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モブキャラとして無難にやり過ごしたい  作者: 天原 重音
作戦と試練 西暦3147年10月後半

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これが出発前の、最後のゴタゴタとなるか?

 到着した室内では、三人の男女が無言で睨み合っていた。三人の視線がこちらに向く前に、松永大佐に掴まれていた手は離された。

 三人の内の二人は男性で、ハルマン大佐とマオ少佐だ。

 最後の一人は女性だ。赤ワインをそのままの髪色に用いたかのような、赤味を持った黒色とでも言うべきか。色彩の表現で言うのなら、バーガンディーか。ダークカラーの髪をショートヘアーにした碧い瞳の白人の女性がいた。身長は高めで、軍服の下はスラックスだが、胸は薄いが女性的な丸みを持っている。『お姉様』と一部の女性に呼ばれていそうな外見だ。

 三人は睨み合っていたが、自分と松永大佐が入室するなり纏っていた剣呑な空気をすぐに収めて睨み合いを止めた。用件を手短に済ませるつもりなのか、女性が歩み寄って来た。

『マツナガ大佐。遅い時間に来てくれてありがとう。隣の女の子が、ウチの馬鹿二人が絡んだ子かしら?』

 自分と松永大佐の正面にやって来た女性は、やや高音の作り声で松永大佐に英語で礼を言ってから微笑んだ。女性の見た目は清楚系で彫りが深く整った顔立ちをしているけど、よく見ると化粧が濃い。ラメ入りのアイシャドウを使っているよ。柑橘系の香水に香りと共に、化粧品の匂いが僅かに鼻に届いた。もしかして、この女性は『化粧で顔を作っている』のか。そうでなければ、二メートル近くも離れた場所に化粧品の匂いは届かない。この女性がクライン少佐なのか?

『クライン少佐。回答の前に、外野がいる理由を尋ねても良いだろうか?』

 予想通り、この女性がクライン少佐だった。マジか。若作りをしている四十路手前の女性に見えるぞ。

『見回り中に、そこの二人から尋問を受けていたサトウ大佐を見つけて割って入った。事情を聴いていた最中に、支部長から『マツナガ大佐に一言言ってくれないか』って馬鹿げた内容の通信が入った。外野三人にも聞こえていて、サトウ大佐はそこの二人の意識が逸れた隙に逃走した』

 いないと思ったら、佐藤大佐は逃走していたのか。損な役回りだな。

 自分は佐藤大佐を憐れんだが、隣の松永大佐は日本語で『役立たず』と小声で佐藤大佐を罵っていた。そんな風に罵って良いのか――いや、面と向かって言われないだけマシかもしれないと思い直す。松永大佐の事だから、面と向かって苦情を言う『ついでに』何かを言いそうだ。

『成程。そこの外野は情報が得られなかったから、クライン少佐について来たのか』

『マツナガ大佐と二人っきりになるのを避ける為にお願いしたんだけどね。それから私自身、騒動が起きた事を知らないの。支部長と現場にいたらしい外野から詳細な説明を要求した。説明を聞いて、マツナガ大佐以外に馬鹿が絡んだ日本支部の子にも謝罪した方が良いと判断して、支部長に謝罪の場を要求した。謝罪は早めにした方が良いから今の時間になった。こんなところかしら』

 簡潔な説明だったが、大体の状況は判った。

 ハルマン大佐とマオ少佐は未だに自分を疑い、同席を条件にここにいる。クライン少佐が同席を求めた理由は『松永大佐と二人っきりになりたくない』からだった。

 そんで、クライン少佐が謝罪をする理由は緩衝材を求めての行為だった。

 何なの、この状況?

