表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブキャラとして無難にやり過ごしたい  作者: 天原 重音
軌道衛星基地にて 西暦3147年8月
56/191

続く作業と、口を滑らせて仕事を増やした

 翌日。

 演習場には全八機の機体が並んでいる。

「ここまで揃うと、壮観だな」

 本日は、朝から元気一杯の佐藤大佐がいらっしゃる。何日振りだろうね。一週間は会っていない気がする。一緒に来た隣の飯島大佐は何故か疲れ切っていた。

 中佐コンビはいない。代わりに、知らない二人の男性がいる。昨日の大林少佐と同じく、松永大佐と何やら打ち合わせをしていた。飯島大佐も混ざりに行った。

 向こうは放置してもいい。自分は事前の指示通りに、佐藤大佐に座席型の起動方法と操縦を教える。そして、予想通りの結果になった。

「ワハハハッ、ナスタチウム(むこう)よりも良く動くな!」

 佐藤大佐は超機嫌良さげに操縦している。けれど、一時間が経過したら飯島大佐の手でどこかに連れて行かれた。

 ……そうか、一時間だけ操縦許可を出したのか。

 喚きながら連行される佐藤大佐を見て、そんな事を思った。

 でも佐藤大佐のお陰で、今後の操縦訓練で『騎乗型の操縦が駄目な人には座席型を勧める』事が決まった。訓練を重ねれば騎乗型でも操縦が安定する人は出て来る可能性は有るけど、その辺は自分の管轄外だろう。是非ともそうなって欲しい。

 さて手が空いてしまった。どうしようか。

 やる事が無い。手持ち無沙汰になったと思ったら、打ち合わせが終わった松永大佐に呼ばれて、頭に帽子のように装着する小型のカメラを渡された。

 何を撮影するのか分からず、松永大佐とカメラを交互に見る、よりも先に説明が入った。

 正規の操縦手順を撮影しろと、理解出来ない指示が来た。正規手順の意味を松永大佐に尋ねると、一括の起動停止に設定する前の、操作盤を使った手順の事だった。

「初起動時に行う設定のようなものなので、正規手順とは言い難いのです。操作盤を使う起動は、起動する度に設定をやり直しているようなものです」

 操作盤を使った起動は、『起動する度に設定を変える』に等しい。それでも良いのかと、尋ねれば、それで良いと、松永大佐から回答が返って来た。

「星崎が呼べない時の対策の一つだ。操縦手順を教える度に、一緒に乗って指導する手間省きでもある。一括起動時の手順の撮影は終わっている」

「分かりました。ハッチを開けるところから撮影すれば良いですか?」

「……そうだな。そこから頼む」

 松永大佐からの説明を聞き、マニュアル作成用だと気づいた。昨日、松永大佐は飯島大佐とマニュアルをどう作るか議論していた。多分、口頭説明や教本では説明が難しいと判断したから、映像教本を作る事にしたのかも知れない。

 松永大佐に了解の応答を返して、アゲラタムに向かう。

 演習場に移動したアゲラタムは全てハッチが空いている。その為、数の少ない座席型操縦席のアゲラタムがどれだか判らない。コックピット内を一つずつ確認して探す。三機目で見つけた。外部操作レバーを使い、一度ハッチを閉じる。カメラを頭に装着し、起動させる。

 外部操作レバーの蓋を開けるところから撮影を行う。アゲラタムに乗り込み、操縦席の右の操作盤を数秒撮影してからゆっくりと操作する。左も同様に撮影した。ここから先の手順は一括起動と同じだが、ゆっくりと手順を行う。手早くやって、リテイクになるのは二度手間だ。モニターに表示される文字も撮影する。

 停止はこれらの手順を逆に行えばいいが、終わってから聞かれるのも面倒なので一緒に撮影を行う。

 同様に、騎乗型操縦席のアゲラタムでも撮影を行った。

 撮影と確認を終えて、松永大佐にカメラを提出したが、モニター室で映像確認をする事になった。確認はやったけど、松永大佐から見て、撮影漏れが有るかもしれないので黙って一緒に確認する。

