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モブキャラとして無難にやり過ごしたい  作者: 天原 重音
動き出す状況と月面基地 西暦3147年10月前半

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食堂にて

 食堂までの道中、各々勝手に過ごしているものが多いからか目立つ事は無かった。それどころか、到着した食堂はガラガラだった。

 これは早々に行けば一人で食事が出来たかも。そう思ってしまったけど、遅れてやって来た人達に絡まれては困る。やっぱり三人が良かったみたい。

 三人でそれぞれビュッフェ形式の料理を取り皿に取り、トレーに乗せて移動する。移動先は壁際の四人掛けのテーブル席だが、隣の席にイングラムが座り、正面にライトが座る事で周囲からは見え難くなる。丸型のスツールに腰を下ろして、食事を始める。

「久し振りの温かいスープ」

「何日持ち帰りパンで過ごしてたんだ?」

「え? あ、言ってなかったっけ。あたしは仕事の手伝いで一時的に来ただけで、なるべく食事は艦内食堂を利用していたの」

「艦内食堂じゃ、確かにスープは出て来なさそうだな」

 こんな感じでライトに呆れられたけど、その通りだから何も思わない。

「一時的に来た? 先の戦闘には参加していないのかい?」

「参加はしたよ。軌道衛星基地に帰る直前だったから、緊急で呼ばれた。月面基地のすぐ傍で戦う日が来るとは思わなかったね」

 イングラムの質問に答えると、揃って同情された。自分は乾いた笑いを零す。

 正確には『ツクヨミに帰る途中だった』と言うべきなんだけど、そんな事まで言う必要は無い。

 ここに来る前と同じような感じで、三人でのんびりと食事を進めるが、不意にスマホが振動した。何かと思えば、メールが届いた。送り主は工藤中将だ。アドレスを教えた覚えは無いが、職権で調べたんだろう。

 メールを開いて文章を確認すると、『人数分の持ち帰り用のパンか食えるものを持って来て欲しい』と言った内容だった。流石に一人五個は多いと思うけど。と言うかさ、将官階級の人用の食堂に連絡を入れれば良いんじゃねと、思ったがあそこは有料だった。二人に一言言って席を立ち、厨房にいる料理人に話し掛ける。何しろ大量のパンを一度に持って行くのだ。一気に無くなっては迷惑だろう。そう思って話し掛けたら、日系の料理人がいた。送信者を伏せてスマホのメールを見せて料理人に説明し、持ち帰り用のパンの確保を頼む。

「だったら、丁度おにぎりの作り方を教えているので、半分ぐらいはそれを持って行くと良い」

 そんな提案を受けた。うん、今になっておにぎりの作り方を教える意味あるのと、疑問が口から出そうになったが飲み込んだ。

 おにぎりの具材は、ツナマヨ、ササミ梅マヨ、炊き込み五目ご飯、トリ天、海老天、だった。ラインナップが豊富なのは良いけど、『別の何かを大量に作ってしまったから、おにぎりにしたんじゃね?』と勘繰ってしまう。何気なく梅干しがあったし。

 まぁ、パンよりかはこっちの方が良いだろうと、了承する。甘い菓子パンの取り置きついでにお願いして席に戻る。二人からどうなったかを聞かれたが、そのままを話して納得して貰った。

 のんびりと食事を再開し、食べ終わった頃。

 立ち上がろうとしたライトの隣に、黒人の女性が断りも無くドカッと音を立てて座った。一瞬、座る場所が無くてここに来たのかと思ったが、ライトが明らかに心底嫌そうな顔をしたので嫌がらせの一種と判断する。食事を載せたトレーすら持っていない。

「報告するなりどっかに行った野郎が、こんなところで何やってんだ?」

 女性はそう言って馴れ馴れしくライトと肩を組んだ。女性は肩を組んだ時に、ライトが嫌そうな顔をしているかチラ見をしてニタッと笑った。見ていて不愉快になる顔だ。ライトは慣れた様子で女性の腕を振り払って対応する。

「報告が済んだら、どこに行こうが俺の自由だ。飯を食いに来たら行けないのかよ」

「飯を食うだけなら、一人で食えばいいだろ? 他の支部の奴らと食う必要性はねぇ」

「俺が誰と飯を食おうが、それこそ俺の自由だ。鬱憤晴らしで一々絡んで来るな」

「あぁ? あたいと飯が食えぇねって言うのか?」

「そもそも、飯を持って来ていない奴が何を言ってんだ」

 ヤンキーのように女性はライトに絡んでいる。ライトの嫌そうな顔を見てケタケタ嗤い愉しんでいる。性格の歪んだ女だ。立ち上がろうとしたライトの腕を掴み、体重を掛けて引っ張り座らせようとしている。

「品の無い女だ」

「そうだね」

 イングラムが英語で感想を口にした。確かに品位に欠ける言動をしているから同意する。この女の階級は少尉。イングラムは同じ階級の人間として恥ずかしいのか鼻に皺が寄っている。

 加えて、微かにアルコールの匂いがする。酔っぱらっているのか? 

