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モブキャラとして無難にやり過ごしたい  作者: 天原 重音
再会と出会い 西暦3147年11月

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171/202

会議の終わったら、騒動が起きる

 十八時になり、会議は終了した。

 高橋大佐が去ってから、一時間以上の時間が過ぎてしまった。

 シャワーを浴びて、髭を剃るだけだと思うのに、どこに時間が掛かったんだ? 謎だと首を傾げていると、松永大佐と一緒に支部長に呼ばれた。

 何かと思えば、今日の会議が終わったあとについての相談だった。

 向こうに会議が終了したと連絡を入れるのは、三十分後にして欲しいと、会談を行う場合は試験運用隊の隊長室で行いたいと、支部長から二つの要望が出て来た。

 断る理由がないので松永大佐と一緒に了承したけど、支部長に伝える情報が有る。

「向こうも準備時間が必要になると思います。今から連絡を入れた方が良いかもしれません」

「星崎。その準備はどれぐらいの時間が掛かるんだ?」

「向こうと連絡を取り合いながらの調整を含めると、二十分前後になると思います。向こうとの通信状況によっては三十分を超える可能性もありますが、連絡を入れないと分かりません」

「ふむ……」

 推測となるが、掛かりそうな時間を口にした。


 通信状況云々は向こうの集合に掛かる時間だ。城内の一室で行うのだが、その城の面積が広い。城内を歩いて一周するのに要する時間は、最低でも五時間を超える。

 一応、城内の複数個所に小型転移門(登録者のみ利用可能)が設置されているので、移動に掛かる時間は大分短縮されている。だが、この小型転移門は決まった場所にしか繋がらないので、目的地へ移動する為には複数ヶ所を通らなくてはならない時も在る。

 小型転移門と言うよりも、利用感覚としてはエスカレーターが近いかな。

 この小型転移門はそこそこの国力(中堅国家レベル)を持つ国なら作れるぐらいには技術が浸透している。

 距離(長くても五百メートル)は短い、転移物体の重量(最大二百キロまで)は軽めに設定されていて、繋がる時間は僅か五分程度を始めとした欠点も存在するが、

 これを大型化して宇宙空間で使用するには、複数の別の高度な技術が必要になるのだが、ここでは割愛する。これだけでも十分過ぎる技術なんだけど、技術の喪失と再現に偏りが存在する。その為、国家間で使用可能な小型転移門は自分が作ったものだけとなる。

 距離と重量と接続時間に、利用する為のエネルギーを考えると、日常的に使える国は中規模国家並みの国力を持っていると言える。小規模以下の国家でも緊急避難用に、必ず一つは製造されている。

 ルピナス帝国は向こうの宇宙でも五指に入る大きさの国だから、相当数の小型転移門が設置されている。

 この小型転移門を使って目的地に移動しても、今度は乗り換えで頭を使う。


 支部長が顎に手を添えて考え込んでいる間に、向こうの室内移動事情について思い出した。

 下手をするともっと時間が掛かるかもしれないが、それは通信してみないと判らない。

 支部長は悩んだ末に『三十分後に通信をして、どうなるかを教えて』と言う事になった。悩んだ割に『三十分後? 今からじゃなくて?』って感じの回答だった。支部長は会議で疲れているのか?

 支部長の体調はともかく、松永大佐と一緒に会議室から移動して早々に準備をと考えていたけど、ここが会議室内である事を忘れていた。

 会議が終わったのに、一人も退出せずに自分達のやり取りを見ていた。

『このあとに何が起きるの!?』と、一条大将と大林少佐以外の全員が戦々恐々とした面持ちでこちらを見ている。昼の飯島大佐の反応を思い出し、そう言えば知らされていないんだっけと今になって思い出した。どうするのか、松永大佐と一緒に支部長に判断を仰ぐ。

 疲労が溜まっているのか。支部長は端的に『来客の予定が有る』とだけ言った。それを聞いただけで、室内にいた殆どの面々はテーブルの上に残っていた胃薬を手に取った。支部長から同席すら求められていないのに、もう胃痛がするのか。

 それにしても、『どこから、誰が、何人、何の目的で来るのか』、この四点を言わない辺り、支部長も意地が悪い。

 一条大将は胃薬を飲む面々を面白そうに眺めている。大林少佐は我関せずと言った顔で缶コーヒーを開けていた。松永大佐は威圧感の有る笑顔で支部長と会話を繰り広げていた。それは『迫っている』と言えた。