 松永大佐と打ち合わせをしていた二名の姿が無いけど、代わりにアゲラタムが二機動いているから操縦しているんだろうね。

 撮影漏れは無かったが、操作盤について色々と質問を受けた。操作盤はカメラを始めとした機能の起動・停止などの操作をするためもので、戦闘中にはまず使用しない事を前置きで説明してから、質問に答えて行く。

 起動時にモニター画面に映る文字についても質問を受けた。機体の状態についての報告表示だと言えば、どれがどう言う意味なのかと質問が飛ぶ。簡単にでも読めれば、何かの役に立つかもしれないと教えて行く。

 今から新しい言語を覚えるつもりなのかと、聞きたくなるような勢いであれこれと質問が次から次へとやって来る。言語に関しては、自分が保有する技能『無限の言語』の恩恵で殆ど苦労していない。翻訳機を作ろうかと思ったけど、作ったら今度は別の問題が発生しそうなので止めた。

 魔法を使って作成する品について、説明するのは不可能だからです。オカルトが無い世界でどう説明しろと言うのか!?

 そんな個人的理由から製作を断念。

 やる事がまた一つ終わったなー、と暢気な感想を抱いた瞬間、ズッシーン、って感じの地響きが聞こえて、同時に縦揺れが発生した。

 縦揺れが発生する原因は一つしかない。

 モニター室から出ると、二機のアゲラタムが縺れるように倒れていた。何をどうしたらあんな風に倒れるんだろうか?

「あの馬鹿共。模擬戦は禁止と言ったのに……」

 一緒にモニター室から出た松永大佐は、惨状を確認するなり目元に片手を当てて嘆息を零しながら、大変苛立った。ため息を吐きながら怒るとは器用だ。

 松永大佐と一緒に倒れた二機のアゲラタムに近づくと、同時にハッチが開いて中から操縦者が這い出て来た。さっき松永大佐と打ち合わせをしていた男性二名だ。二人最初こそ何かを言い合い取っ組み合いを始めたが、近づくこちらに気づくと同時に、特に苛立つ松永大佐を見て血相を変えた。

「星崎は倒れている二機を定位置に戻してくれ。私はあの二人と、少々、話し合わねばならん」

「分かりましたっ」

 松永大佐から指示が出ると同時にアゲラタムに駆け寄った。今の松永大佐の顔は、正直に言って見たくない。這い出て来た二名が血相を変えた様子を見るに、見てはいけない顔をしていそう。

 二人は顔を見合わせると、出入り口に向かって逃走を始めた。松永大佐は無言で二人を追う。……松永大佐はただ歩いているだけなんだが、一歩踏み出す度に、地揺れを感じるのは何故なんだろうね? 逃げる二人がもう少しで出入り口に辿り着くかと言うところで、ドアが動いた。

「どうなってんだ、こりゃあ!?」

 二人にとっては運悪く、しかし松永大佐にとっては運良く、出入り口に飯島大佐が現れた。飯島大佐は倒れたアゲラタムを見てギョッとするも、血相を変えた二人と歩いて追う松永大佐を見て、一瞬で冷静になった模様。飯島大佐は冷静にドアを閉めて二人を捕まえて、追い付いた松永大佐に差し出した。そのまま四人でモニター室に移動した。

 悲鳴が聞こえた気がしたけど、無視で良いよね。首を突っ込んではならん気がする。

 サクサクと作業を終わらせて、モニター室に向かう。一歩近づく度に妙な揺れを感じ、悲鳴が大きくなる。お化け屋敷かと、突っ込みたくなるな。モニター室のドア横のパネルを操作して来訪を知らせると、中から飯島大佐が出て来た。

 さり気無く、自分から室内が見えないようにしている。室内が見えても良いとは思わないので気にしない。午前中の残りの予定を飯島大佐に尋ねると、休憩を言い渡された。思っていた以上に時間が過ぎていたらしく、あと少しで十二時になる。言い渡された休憩は、休憩でも『昼休憩』だった。

 先に一人で昼食を取っていろと言われたので、その通りにした。



 久し振り(?)に独りで食事を取る。食堂は相変わらず閑散としている。他の隊員と全く会わない。謎だ。黙々とゆっくり食事を進めて三十分が経過した。

 冷蔵庫に入れて置いたデザートのパウンドケーキを取り出して、甘いコーヒーをお供に一切れ食べていると、松永大佐と飯島大佐がやって来た。昼食を持って傍にやって来たので業務連絡が有りそうだ。身構えたら本当に業務連絡がやって来た。

「ナスタチウムの、テスト操縦、ですか?」

 何と言うか、微妙に理解し難い。量産機のキンレンカにすら乗った事が無いのに、何でいきなり、指揮官機のナスタチウムの試験操縦を引き受ける事になるのか?

