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ズッ友宣言をしてきたお隣さんから時々優しさが運ばれてくる件  作者: 遥風 かずら


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32.それは何とかします予定

「あ~……そこの栗城幸多。ちょっとこっちに来てくれ!」

「はい?」

「こっちだ、こっち……すまんけどこの部屋で」


 自習時間。


 トイレに抜け、教室に戻ろうとする俺に永井先生が声をかけてきた。永井先生といえばバイト先の永井さんとのあれこれ以来、何かと心配をされるようになってしまった。


 だからといって目をつけられているわけでもなく、二人だけになった時には愛称で呼ばせてもらえるくらい近い関係になった。


 二人だけになる空間は教員室などではなく、指導室だったりするせいか呼ばれるときは大体申し訳なさそうにされる。


「何でしょう? 可織ちゃん先生」


 流石に先生はつけるが、俺に名前を呼ばれてどことなく照れくさそう。


「う、うむ。実はな……栗城。お前に対し、とある疑惑がかけられている。あたしが直接聞いたわけじゃないんだが、クラスの一部女子がそういう話を相談してきてな。このまま放置するとクラス全員に広まりそうなんだ。心当たりはありそうか?」


 とある疑惑?


 あまりいい予感はしないけど、心当たりというより思い当たりそうなのはあるな。


「正解じゃないかもですけどあります」

「そ、そうか。なら、手短に話す」


 笹倉問題、あるいは村尾の関係だろ多分。


「笹倉秋稲を追い回し、つきまとっている……のはお前か? お隣さんだからなくはない話だが、それだとしたら笹倉から先生に話がくるから違うと思ってるんだが……」

「もちろん違いますよ」

「だよなぁ。お前と笹倉は仲がいい……むしろ付き合ってるといってもいいもんな。おまけに笹倉妹に懐かれているとも聞いてる。そんな奴が面倒な真似をする必要はないよなぁ……」


 ほぼ村尾の件で間違いなさそうだ。というか、付き合って無いし可能性が絶望的過ぎるんだが。


 しかし間接的に先生に相談にくるということは、それを広めようとしている誰かがいて他の女子を使ってるって意味なんだよな。


「可織ちゃん先生はそれが誰か分かってないんですか?」

「名前は把握してる。今はあえて言わないが、確証はないから伏せておく」

「それなら探るようなことは言いません。ただ、クラス全員に俺の変な話が伝わってしまった場合、俺はどうするべきですか?」

「そうなった時でも笹倉を支えてやれ。彼女がお前を嫌ってないと分かれば、女子たちも気付くはずだ」


 そう上手くいくかどうか。


 とはいえ、俺の味方が笹倉本人だとしたら噂が間違いだったと判明するはず。


「可織ちゃん先生。心配いりませんよ。俺が何とかします……予定です」

「栗城は頼もしいのか頼りないのか何とも言えんな……。だが、先生は栗城が何とかすると信じている。あたしの妹の件でも動じなかったお前だからな!」

「いやぁ、あれは先生のおかげというか~」


 ……などなど、多少長くなったトイレを済ませ、俺は教室に戻った。


「随分長かったな。まぁ、それはどうでもいいが、お前、気づいてるか?」


 だが俺が席に着くと、戻ってきた俺に安原が神妙そうな顔で妙なことを訊いてきた。


「えっ? 何が?」

「……気づいてないのか鈍いのか知らんけど、お前の変な噂話が女子の間で広まってるぞ。この教室でも不穏な空気っぽいのが流れかけてる」


 自習時間だからあまり気にしてなかったけど、教室に戻ってきた俺を見る女子の目が少しだけ気にはなった。


 とはいえ、男子の大部分が居眠りをしてるし女子も全員そうではないので今は気にしないことにする。だが、安原の言うこれが可織ちゃん先生の懸念だとしたら、その出所を調べないと。


「まぁ、何となく感じてるけど、安原は何か聞いてる?」

「オレはお前の態度や永井への接し方で分かってるから信じちゃいないけど、笹倉秋稲につきまとっている奴がいる――って話が出てる」

「そっか……。まぁ、自分で何とかする予定だから心配いらないよ」

「それならいいが、青夏ちゃんにはきちんと言っておけよ?」

「へ? 何で青夏?」


 そういや、俺と青夏が付き合ってるって思われてるんだっけ?


「笹倉の妹にして賢い子だからな。誤魔化すなってことだ」

「あ~」

「そんだけ。オレは面倒事はごめんだから、お前に何かを言うつもりはないし、誰かの味方にもならんけど陰ながら応援しとく」


 そう言って安原は机に突っ伏して居眠りを始めた。


 俺も前を向いて居眠りでもしようかと窓側に首を向けると、偶然にも秋稲の顔が俺の向けた先にあった。


「…………(ど、ども)」


 流石に口に出すわけにはいかなかったので、口パクで伝えることに。


「(あ・の・ね、お昼……一緒に、ど・う・で・す・か?)」


 俺に分かるように秋稲がはっきりとした口パクで伝えてきた。これを言われたら俺も素直に応じるしかないわけで。


「よ・ろ・こ・ん・で」


 俺の口パクな返事を見て、秋稲は顔を突っ伏して眠りに入った。


 可織ちゃん先生からの助言、安原からの情報――色々気になるところではあるけど、とりあえず秋稲とお昼を一緒に食べられるだけでもいいと思わなければ。

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