「佐久間支部長。これから連絡を入れても、最低で二十分もの時間を要します。わざわざ三十分後に連絡を入れる意味は無いと思います」

「ちょっと長めの休憩を取るのも駄目かな?」

「待機時間が二十分もあります。足りませんか?」

「……足りるけどね。戻ってメールの確認がしたいんだ」

「誰とのメールですか?」

「渡す予定の御仁にね、何時会えるかメールで予定を聞いていたんだ。今日の夕方までには連絡するって、三日前に返信を貰って、未だに来ていないから確認したい、んです?」

「最後の疑問系は何ですか?」

「何だろうねー。あはははは」

 支部長。大量の冷や汗を掻いて乾いた笑い声を上げても、松永大佐からの追求から逃げる事は不可能だと思うよ。その証拠に、松永大佐の笑みが深くなった。

 あ。支部長の笑い声が止まった。滝のような冷や汗を掻いている。

 支部長と松永大佐は暫し無言で見つめ合った。

「移動に十分、調整で二十分か三十分なら、最低でも、合計で三十分かな?」

「時間の計算はそれで合っていますね。時間の計算をした佐久間支部長は、これからどうしますか?」

「………………すぐに終わらせて来るね」

 長い沈黙を挟んで支部長はそう言うなり、大林少佐を連れて会議室から出て行った。会議室に一条大将を残して。

「追い掛けないのですか?」

「私まで行く必要は無いさ。それよりも、準備に取り掛かるんだろう? 我々も行こうじゃないか」

 松永大佐に問われても『不要』と回答した一条大将は、何故かウキウキとしている。

「そんなに楽しいものですか?」

「愉しいに決まっているだろう。好奇心は満たすし、日本支部はおろか、地球規模で歴史的な瞬間に立ち会えるんだ。愉しみで仕方が無い」

「そうでしたか」

 呆れた松永大佐と童心に帰っている一条大将は何とも言えないぐらいに対照的だった。

 対照的な二人の様子を見て、他の面々も慄いてしまう。

 三人で行こうと、意気揚々とした一条大将に手を引かれる形で移動する。何やら楽しそうな一条大将を見て思ってしまう。

 ……一条大将よ。何やら意気込んでいるところ悪いが、今日来るのは苛めっ子の外交官とかじゃないよ!?

 サイは政治関係の勉強をそれなりにやっているから、政治に関して理解の有る奴だけど、高度な政治的駆け引きは好まない。寧ろ正面から特攻する奴だ。あ、突撃の誤字じゃないからね。

 何だかんだと言って、サイも首都防衛支部(ドM軍団)の長だからか、一発軽いジャブを受けてからが本番みたいなところが有る。

 どうしてこうなったんだろうね。変な悪影響を受け過ぎだよ。

 ちょっと過去について思い出していたら、試験運用隊が保有する演習場に到着してしまった。

 一条大将に一声を掛けて手を放して貰い、自分はオニキスへ向かった。

 目的の品はオニキスの収納機に仕舞っている。盗難防止と悪戯防止の二つの目的で収納機に仕舞っているんだけど、ちょっと面倒に感じる。『もしもの可能性』を考えると仕方が無いんだけどね。

 オニキスのコックピットに乗り込み起動させて、目的の品々を収納機から取り出す。ついでに、オニキスの手首から有線でエネルギー供給が出来るように準備も行う。

「あれ? 来たんだ」

 コックピットから出る直前、演習場に飯島大佐を始めとした会議の出席者が全員やって来た。

 同席は求められていないのに気になって来てしまったのか。それとも、同席しないと後々面倒な事になると判断したのか。高橋大佐はいないけど、神崎少佐までいるよ。

 どちらにせよ、自主的に来てしまうところを見ると涙を禁じ得ない。全員、社畜根性が染み付き過ぎだよ。

 視界が滲む前にコックピットから出て地面に降り、パワードスーツに乗り込んで設置作業を始める。

 設置作業と言うよりも、組立作業が近いかもしれない。自分が創った小型転移門なので、組み立てに関する説明書が無くても作業は可能だ。

 自分が手を加えて創った小型転移門は超々距離間の往来を可能とする。使っている技術が根本的に違うから可能なんだけど、知らない人から見たら判別は不可能だ。教える予定は無いし、手を加えて創り直したようなものだから、誤解は生まない。