「ああ。ナスタチウムの『操縦の遊びを無くしてガーベラに近づける』強化案を先週出したんだ。今朝になって松永のところに、調整完了の連絡が来た。星崎を乗せるのは、『どこまでガーベラに近づいたか』見て貰うためだな」

 訳が分からず、了解の応答も返さずに聞き返してしまったが、飯島大佐は嫌な顔一つせずに事情を教えてくれた。説明を聞けば解るが、自分じゃなくても良いんじゃと思ってしまう。今のガーベラは、自分以外の人でも乗れると言う点を考えると、ちょっと納得し難い。

 飯島大佐の隣で、食事を取りながら話を聞いていた松永大佐は呆れている。

「バーニアの強化案以外にも、別の強化案を出していたのですか?」

「まぁな。色々と弄れるんだったら、今の内に試した方が良いだろう」

「それはそうですが、ガーベラの重力制御機がナスタチウム用のままになっている、最大の原因ではありませんか?」

「……かも知れないな」

 松永大佐からの指摘に、飯島大佐は少し考えてから肯定した。記憶違いでなければ、一昨日確か『重力制御機は形だけでも完成させる』とか言っていなかったっけ?

「本末転倒って言葉はご存じですよね?」

「知ってる! 知っているぞ!」

 松永大佐の声音が一段下がった。ついでに目も据わった。そんな松永大佐を見た飯島大佐は震え上がった。

 微妙な力関係が見えた瞬間だった。

「そう言う事なら分かりました。開始時刻は何時からになりますか?」

 話を進める為に、飯島大佐に質問をする。

「時間? 松永にも乗って貰うから……」

「飯島大佐。支部長への報告がまだ残っています」

「残っていたな。んじゃぁ、十四時からにするか?」

「遅過ぎます。十三時半で良いでしょう」

「お前が良いなら、それで構わない」

「では、十三時半開始にしましょう。星崎はその時間までに演習場に来い」

「分かりました」

 短い打ち合わせを得て、開始時刻は決まった。ほぼ一時間後だから、自分はまだゆっくり出来る。目の前の二人は早めのペースで黙々と昼食を食べ進めている。

 ……上級階級の人や、隊長職の人はやる事が多くて大変そうだ。

 過去の経験上、上級役職の人ほど書類仕事に忙殺されていた。中世のヨーロッパっぽい世界観の世界に転生し、軍部に当たるところに一時的に所属していた時に見たが、上の階級の人は何時も大変そうにしていた。

『書類は見たくない』、『手が疲れた』、『目が重い』、『椅子に座りっぱなしで腰が痛い』、『どんなにやっても書類の山が消えない』、『訓練にだけ没頭していたあの頃が懐かしい』などの、愚痴を聞いた。

 書類を捌くのが上手い奴は、上の人間から気に入られていたっけ。『好きにして良いからこれは任せた!』などと、ほざいてどこかへ消える上司もいた。

 嫌な事を思い出した。忘れるようにパウンドケーキを一切れ食べ切り、もう一切れに手を伸ばす。フォークで切り分けた一口を口に運び、書類仕事の連想で別の事を思い出す。

 ……そう言えば、訓練学校にもいたな。『英語が分からん。翻訳してくれ』、『ジョギングする程に暇なら、仕事を手伝ってくれ』と言って来た教官達が。『お駄賃出すから手伝ってくれ』って教官がやたらと多かった。手伝って良いのか聞くと、『士官学校では~』と言って正当化しようとしていた。多分、アウトだよな。今日で林間学校が終わるから、『林間学校の終わりに纏めるレポートが、期限以内に纏めきれんから手伝ってくれ』と泣き付いて来る教官もいたな。

