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ズッ友宣言をしてきたお隣さんから時々優しさが運ばれてくる件  作者: 遥風 かずら


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21.笹倉妹と別れのカウントダウン?

 このまま二人で動かずにいるのも変だよな。


 ……ってことで。


秋稲あきねさん。ところで、その手紙――」


 どんな内容でショックを受けたのか。


 笹倉が手にする手紙を覗き込もうとすると、


「おーーーっす!! 幸多こうた! そんなところで突っ立って何してん……おっと、笹倉もいたのか! おはよう!」


 背中を勢いよく叩かれた衝撃と同時に、それを打ち消すかのようなつんざく声が辺りに響いた。


 こいつは昔からそういうところがあるとはいえ、声デカすぎだろ。


「脅かすなよ、村尾」

「もしかして邪魔したか? それなら悪ぃな!」

「……いいえ。村尾さん。おはようございます」


 村尾の声と登場で警戒したのか、笹倉は手にしていた手紙をすぐさま隠し、村尾に対し淡々と挨拶を返していた。


 あまり親しくないズッ友なせいか、村尾にはかなり塩対応だ。笹倉会の時からあまりいいイメージを持ってないというのもあるだろうけど。


「村尾さん……かぁ。笹倉的におれは幸多よりも友達レベルが低いってわけか~」

「友達レベルって言われても俺には分からないけど」

「そうか? でも、あいつ……牧田から言われただろ?」


 笹倉会の時、村尾は花本と牧田の二人とすっかり仲良くなった感じがあった。そのせいなのか、村尾の口から牧田の名前が割と出る気がしているし休み時間に村尾から話しかけているのを何度か見ている。


「……いや、どうかな。俺は牧田とは普段あまり話さないから」


 村尾が声をかけてきたことで笹倉はすっかり大人しくなってしまった。やはり朝の昇降口、それも登校時間に留まっていれば誰かに話しかけられてしまうのは仕方がないか。


「ま、いいや。教室に行こうぜ!」

「そうだな」

「幸多と何か話してたみたいだけど、笹倉も一緒に教室行くだろ?」

「……そうですね。同じ教室ですから」


 偶然にしてはおかしい――というタイミングで声をかけてきた気がするけど、靴箱の位置もそう遠くないし登校時間に見かけたからってだけだろうな。


 結局手紙のことは謎のまま、三人揃って教室に向かった。


 その後は休み時間になっても隣から笹倉の視線を感じることもなければ、村尾も全く話しかけてこないまま昼休みを迎えた。


「栗城! 明日からのシフトの話だけど~一緒にメシ食いながらでいいか?」

「……え? あ~うん、分かった」


 バイトこそ一緒にやってはいるものの、学校ではあまり話さない安原から珍しく昼に誘われてしまった。いつもは青夏と昼ご飯を食べる約束をしているだけに答えに迷ったものの、バイトの話なので逆らわずに返事をした。


 安原と廊下へ出たところで俺を迎えにきた青夏と遭遇してしまうが――


「――あれっ? 幸多くん、どこ行くの?」

「え~と、ごめん! 今日はここにいる安原とご飯を食べるっていうか……」


 休み時間にでも連絡しておけばこんな鉢合わせは無かったのに。


「あっ、そうなんだ?」


 しかし、気まずそうにする俺とは別に青夏は安原の方を見つめている。その視線に気づいたのか、安原はすぐさま青夏に声をかけた。


「やぁ」

「こんにちは、先輩」


 面識はないはずだけど、俺と一緒にいる時点で一学年上なことに流石に気付くか。


「あぁ、後輩ちゃんか。そっか。すでにそういう関係とは、中々だな栗城!」

「い、いや、そんな大したものじゃ……」


 現時点で大した関係でもないんだよな。それなのに俺の言葉に青夏がムッとしてみせている。


「……なるほど。あ~それはそうと、オレは栗城と同じクラスの安原。今から栗城と昼メシ行くんだけど、君も一緒にどう?」

「えっ、いいんですか? お邪魔じゃないんですか?」

「邪魔なわけないよ。な? 栗城」

「そ、それはもちろん」

「じゃ、安原先輩。学食によろしくです!」


 俺の曖昧な態度に腹を立てたのか、青夏は頬を膨らませながら安原の隣に立って一緒に歩き始めた。


 こういう時に彼氏として率先して動かないとあっさりフラれてしまうんじゃ?


 俺の不安と心配が的中したかのように、学食に着いてすぐ安原の隣に青夏が座り、俺は二人と向かい合う形で座る羽目になった。


 安原と明日のバイトの話をするはずが、何故か青夏も一緒にバイトをする話に変わってしまった。


 しかも廊下で出会ってから数分も経ってないのに、すでに親しげだ。


「え~? いいんですか? わたし、事前面接とかされてないですよ~?」

「もちろん、正式にって話じゃなくて見学って形でいいよ。永井っておっかない女子……先輩がいるけど、青夏ちゃんなら問題無いよ」

「じゃあ行ってみます。いいよね、幸多くん?」


 下っ端な俺が駄目と言えるわけがない。安原が勝手に話を進めてるのもどうかと思うけど。


「永井さんには何て言うんだ?」

「あいつなら、栗城……お前にべったりだから問題無いだろ」

「わっ、ちょっ!?」

「べったり……? ふぅん? 幸多くん、わたしと()()()()関係なのに他の女子とも仲がいいんだ~? お姉ちゃんの言うように浮気症なんだぁ~?」


 何でちょっとした言葉だけで誤解されてるんだ?


 しかも笹倉からの評判どおりとか、教室でのことも共有されてるのか。しかし花本と野上の話はそもそも青夏が助けてくれての話なはず。


「ま、栗城と永井の話は冗談だけどな。で、青夏ちゃんは今、栗城と付き合ってるってことで合ってる?」

「ん~……どうですかね~? 幸多くんはどう思う~?」


 何で俺に訊くんだろう。青夏の表情だけで判断すれば怒っている感じじゃなくて、どっちかというとからかっているようにも見える。


「付き合っ――てるんじゃないかな?」

「ん~……うん。そうだね。安原先輩、幸多くんはどうやらそうみたいです」


 何で安原に確認しながら話してるんだよ。


 単なるバイトの話だけで終わる昼休み時間のはずが、かなり怪しい時間になっているのは気のせいじゃないような。


「そういや、青夏ちゃんの名字って――」

「笹倉です!」

「ほ~そっか。なるほど……そっかそっか。ま、詳しくは明日にでも話そうか?」

「は~い! それじゃ、お先に失礼します! 安原クン、幸多くん、またです!」


 うん?


 青夏とロクに話す間もなく、青夏だけ先に戻って行ってしまった。しかも安原への呼び方が変わっていたぞ?


「栗城。明日だけど、お前も同じとこでやるから気合い入れとけよな! じゃ、俺も先に戻るわ」

「えっ?」

「ゆっくり食べてていいぞ。まだ時間はあるからな」


 二人の会話に入れなかったどころか、食べるのも忘れていた。俺の知らぬ間に安原と青夏がいい感じになっていたのがショックだったというべきか。


 このままだと俺は青夏にフラれてしまうのでは?

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