『最初の質問に戻るけど、この女の子で合っているのかしら?』

『確かに合っている。だが、私の部下にまで謝罪する意味は在るのか?』

『私の記憶が確かなら、マツナガ大佐は自分の部下を大事にしていたでしょう。支部長からの謝罪で確実に留飲を下げて貰う為にも必要なのよ。……それにしてもこの子、似ているわね』

 クライン少佐は松永大佐に言い返してから、自分の顔を覗き見て『似ている』と呟いた。視界の隅で、マオ少佐が『気のせいじゃ無かったか』と呟き、ハルマン大佐が『やっぱりか』みたいな顔で同意している。同じ顔をした人間は探せば幾らでもいる。知人に似ている事がそんなに珍しいのかな?

『クライン少佐。そんな事を言う為に呼び出したのか?』

『違います』

 松永大佐の機嫌を損ねる前に済ませるつもりなのか、クライン少佐は咳払いを零した。そして、自分に向き直り、軽く頭を下げて謝罪の言葉を口にした。

『ウチの馬鹿二人が絡んでごめんなさい。嫌な思いをしたでしょう。あの二人は私の部下じゃないけど、作戦不参加組で時間がたっぷりと有るから確りと〆ておくわ』

 予想外の事実を知った。この人、貧乏くじを引いて自分の部下でも無い人のやらかしの謝罪で来たのか。でも、何でクライン少佐に役割が回って来たんだ?

 疑問を脇に置き、自分も『気にしていない』とクライン少佐に返答する。

『クライン少佐。私も少し言い返しましたし、気にしていません』

 あの手の自意識過剰な馬鹿は、世の中に掃いて捨てる程にいる。『ドイツ支部にも馬鹿がいたのね』程度の認識だ。欲を言うのなら、メンタルが濡れたティッシュレベルである点をどうにかして欲しいが。虚勢を張らないと駄目そうだから無理か。

『そう言ってくれるとありがたいわ。良ければ、あの二人に絡まれた切っ掛けを教えてくれない?』

 クライン少佐は申し訳なさそうな顔をして、事の原因を自分に尋ねて来た。あの二人が全面的に悪いと思っていないのか、それとも松永大佐にまで飛び火した理由が知りたいのか。

 しかし、馬鹿二人に絡まれるようになった『切っ掛け』か。

 自分には無く、前回月面基地に来た時にイングラムが食堂で絡まれた事が切っ掛けなんだよね。

 クライン少佐に教えた方が良いか悩んだが、あの二人が他の誰かにもやっていそうだと気づいた。クライン少佐に再発防止を求めて、一週間ほど前に月面基地の下士官向けの食堂で起きた事の顛末を話した。

 全てを聞き終えて、クライン少佐は額に手を当てて呆れた。ハルマン大佐とマオ少佐に至っては、ため息にも似た呆れ声を漏らしている。

 無反応なのは、唯一知っていた松永大佐だけだ。

『何であの二人はイギリス支部のパイロットにまで絡んでいるのよ』

『他に絡んだ人間がいないか、確認した方が良いのではないか? 嬢ちゃんが絡まれた時の態度を考えると、色んな奴に喧嘩を売っていてもおかしくは無い』

『ハゲの言う通りだな。ったくよぉ、ドイツ支部でのパイロットの教育はどうなってんだぁ?』

『パイロットの教育に関して、中国支部出身者に言われたくないわ。それに、たった今思い出したけど、六月にイタリア支部のパイロットも日本支部の女性用更衣室に突撃したわよね』

 クライン少佐が思い出し、マオ少佐に噛み付くように言ったのは、自分が女子更衣室にいた時にイタリア支部の数人が侵入した時の事だった。知っていたのか。

『余計な事を思い出すんじゃねぇよ。何ヶ月前の事だと思っていやがんだ? それに限っては、ウチの支部長が他の支部長の目の前で被害者に頭を下げた事で終わってる。俺はその時たまたま月面基地にいなかったんだよなぁ。被害者は確か、始末書ものの緊急放送ボタンを押して、カメラまで起動させたんだったか。顔が見たかったぜ』

『あぁ、アレか。確か、被害に遭ったのは日本支部の訓練生の少女だったと聞いている。大人がいきなりやって来た事に対してパニックを起こし、緊急放送で他所に助けを求めた一件だったと聞いたな』