「大丈夫かな」

「星崎?」「どうした?」

「あ、いや、その、何でも無いです。林間学校がそろそろ終わる頃だと思い出しただけです」

 消え入りそうな小声でボソッと言っただけなのに、大佐コンビは耳聡く自分の声を拾った。ついでに思い出した事を言って誤魔化そうとしたが、無言でじっと見つめられた。誤魔化し不可能と判断して正直に話す。

「林間学校終了後に仕事が終わらないから手伝ってくれと、去年一昨年と泣きついて来た教官を思い出しただけです」

 目を逸らして、正直に話した。直後、カチャンと二つの音が響いた。何の音かと音源に視線を向けると、自分の話を聞いて真顔になった大佐コンビが揃ってフォークを皿の上に落とした音だ。フォークの落とし方が『驚きの余り思わず』と言った感じだった。何か、言ってはいけない事を喋ったかな?

 長い沈黙を挟み、松永大佐が口を開く。

「…………星崎。それは一人だけか?」

「いいえ、複数人から頼まれました」

 指折り数えながら、頼んで来た教官の名前を思い出す。今数えたら十人は超えていた。

「頼んで来た教官の名前は憶えているか?」

「はい、覚えています。頼んで来る教官は同じ方でした、が?」

 大佐コンビの質問に答える度に、空気が重くなる。食事時にする話じゃなかったと後悔した。

「一応、引き受ける前に『訓練生が手伝って良いのか』と尋ねました。教官達は皆、口を揃えて『士官学校では良くある事だ』と仰っていたのですが……」

 もしかしてと思い、引き受ける前のやり取りを教えると、大佐コンビは揃って額に手を当て重いため息を吐いた。

「松永」

「支部長への報告事項が増えましたね」

「そうだな。……俺、一気に食欲が無くなったんだけど」

「午後も動き回るんです。食べて下さい。倒れられても困ります」

「それもそうか」

 同時に嘆息した大佐コンビは皿の上に落としたフォークを拾い食事を再開した。先程以上のペースで食べ進めている。

 どうやら、大佐コンビの仕事を増やしてしまった模様。

「……仕事を増やして済みません」

 何だか申し訳ない気分になり、大佐コンビに謝った。

「いや、謝る事は無い。訓練学校は放置気味で、今まで目を向ける機会が無かったんだ」

「確かに。そのツケが今になって押し寄せているだけだ」

「ただし、ツケが致命的になっているのが問題だな」

「ええ。今の学長は一体何をやっているんだか」

「? 学長も『将来どんな仕事をやる事になるか分からないから、今の内に色々と経験すると良い』と言って、高等部の生徒に頼んでいるところを何度か見ましたよ」

 自分の言葉を聞くなり、大佐コンビは揃って項垂れた。折角気遣いで、気にするなと言ってくれたのに、うっかり止めを刺してしまった模様。

「飯島大佐。先ずは食べ切りましょう」

「そうだな。食べてからじゃないと動けないもんな」

 どんよりとした雰囲気の二人は、そう言うなり止まっていた食事を再開した。

 食べ終えた大佐コンビは頭痛を堪えるような顔をしている。甘いパウンドケーキを大佐コンビに差し出したら、一切れずつ食べた。甘いものを摂取すれば、少しは復活するのかも。

 食器を片付け終え、自分も支部長への報告に同行する事になった。

 同行理由? 訓練学校について詳細を知るのは自分だけだから、と言われた。確かにそうだねと納得した。約一ヶ月前まで訓練学校にいたし。

 三人で支部長の執務室に向かい、到着するなり飯島大佐は支部長に人払いを頼んだ。四人しかいない執務室で、大佐コンビが訓練学校の事について報告すると、流石の支部長も動きを止め、耳に手を添えて『え? 何だって?』と言わんばかりの行動を取った。

 飯島大佐が再度同じ報告内容を口にすると、支部長は項垂れて深いため息を吐いた。

 顔を上げた支部長は蟀谷を擦りながら、自分に『仕事を手伝って欲しいと言った教官達の名前』を尋ねて来た。覚えている範囲で答えて行く。教官の名前を上げると、支部長はメモを取った。

