番外編⑯オルタナの物語②
オルタナは勇者として完全ではなかった。いくら強くても一人では限界がある事を彼は知らなかったからである。仲間と力を合わせる事は決して恥ずかしい事ではない。
少なくとも、一人で乗り越えられないのであるとしたならば、仲間と力を合わせる事が必要なのではないだろうか?勇者とは、単に勇気のある者の事を指す訳ではない。勇者とはどの様な時であっても、適切に勇気を行使出来る者に与えられた聖なる言葉なのである。
オルタナに欠けていた物があるとしたら、その一点だけであっただろう。オルタナが少しでも誰かの力を借りる事を恐れずに心を開けていたならば、キングダムオブマーゾでヒドラ程度のモンスターにやられる事は無かっただろう。
しかし、オルタナと言う勇者がいなければ、たかしが後を継ぐ事も無かった。たかしはたった一人で恐怖に立ち向かう父の背中を見て勇者を志したのである。勇者の定義は難しい。モンスターにやられ、夢半ばで死してしまったオルタナは、目標達成度合いで言えば、50%程度のものでしか無かったのかも知れない。勇者を名乗る以上は結果も求められる。
それは仕方の無い事なのかも知れない。しかし、オルタナが後世に残した功績を考えたら、勇者オルタナの価値も上がるだろう。地上の誰もが成し遂げられ無かった地上→ガルドアレフへの到達はこの世界では遺業だろう。
そしてそのオルタナの意志を継いだ息子たかしが、その無念を必ずや晴らしてくれるだろう。オルタナはたかしが幼い頃には家を出ているから、父親としてたかしに何か出来たと言うものは無いかも知れない。だからこそ、一人の父親として申し訳ないと言う気持ちはあった様だ。オルタナもたかしに似て、不器用であった。言葉や手紙にして残すはずもなく、父も子もコミュ力がめっちゃ低かった。上手な親子関係では必ずしも無かったが、最愛の息子の手の中で云ったオルタナは幸せ者であっただろう。
「これ?親父の剣?めっちゃボロボロだ。」
「世界の人達の為に振るった勲章だな。」
「とりあえず、父さんはダラトームの教会に運ぼう。」
「だな。その方が安心して大魔王マーゾに立ち向かえるな。」
「この剣は俺が身に付ける。」
「たかし?それかなり刃こぼれしているけど?」
「困った時の御守りさ。」
「まさか王者の剣が折れるなんて事は…。」
「考えたくはないけど、可能性ゼロじゃないから。それにこの剣は俺に勇気をくれるんだ。」
「よし。じゃあそろそろ敵の本丸を攻め落とすぞ!」
「おう!!」




