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ズッ友宣言をしてきたお隣さんから時々優しさが運ばれてくる件  作者: 遥風 かずら


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19.色んな意味で期待されすぎ?

「よぉーし、そのまま、そのままゆっくり段ボール箱を下げろー!」

「えぇ……? お、重い……」

「いいぞー! さすが男の子だ!」


 連休が始まり、俺のバイトも本格的に始まった――のはいいのだが、やらされているのは何故か接客などではなく、倉庫の中でひたすら備品整理をやらされている最中だったりする。


 安原はすでにバイトリーダーの扱い。俺より早く入ったとはいえ、気が利く男子としてかなりの戦力と聞かされた。


 しかし俺の方はというと――


「――んー……栗城はスロースタータータイプだなぁ……」


 初めの時こそ『栗城君』だったのに、すでに呼び捨てされてたりして。とはいえ、目の前の永井という女子は姉御肌っぽい人だから仕方がないけど。


「そ、そうですか?」


 バイトしたことないし素早さを求められると厳しいな。


「ん。だからアレだ! 栗城はウチの下僕……じゃなくて、部下にすっから!」

「バイトですよね?」

「……だから何?」

「あ、いや」


 俺を鋭い目つきで見てくる永井さんが言うには、初めのうちは先に入ってるバイトが新人に教えるのが当たり前ではあるものの、判断には個人差があるとか。


 そのうち慣れたら一人で何でもやってもらうけど、新人の今なら先輩がつきっきりで教えてもいいらしい。その役割に則って今のうちに雑用その他を色々やらせておきたいとか。


 ……で、今は倉庫整理をやらされている。


「栗城は彼女いるか?」


 それほど広くない店舗内倉庫で段ボール箱整理をしていると、永井さんがニヤけた顔を見せながら意外なことを訊いてきた。


「え? い、いや、いないです……」

「本当か? こんなアミューズメント施設にバイトしてくるくらいだから彼女探しか、すでに彼女持ちかのどっちかだろ」


 それは極端な話だな。


 ……でもアミューズメント施設系バイトだとそうなのかも。安原も女子が好きでバイト始めたって言ってたし。


「いやぁ、残念ながらどちらでもないですよ」

「マジか! じゃあチャンス到来なんじゃね?」


 何のチャンスなんだろう?


 俺じゃなくて、実は永井さんがそういうタイプだったりするんだろうか?


「ま、それはともかくだ。お前、一番上の棚に手が届くか?」

「何とか」

「なら、そこにある段ボール箱をゆっくりでいいから下に降ろしてくれ。ウチが手伝うから」


 ――というわけで、実は必死に手を伸ばし意外にも重い段ボール箱をゆっくりと下に降ろそうとしている最中である。


「……くっ」


 見上げるくらい上の段に箱があって、そこから降ろすとなるとかなりの力が必要だったり。


 そんな情けない姿を間近で眺める永井さんが、プルプルと腕を震わせる俺に手を添えて、箱を下から支えてくれている。


 そしてもう少しで床に段ボール箱を置くという寸前になって、気の緩みでバランスを崩してしまい、とっさに近くの壁に体を預けて難を逃れ――たはずが。


「あはっ! なぁんだ、やっぱりウチ狙いか?」

「へ?」


 よくよく見ると、肘が永井さんの胸の辺りを突いている状態だった。そればかりでなく、無意識に力加減も出来ずに押しまくっている。


 わざとでもないこの行為に対し、永井さんは恥ずかしがるそぶりも見せず、俺をじっと見ながら期待の眼差しを向けているみたいだった。


「えっ? な、なんです?」

「脈あるんじゃね? なんて思ったんだけど、どう思う?」

「ま、まぁ、人間誰しも脈はありますからね」

「ほー? そっか、あるのかー! じゃあもっともっと意識を向けさせないとなー」


 ちょっと何言ってるか分からないものの、肘で胸を突いたことには怒ってもいないようだった。


 気になったのは、俺が言ったことあるいは肘行為の関係以後、永井さんの俺を見る目が明らかに獲物を狙う獣のように変化したことくらい。


「おーす! おつー。どうよ? 倉庫はきつかったか?」


 倉庫整理を終え休憩室に戻ると、休憩していたのか安原が声をかけてきた。


「いや、平気だった」

「……マジか? 永井が何か厳しくなかったか? あいつの新人へのしごきは半端じゃないって評判なんだが。まぁ、オレの時も……」

「そうなんだ? 全然平気っていうか、優しい人だよね」

「嘘だろ? あいつ、言葉も悪いが手が出てくるのはシャレにならないくらい早いんだぞ? それもなかったのか?」

「……まぁ、なかったかな」 


 安原の驚きと同時に、永井さんが部屋に入ってきた。


「おい、安原ぁ!! サボってんじゃねえぞこの野郎! 今からウチと栗城君と二人だけで休憩するんだよ!! 邪魔すんじゃねーよボケ!」

「うげっ!? うわー……何かやっちまったんだな」


 首を何度も左右に振りながら、安原は休憩室を出ていく。


 その去り際、俺に近づいて一言。


「永井はアレだ。気に入った奴につきまとうから覚悟しとけよ?」

「――え?」

「……それと、勘違いして関係性を高める女だから頑張れ、栗城……」


 とんでもない警告を言いながら、安原はさっさと部屋から出て行ってしまった。


「栗城くーん。隣、ウチの隣座りなー! じっくりじっくり教えてやるから!」

「は、ははは……」

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