 本当の事を言うと、物理的に超えられない次元の壁を超えての使用は不可能だ。これはその他の大型の転移門にも言える。

 現在、その超えられない次元の壁に亀裂が入っているから、使用が可能となっている。

 亀裂の修復は不可能だから、今後も使用出来る。


 高さ三メートル、幅二メートル、奥行き一メートルの長方形の箱を組み立てて、パズルのように組み上げた土台の上に設置。パワードスーツから降りて、土台のタッチパネルを操作し、自分が持つ端末と連携させたら、オニキスと有線で繋ぐ。そして最後に、土台の上に木製コンテナを一個だけ置く。

 これで事前準備は終了だ。

 端末を操作して今度はセタリアと通信を繋ぐと、隣に来た松永大佐が空中ディスプレイを覗き込んだ。

「星崎。向こうと通信を繋いでいるのか?」

「ここから先は、向こうと通信を行いながら、座標の確認と位置調整が必要になります」

「先程会議室で言っていた調整と言うのはこれの事か」

「はい。微調整を行わないと、ズレた時が大変な事になります」

 座標のズレが発生していないか確認をする為に、木製コンテナを使う。転送装置ではなく、二つの点を繋ぐものだけど、念の為だ。人命が掛かっているのでね。この作業は初めて使う時に行うものだから、一度登録すれば、今後の調整は場所を変えない限り不要だ。

「松永大佐。それよりも、通信をしているところとか、支部長の許可無く見せても大丈夫なんですか?」

 小型転移門を――流石に手で直接触れるような真似はしていない――興味深く見ていた面々は、端末の空中ディスプレイに視線が釘付けだ。

 肝心の支部長がまだ来ていないけど、何が起きるのか知らない面々に見せても良いのか分からず近くにやって来た松永大佐に確認を取った。

「それに関しては大丈夫だ。一条大将が何も言っていない以上、ここから先は自己責任だ」

「連帯責任では無く、自己責任ですか……」

 松永大佐の回答に、思わず半笑いになった。

 連帯責任じゃなくて、自己責任なの? それって、一条大将も責任を負わないって事!? 

 変なところで責任者が行方不明だ。変な精神的なダメージを受けないと良いんだけど。

 大丈夫かなと思っていたら、通信が繋がった。

『――こちら、アフェランドラです』

 通信に出て来たのは、セタリアの側近のアフェルだった。自動翻訳機を身に着けていないのか、聞こえたアフェルの言葉はルピン語だった。

 突然、人の頭に獣の耳が生えた青年が登場した事で背後の面々がざわついた。

『おや、五日振りですね。通信して来たと言う事は、会議が終わったのですか?』

『会議が終わって、小型転移門の微調整で連絡を入れたんだけど。今から微調整って出来る?』

『微調整はここから何時でも出来ます。このまま行いますね』

『お願い。最初にそっちに送るのは人工木の木箱だけど、吃驚しないでね?』

『木箱ですか? 分かりました。三十分(半刻)程度の時間を頂きます』

『分かった。待っているね』

 アフェルと短いやり取りを終え、松永大佐に三十分待つ事を伝える。

 松永大佐はスマホを取り出して、大林少佐に連絡を入れる。

 一条大将は待ち時間を聞き、一つの時間潰しを自分に希望した。

「三十分待つのか。星崎、オニキスのコックピット内部を見ても良いか?」

「構いませんが、オニキスのコックピット内はアゲラタムと同じですよ?」

「ほぅ、そうなのか。だったら、松永大佐と一緒にアゲラタムの見学をするか」

 一条大将はそう言うなり、連絡を終えた松永大佐を連れて近くのアゲラタムに向かった。

 二人を見送った直後、得体のしれない恐怖で顔を強張らせた飯島大佐が近づいて来た。その後ろには工藤中将を始めとした会議の出席者一同がいる。

「星崎。これから何が起きるんだ?」

「三十分後に、人が来ます」

「人? どこから来るんだ?」

「向こうの国から来ます」

 回答に困り、飯島大佐から視線を逸らして暈した物言いをした。幸い(?)な事に、この物言いで気づいた人はいない。それでも『国』と言ったから、もしかしたら気づくかもしれない。

「星崎。向こうの国ってのはどこ――いや待て……。『向こうの国』ってのは、まさかだよな!?」

 正解に辿り着いたと思しき飯島大佐は、ギョッとしてから顔の血の気を下げた。察しの良い人は今日も苦労するんだね。身構える時間が有るか否かの違いだろうけど、何となく分かってしまう事の良し悪しが判らん。

