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ズッ友宣言をしてきたお隣さんから時々優しさが運ばれてくる件  作者: 遥風 かずら


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12.笹倉秋稲さんは呼ばれたい


「何の話……って、それは~……」

「んとね、幸多くんがアルバイトを始めるって話!」


 何もやましいわけじゃないけど、いやにあっさり白状しちゃったな。


「あ、そうなんだ~! 栗城くん、お小遣い足りてないの?」


 素直に信じる笹倉もバイトに興味があるのか話に乗ってきた。特に隠す話でもないのでそのまま正直に話を続けることにする。

 

「生活費って意味ならあるよ。そうじゃなくて、普段の小遣い稼ぎに始める感じかな」

「じゃあ、土日とかは留守になるんだ?」

「そうなるね。連休とかは家にいないかも」


 ……何か普通に会話出来てるな。


 学校では周りの女子の影響でギクシャクしがちだったのに、看病以降から話しやすくなったというか何も気にされなくなったというか。


 笹倉の変化を気にしている俺を、青夏は目を細めながら嬉しそうにしている。妹からすれば姉が誰かと仲良くする姿に安心するんだろうな。


「そっかー。それじゃあ、本格的にバイトする前にみんなで会わないとだね」

「みんな?」

「もう忘れた? 私が招待した笹倉グループのことだよ?」

「あー……! あれか」

 

 招待されて入ったはいいが、未だにグループメンバー全員と顔を合わせてないから実体のないグループかと思ってた。


 いや、メンバーの中に確か戦友の村尾がいるんだったか?


「もう! 忘れちゃってたでしょ? 本当、しょうがない人だなぁ。ね、せいちゃん?」

「ホントだよね~。幸多くんって本当にしょうがない子なんだから」


 笹倉姉妹にそう思われてしまっているが、あながち間違いじゃないから反論出来ない。しかし、今の話の流れを聞く限り笹倉らしさを取り戻したように思える。


 体調を崩して俺に看病されている間、普段の笹倉とは全然違う感じだったからな。すぐ隣に妹がいるおかげもあるんだろうけど。


「それじゃ、お姉ちゃん。わたし、先に帰ってるね! 幸多くんとごゆっくり~」

「えっ、せいちゃん?」

「え?」

「いいからいいから! わたし、そのグループとか分かんないし、会話に入れないから。それじゃあね~! 幸多くん、またね」


 二人で買い物か何かしてたっぽいのに、気でも遣われたのか青夏だけこの場から離れた。残された俺と笹倉は青夏の素早さに唖然としながらしばらく沈黙してしまった。


「……行っちゃったな」

「そ、そうだね」


 途端に気まずくなるのは何でなのか。


「えっと、青ちゃんと一緒に買い物に来たんじゃ?」


 話が途切れると俺も笹倉も話が出来なくなりそうだし、流れを切らずに話しかけないとな。


「ううん。特には……かな」

「そっか」

「うん」


 何だ、買い物で歩いてたわけじゃなかったんだ。


「…………」

「……」


 ううむ、何か話さないと何か。


「ところで笹倉は……」

「栗城くん。せいちゃん、青夏(せいか)のことは愛称で呼んでるのに、私はまだ笹倉呼び?」

「え?」


 話すことがなくなったと思ったら笹倉から投入されるとは。


 もしや笹倉呼びが気に入らないんだろうか?


 だけど現状は単なる友達だし、下の名前で呼べるほどそこまで親しくはないからな。笹倉妹は初めから人懐っこい子だったうえ、お試し交際が開始されてから呼びやすくなっているのも事実。


「青夏と一つしか違わないのに、どうしてかなぁって思ったの」

「笹倉とは友達だからな。中学の時、笹倉に言われたことを守ってるだけっていうか、流石に気安く名前呼びは出来ないかなと」

「ズッ友宣言のこと?」

「まあそうだな」


 友達以上の関係を望んで告白したものの、笹倉はそれ以上を望まなかった。その代わり、友達として最低限の関係性を保つだけならOKと言われて以降、俺や戦友たちの間で一定のルールが敷かれた。


 下の名前で呼ぶのは一定以上の親密度を意味する――つまり、抜け駆けするのは止せというルールだ。もちろん俺から呼ぶのではなく、笹倉本人から認められたらその限りじゃないが。


「ふーん……それが男子達の取り決め?」

「そうなるな」

「面倒くさいね、男子」


 笹倉妹への態度と話し方が自分と違うことに嫉妬したんだろうか?


 まさかな。


「そう言われても仕方ないっていうか。でも笹倉って中学の頃からはっきりと物言うタイプで活発女子だったし、妹と呼び方が違うことに関して別に気にならないと思うが?」

「私が活発女子? ズッ友宣言したから?」

「快活系女子って有名だったぞ。細かいことを気にしないし、元気で勢いがある性格って感じで」

「……それはだって、栗城くんだけじゃない男子達が告白……」


 珍しく悩んでいるような。


 流石に本人に快活系女子って言われていたのを言うのはまずかったか?


「……今はもうあの頃とは違うのに。けど、栗城くんにずっとそう思われているなら変えなきゃ」

「ん?」


 笹倉は首を少しだけ傾げながら、悩んだ答えを出したかのように俺の顔を見つめてくる。


「栗城くん」

「な、何?」


 何だかいつになく真剣な眼差しだな。


「青夏だけじゃなくて、私のことも秋稲って呼んでいいです! 私が認めるからいいですよね?」

「えっと、それって俺以外の戦友……男子も共通で?」

「ううん、違う。栗城くんだけです! そうじゃないといつまでたっても……」


 笹倉が最後まではっきり言わないなんて珍しい。


「あーそういえば今では青ちゃんの方が活発っぽいよな。姉妹だから似るっていうか」

「そんなことないけど、青夏はそうかも」


 何を言いたいのか分からないけど、青夏のように呼ばれたいって意味なら――


「――秋稲さん……って呼ぶってことでいいなら……」

「うんっ! よろしくです!」


 正解だった。


 妹に対する嫉妬か、あるいはただの友達から少しだけ進むことが出来たのか、今の段階では何とも言えないな。


 しかし。


「私も栗城くんと一緒に頑張るね!」


 ……何を頑張るのか分からないものの、凄く嬉しそうに笑っているし俺も頑張るか。

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