「こんなにいたのか」

「致命的なツケですね」

「支部長。どうしますか?」

「どうもこうも。調査するしかないだろう」

「士官学校の教導部は動かせますか?」

「既に連絡はしている。人員の選定も済んでいるから、夏休みが終わると同時に派遣は可能だ。学長もやっているんじゃ、別の見直しもしないとだな」

「そうなりますな」

「過労で何人ぶっ倒れるんだろうな?」

「さぁ? 恨むなら訓練学校にいる教官達を恨んで欲しいですね」

「確かに、そうだな」

「まったくだ」

 大人三人は、顔を見合わせて同時にため息を吐いた。結構な大事だったらしい。

 報告はここまでだった。元々する予定だった報告は良いのかと思ったが、『夕方に纏めて報告します』と松永大佐が支部長に一言言った。良いのかと思わなくは無いが、支部長も『それで良い』と返したので、多分大丈夫なんだろう。

 退出し、時刻はやや早いが、昼食時に決まった予定の消化に取り掛かる。

 場所は宇宙空間では無く、演習場なので安心して操縦出来る。ナスタチウムの操縦は初めてだったが、基本は同じだ。

 実際に乗り込んで操縦をしたが、ガーベラに近いか否か問われると、微妙に的外れな気がする。動作は速いが、動きが若干雑になっているだけな気がする。

 感じた事をそのまま報告し、交代で松永大佐と飯島大佐も操縦する。感想は自分に近かった。

「的外れか。元に戻すように言っておく」

「そうして下さい」

 時間にして、一時間も経過せずに終わった。

 残りの時間はアゲラタムの操縦訓練となった。最終的に互いにアゲラタムに乗って、松永大佐と模擬戦までやって、この日は終わった。



 翌日。

 本日午前、久し振りにガーベラのデータ収集を行う事になった。何でも、ナスタチウムの別強化が完了したから試験操縦を兼ねて模擬戦も行うそうだ。

 何日振りに乗る事になるのか日数を数えていたら、九月まで今日を入れて六日も残っている事に気づき、気が重くなった。

 ツクヨミに来てから一ヶ月も経っていないのに、気分的に二ヶ月以上も居た気になっていた。どんだけ濃密な日々だったんだ。思い返すのは止めよう。何せ、人生プランが滅茶苦茶になって、非常に困り果てたんだし。

 何時も通りに九時から始まる事になったが、何故か佐藤大佐と中佐コンビがモニター室にやって来た。

 松永大佐からの説明によると、ナスタチウムの強化を三種類行ったそうだ。三種類同時に終わったから、纏めて試験操縦を行うそうだ。性能面でガーベラに『どこまで近づいたか』見る必要が有るらしい。必要性の意味は解らないけど、ガーベラに固執する人が多かったからその対策かもしれない。

 早速、大人三人がナスタチウムに乗り込み、宇宙空間に出た。松永大佐は指示出しと全体の流れを見なくてはならないのでモニター室で待機だ。

 大人三人がナスタチウムではしゃぎながら操縦を行う。時々、松永大佐が注意する。準備運動のような操縦が終わり、稼働データの確認を兼ねた休憩(十分)で三人を呼び戻す。

 あーだこーだと議論しつつ、操縦の報告を簡単に纏めたら、次はガーベラと一対一の模擬戦だ。

 一回毎に稼働データ確認(松永大佐が行う)を兼ねた休憩(五分)を挟みつつ行う。三連続で行ったら、二対一を再び三連続で行い、最後に三対一で模擬戦を行って、午前が終わる。

 今日は七回も模擬戦を行うハードスケジュールだ。模擬戦は一回十五分程度と短いが、自分の総操縦時間は一時間四十五分と長い。午後に予定無いと良いな。

 正午まで、残り二時間半ちょいしかないので、さっそく模擬戦が開始となる。

 井上中佐、佐々木中佐、佐藤大佐の順に一対一で模擬戦を行い、中佐コンビ、佐藤大佐と井上中佐、佐藤大佐と佐々木中佐の組み分けで二対一の軽い模擬戦も行い、ここで少し長めの休憩となった。

 流石に模擬戦六連続は少しきつい。でも、時刻が十一時半を過ぎているので、これが最後の模擬戦となる。

 気の重い三対一での模擬戦は『格闘戦を回避しつつ、砲撃も回避するように』と指示を受けた。

 回避に専念するのならば気負う必要は無いな。

 始めは松永大佐からの指示通りだった。でも、開始十分後。ガーベラに異変が発生した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