『あの一件でイタリア支部の男は全員幼女趣味(ロリコン)だって、不名誉な噂が立ったわよね』

『……本当に、最悪な一件だったな』

 マオ少佐は咥えていた煙管を手に取ってから天井を仰いで大きく息を吐いた。クライン少佐が言った『不名誉な噂』は確かに嫌だろう。マオ少佐がロリコンだったら、人攫いと勘違い(犯罪者として通報)されそうだ。

 ……マオ少佐。げんなりとしているところ悪いが、その被害者は自分だよ。教えられないけど。

 それにしても、自分の行いが他支部の人にどう見られているのか分かるって良いな。行動の修正が出来るし、これからの行動の基準も判る。

『んん~、再発防止として、尋問は軌道衛星基地に連行してからが良いかしら? 月面基地にいたままだと、誰かに八つ当たりをやりそうだし』 

 唸りながらクライン少佐は顎に手を当てて真剣に悩み始めた。

 長考の気配を感じ取ったのか、これまで無言だった松永大佐が口を開いた。

『クライン少佐。尋問しようが拷問しようが、その辺りに関して私の管轄外だからそちらに任せる。長々と無駄話をするのなら、我々は辞しても良いかな?』

 付き合いの長さが理解出来る会話が所々で混じっていたが、既に割と遅い時間なのだ。そろそろお暇したいので、松永大佐の申し出に頷いて同意を示す。

『あ、待って。最後に一つだけ良い? テストパイロット部隊所属の子に聞くのはマナー違反だけど、その子のファミリーネームだけでも教えて貰っても良いかしら』

 そんなマナーが存在するのか。驚いたが、機密保持とかそんな理由が在りそうだな。試験運用隊だし。でもマナー違反を気にするって事は、他支部でも同じって事か。自分の隣に立つ松永大佐がどう判断するのか気になり見上げた。

『確かにマナー違反だが、最後の追及になるのならば良いだろう』

 意外な事に許可が下りた。でも『最後の追及』って、どう言う意味なんだ? 最後にするのは難しいと思うけど。とりあえず名乗ろう。階級は階級章を見れば判るから言わない。 

『私は星崎です』

 三人の要求通りに家名を名乗ったら、何故か三人揃ってギョッとした。おい、その反応は何なんだ?

『ホシザキ? ホシザキって……本当なの?』

『はぁ!? ま、マジか? マジなのか?』

『こんなところでそのファミリーネームを聞くとは、思ってもいなかったぞ』

 はて、名乗っただけなのに、何でこんな反応をされるのか? もしや、日本支部に所属する同姓の誰かが何かをやらかしたのか。あとで松永大佐に聞いてみよう。

『これ以上の追及は、最低でも、作戦が終了してからにして下さい』

『え、ええ、分かったけど、……マツナガ大佐の隠し子じゃ、なかったのね』

 何をどう飛躍すればそんな単語が出て来るのか。

 動揺したクライン少佐の口から洩れた余計な一単語が原因で、室内の空気が音を立てて凍った。そんな気がした。松永大佐を中心に吹雪いている幻覚が見えるだけど。

 吹雪の幻覚を背負った松永大佐は笑顔で固まった。寒さを感じて身を震わせたハルマン大佐は松永大佐から距離を取った。マオ少佐は目を見開き、大口を開けた間抜け顔で固まっている。大口を開けた際に咥えていた煙管が床に音を立てて落ちた。その音を聞いてか、マオ少佐は正気に戻り、クライン少佐に食って掛かる。

『おいおい。何をどうすりゃ、そんな妄想が出て来るんだ!?』

『だ、だって、……マツナガ大佐って、その、『夜の帝王』って言うか、『夜の魔王』みたいな見た目でしょう? 女性にモテるし。ウチの支部の女性陣もマツナガ大佐に会った事がバレると、内容がどうあれ煩く言われるし』