 飯島大佐の反応を見て慄く大人が続出した。

 そんな中、全く違う事を気にしていた佐々木中佐より、『空気を読め!』と、総突っ込みを受けそうな質問が飛んだ。

「星崎。さっき通信に出ていた奴なんだけど、何で頭に耳が生えていたんだ?」

『……』

 佐々木中佐の別の意味で能天気な疑問は、困惑に満ちた沈黙を齎した。代表して、半目になった井上中佐が佐々木中佐に尋ねる。

「おい、佐々木。頭に生えているって思った理由は何だ?」

「井上、お前気づかなかったのか? あの耳、時々動いていたぞ」

『判るかっ!!』

 怒気が含まれた返しをその場にいた殆どの人から受けて、暢気だった佐々木中佐もこれには驚きの声を上げた。コッソリと佐々木中佐と似たような反応をしたのは佐藤大佐だった。バレなくて良かったね。

 比較的冷静だった神崎少佐から説明を要求されて、向こうの宇宙の人種について簡単に説明した。

 やっぱり、軍人だからか獣人族は馴染みが無いんだね。『コスプレじゃない』と訂正したわ。

 殆どの人が困惑する中、意外な事に神崎少佐だけは理解が有って驚いた。

「そうだったのね。星崎ちゃん、大林少佐は何て言っていたの?」

 神崎少佐から続いて出て来た質問に回答しようと五日前の事を思い出したが、『ケモミミ』、『ケモ娘』、『馬娘』と言ってはしゃいでいた記憶しかない。見たまま質問の回答として伝えると、神崎少佐は嘆息した。

「相変わらずブレないわねぇ。お触り禁止は理解しているでしょうけど、大林少佐の言動は見張らないと」

 お触り禁止って、神崎少佐は何を言っているんだ?

 そして心配される大林少佐は過去に何をやらかしたのか。

 気になったので、試しに神崎少佐に尋ねたが『子供は知らなくて良いのよ』と何故か慈愛に満ちた顔でそんな事を言われた。

 余計に謎が深まった。

 他の大人を見ても誰も教えてくれなかったが、当の本人が支部長と共にやって来た。隙を見て、大林少佐に問い掛けようかと思ったが、松永大佐に頭を掴まれた。

「星崎。世の中には知らなくても良い事が存在する。大林少佐の趣味は知らない方が良い」

「そうなんですか?」

「大林少佐に抱いているイメージ像が崩れても良いのなら聞いてみろ」

「……止めておきます」

 イメージ像を崩してまで聞く事では無い。今後知るかもしれないから今聞かなくても良いな。そう判断して質問を諦めた。諦めたら頭は解放された。

 大林少佐が何かに気づいて松永大佐を始めとした面々に質問をしたが、誰も答えなかった。

 そうこうしている内に前触れ無く、木製コンテナが虚空に消えた。

 木製コンテナが突然消えた事で、大人一同はギョッとした。ホラー系が駄目だった井上中佐は小さな悲鳴を上げて顔を青くした。井上中佐に超常現象では無い事を教えて落ち着かせる。

 木製コンテナの転送で『相対位置の最終確認を行っている』と、説明していた間に小型転移門が起動した。

 組み立てた長方形の箱の表面が、段ボール箱を開封するように動き、箱の奥から足音が響いて来た。

 最初に来るのは、安全確認を兼ねてサイかフラガだろうなと思っていた。


「ちゃんと繋がったわね~。良い事だわ」


 だが、そんな言葉と共に赤い豪奢なドレスの裾を翻して登場したのは……青い髪と瞳と褐色の肌を持つモデル体型の長身の美女こと、セタリアだった。身に纏うドレスは露出過多では無いが、体にピッタリとフィットしているのでボディラインが丸判りだった。

 おい、皇帝自ら来るなよ。サイとフラガはどうした?

 自分の予想を裏切って登場したルピナス帝国の皇帝様は、唖然とする自分に向かって嫣然と微笑んでからウィンクを飛ばして一言言った。

「来ちゃった♪」

「来ちゃった、じゃないよっ!?」

 脳が思考を停止するよりも前に反射的に突っ込みを入れた。

 突っ込みが演習場に響く中、セタリアは満足気に艶麗な笑みを浮かべた。


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