。たかし達は全力を尽くした。もう体力も魔法力も限界であった。マーゾを倒した瞬間勇者たかしの闘いは幕を閉じたのである。つかみとった未来が世の中の人間に平和をもたらした。ガルドアレフの闇に包まれていた空は、いつの間にか青く澄み渡っていた。
「これで終わった…んだよな?きっと。」
「あぁ、胸を張って故郷に帰れるよ。俺達は勝った!」
「もう、私魔法使わなくて良いのね?やった!」
「さてと、可愛い息子と娘に再会するべかさってな!」
大魔王マーゾは最後までその強大な力を誇示し続けた。それを打ち破ったのはたかし達パーティーの実力だ。いや、理論的にはパーティーの実力だけではなく、他の何かが作用したから勝てた。平和を祈る人々の想いや願いが、物理的な理屈を越えた。と考えるのが自然だろう。
いずれにしても、たかし達はよくやった。強大な大魔王マーゾを前にしても、臆する事なく立ち向かっていった。自分達がこれまでに積み重ねて来たものを遺憾無く発揮したのである。たかしは思う。大魔王マーゾも本来ならばガルドアレフの只の一市民にあるはずであった。
しかし、運命の女神はマーゾがそのありきたりな一般人の道を歩む事を許さなかった。そう考えると、不思議とマーゾには同情の念が沸き起こってくる。正直な所はそうだったのかもしれない。ただ、それだけがむなしかった。人間としての平凡な幸せをつかみとれなかったマーゾを、その呪いのチェーンから引き剥がせた事だけが、たかしの心に立ち込めていた暗雲を振り払っていたのである。
勇者として戦ってきたが、一歩間違えばマーゾの様になっていたかもしれない。たかしは、自分が魔王を倒した。その実感が込み上げて来た。さぁ、戻ろうよ。故郷へ。戦いは終わった。
「たかし、そろそろキングダムオブマーゾから出ようぜ?」
「あぁ、ちょっと先行ってて。」
「お、おう。」
と言うと持っていた聖水をマーゾの体にかけてやった。
「成仏しろよ?マーゾ。そして来世では人として幸せになれ。」
「ごめんごめん。待たせたな。」
「成仏してくれると良いな。」
「見てたのかよ?」
「たかしのやりそうな事だしな。どれだけ同じ時間を共有していると思うのかよ」
「それは一理ある。マーゾが浮かばれればそれで良い。」
「どこまでもお人好しだね。まぁ、それがたかしの魅力なんだけどね。」
こうして、たかし達の闘いは終わった。