 クライン少佐よ。モジモジしながら言う台詞じゃないと思うんだけど。妄想癖の激しいビッチか。

 てか、夜の帝王と夜の魔王って何だろう? 覚えていて出発前に女性陣の誰かに会えたら、質問してみよう。

『おい。例え女受けが良くても、こいつは女にモテても喜ばねぇぞ。そうじゃなくて、何をどうすりゃそんな偏見に満ちた事を思い付くんだって言ってんだよ!? 見ろ! マツナガが滅茶苦茶キレているじゃねぇか!?』

『えぇっ!?』

 マオ少佐から指摘を受けてたクライン少佐は仰天してから松永大佐を見た。そして、吹雪の幻覚を背負って笑顔から無表情になっていた松永大佐を見て、顔を引き攣らせる。

『ご、あ、いや、マ、マツナガ大佐、ごめんなさい!』

 慌てふためきながらも、クライン少佐は頭を下げてから謝罪の言葉を口にした。腰は直角に曲がっている。松永大佐をどの程度怖れているのかが良く判る。でも、反応が大袈裟なので、正直に言って『ビビり過ぎじゃないか』とも思った。

『……クライン少佐。作戦終了後、何時まで月面基地にいる予定だ?』

『え? えと、軌道衛星基地に戻るのは来月末の予定よ』

 何を考えていたのか、松永大佐は少しの間を空けてから口を開いた。クライン少佐は突然の質問に肩をビクつかせたが、淀み無く回答する。

『作戦が終了して戻って来てもまだここにいるのなら、文句はその時に言わせて貰う』

『げ』

 苦情を先送りにするのか。松永大佐の判断を知り、クライン少佐は低い声で呻いた。思っていた以上にハスキーだった。これが地声か。

 これは作戦の結果に関わらず、松永大佐と再会しても喜べないパターンになりそうだ。

『日程は改めて連絡する。それまで言い訳を考えて、待っているように。ドイツ支部長にもその旨伝えておく』

『わ、分かり、ました』

 クライン少佐は目を泳がせながら返答して、数秒経過してから肩を落とした。どうやら諦めたっぽい。ハルマン大佐とマオ少佐を見たが、こちらも質問する気配が無い。その様子を見てから松永大佐は『帰るぞ』と言ったが、自分を見て何かに気づいた模様。何か顔に出ていたか?

『星崎。何か聞きたい事でも有るのか?』

『戻ってから女性陣の誰かに尋ねますので、ここで解消する程の疑問ではありません』

 英語で松永大佐から質問されたので、英語で返答した。

 別にツクヨミに戻ってからでも解消出来る疑問なのだ。わざわざここで聞く必要は無い。

『ちなみに疑問の内容は何だ?』

『夜の帝王と夜の魔王の意味は何ですか?』

 松永大佐からの確認の質問に正直に答えたら、ぶふっ、と吹く音が聞こえた。誰かと思えば、マオ少佐が腹を抱えて笑い転げ、ハルマン大佐は口元を手で押さえて肩を震わせている。クライン少佐は笑う二人を眉を吊り上げて睨んだが、効果は無かった。

 そんなやり取りをガン無視した松永大佐から二度目の質問が飛ぶ。

『念の為の確認だが、誰に尋ねる気だ?』

『大林少佐か、神崎少佐です』

『待って、その二人だけは止めて!』

 激怒していたクライン少佐だったが今度は頭を抱えて叫んだ。スゲェ必死なんだけど、何で? 口が堅そうだから、この人選にしたんだけどなぁ。

『一条大将と工藤中将も駄目ですか?』

『もっと駄目よ!』

 クライン少佐の絶叫再び。口が堅そうな人を選んだのに。では誰なら良いんだろうか? 気になって真逆の人物の名を口にする。

『高橋大佐もですか?』

『聞いたら高橋の野郎が他の女共から尋問を受けるだろうな』

『そうだろうな。嬢ちゃん。人選としては一番駄目だぞ。候補に挙げるのも駄目だ』

 駄目そうな人選を口にしたら、今度はマオ少佐からの突っ込みが飛んだ。ハルマン大佐も深く頷いている。第三者の二人の様子を見て、自分の人選感覚に異常は無さそうだけど、何で駄目なんだろう?

 あたふたしていたクライン少佐だったが、何かを思い付いて叫んだ。

『わ、若い子は知らなくても良いの!』

『あのー、その発言だと、クライン少佐は若くないから知っているとも取れますが、そう取っても良いですか?』

『あ』

 発言に確認を取ったら、クライン少佐は呆けた顔になって動きを止めた。

 咄嗟に出て来た言い訳なんだろうけど、もうちょっと内容を考えた方が良いと思うぞ。その証拠と言う訳では無いが、男性三名はクライン少佐から顔を背けて肩を震わせていた。

『若い奴は知らなくても良いって、この馬鹿女は墓穴を掘ってどうするんだ』

『嬢ちゃんの言い返し通りに、自分は若くないって公言しているも同然だろう。これでどんな言い訳をするんだ』

『実年齢を教えるか、こちらに丸投げするかの二択でしょう』

『『ああ』』

 マオ少佐とハルマン大佐は言いたい放題言っていたが、松永大佐の判断を聞くとすぐに納得の声を上げた。

『……ねぇ』

 自分が男性陣に目を向けていた間に再起動したのか、俯いたクライン少佐は小さく声を上げた。

『貴女、同年代の同性の友人いないでしょう』

『いませんが、何か?』

 何故分かったんだろうと思いつつ、クライン少佐にいないと回答する。

 自分を慕う同性の後輩はいるけど、友人では無い。

『どうしていないのか理由は判っているの?』

『女性受けの良い人とたまに話をするからですね。話し掛けた事は無いのですが、話し掛けられると睨まれます』

『ちなみにだけど、貴女はお菓子とか作るの?』

『体重の維持管理目的で、補食として良く作って食べています』

『作った分は誰かにあげているの?』

『主に自分が食べる為に作っています。ですが、作っていると食べたがる人が寄って来ます。作り過ぎた時は書き置きと一緒に置いておけば誰かが食べてくれるので、無駄にはなりませんでした』

『貴女は自分が作ったものを男性が食べたがる理由について考えた事は在る?』

『周囲には料理の出来ない女性しかいませんでした。物珍しいから食べたがっただけではないでしょうか』

『貴女、編み物とか出来る?』

『出来ますよ。自分で使用する分しか作りませんが』

 クライン少佐から怒涛の質問攻めが始まった。何でだろうと思いながら答えて行く。一つ回答する度に、クライン少佐の顔が引き攣って行った。

『なぁ、マツナガ。嬢ちゃんは……』

『色気より食い気。花より団子を地で行きます。クライン少佐とは真逆で、水と油ですね』

『あー、そんじゃ合わねぇな。ま、水と油って言うよりも、水とウォッカだろ』

『どっちが水でどっちがウォッカか。あえて聞かんが、言い得て妙だな』

『片方は隠れ地雷ですから、ウォッカで合っています』

『だろうな』

 言いたい放題言っているけど良いのか? てか、隠れ地雷って誰の事だよ?

 その前に、水とウォッカって。確かにウォッカは無味無臭だから、飲まずに水との区別は付け難いだろう。火酒と言われるぐらいに強い酒だと聞いた事も在る。

『さて、我々はそろそろお暇します。クライン少佐は忘れないように』

『え? ええ、分かったわ』

 さて、じゃないと思うんだけど。松永大佐は強引に話を打ち切り、自分の手を掴んで退室した。去り際に見たクライン少佐の顔は、困惑と驚きと恐怖が綯交ぜになったかのような表現に困る顔だった。ハルマン大佐とマオ少佐の両名は諦めの付いた顔をしていた。

 松永大佐に手を引かれて戦艦内に戻った。個室に戻り軽く眠るのだが、その前に出発前に『可能だったら聞く質問内容』を紙に纏めてアラームをセットしてから眠った。


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