「今って、飲酒可能時間帯だっけ?」

「その時間はとうに過ぎている。それに、酔っぱらった状態で共用スペースに来るのは禁じられている筈だ」

 自分とイングラムの会話が聞こえたのか、ライトにウザ絡みをしていた女性がこちらを睨んだ。

「あ゛ぁん? お堅い事を言ってんじゃねぇよ。海軍じゃあるまいし」

「月面基地に海軍の規律を持ち出すのは間違いでしょ」

「その通りだな。防衛軍に海軍は存在しない。本国の軍と防衛軍の規律は同じでは無いぞ」

「うるせぇガキ共だな!」

 テーブルを叩いて女性は立ち上がった。女性がテーブルを叩いた音で食堂内の視線が集中する。

「勝ったんだから、一本引っ掛けても良いだろ!」

 女性の叫びを聞き、『一杯じゃなくて一本なのか』と疑問に思った。あと、立ち上がった時に左胸の、少尉を示す階級章が見えた。

「アメリカ支部では『勝ったら他人に迷惑を掛けても良い』って教えているの?」

「それはない」「こちらも同じく」

 別の疑問を口にすると、ライトとイングラムが同時に否定した。海軍云々言った、この少尉が特殊なのか。

「こまけぇチビだな。たかが酒瓶一本でよぉ」

 一杯じゃなくて『一本』はアウトだろ。アメリカ支部の、いや、アメリカの海軍の印象が崩れる。呆れていると、少尉はチンピラのように威嚇して来る。色々と経験しているからか、全く怖くない。なんつーか、小さい犬が精一杯威嚇しているように見える。気性荒く見せて、己を守る小物感があって、ちょっと微笑ましい。

「それよりも、誰?」

「あ゛? あたいを知らねぇってのか?」

「支部が違ったら、普通、名前は聞かない限り知らないでしょうに」

 常識そのものが、支部によって違うのかと思い、ライトとイングラムを見上げる。揃って『知らないのが当然』と否定した。

「あたいはローズだ。ローズ・グリーン。アメリカの『黒薔薇(ブラックローズ)』だ」

「……誰?」

 知らん名前だし、つーかさ、安直な渾名だな。名前負けしてない? 御両親に謝って来いよ。

「はあぁ!? アメリカで最も有名なあたいの『黒薔薇(ブラックローズ)』の渾名を知らないって言うのか!?」

「知らない。このあと上の人に会うから聞いてみる」

「おう、聞け! 聞いて驚け! このクソチビ!」

 汚い事に少尉は口から唾を飛ばして叫んだ。気の強い海の女と言えば良いのか、荒れた蓮っ葉口調の女と言えば良いのか。どちらにせよ、品格が無い。

「上って、誰に聞くんだ?」

「佐藤大佐、辺りかな?」

 ライトの純粋な質問に答えると、ピシリと音を立てて空気が凍った。少尉はあんぐりと大口を開けて固まった。こちらの様子を窺っていた周囲も動きを止めた。

「アメリカ支部で一番有名なんでしょ? だったら、在籍期間の長い人なら知っていそうじゃない?」

「あー、そうとも取れるのか」

「本当に聞くのか、いや、そもそも会えるのか?」

「ん~、多分だけど、佐藤大佐の仕事を手伝う事になると思うから会うよ。手伝いが無くても、別件で一回は会うかな」

 イングラムの疑問に答えると、少尉が泡を食って声を上げる。

「待ちやがれ! そんな上の人間が、あたいの名前を知っていると本気で思っているのか!?」

「支部で一番有名なら、他支部にも名前が届いているって思うけど? その聞き方と慌てようだと『自称している』とも取れるけど、違うの?」

「うぐっ!?」

 言葉が出て来ない少尉は金魚のように口を動かした。少尉が停止している内に立ち上がる。二人も今がチャンスだと気づいたのか、一緒に席を立った。そのまま食器を持って移動する。

「災難だったな」

「まったくだぜ、何時も『ああ』でさ。まったく禁酒命令が個人指名で出てんのによぉ……」

 イングラムの同情を受けて、ライトは肩を竦めた。続いた言葉にラウンジで出会った理由に気づく。

「もしかして、人のいなさそうなところに来たのは、あの少尉が原因なの?」

「何割かは。他にも絡んで来るウザイ奴がいるんだ」

 回収口に食器をトレーごと返し、厨房の料理人に話し掛ける。パンが入った取っ手付き紙袋五つと、おにぎりを詰めたに十センチ四方の弁当箱三つ(重箱か?)がカウンターに出て来た。

「多いな」

「十数人分だから、しょうがないよ」

 目を丸くしたライトに苦笑しながら返す。弁当箱を二段重ねにしたところで、横から伸びたイングラムの手が最後の弁当箱と二つの紙袋を手に取った。

「手伝おう。一人で運ぶのは流石に大変だろう」

「そうだな。俺も手伝う」

 イングラムに倣うように、ライトも弁当箱と紙袋を手に取った。

「いや。流石にそれは……」

「支部に帰るのを、可能な限り遅くしたいんだ。だから頼む」

「……それじゃぁ、頼もうかな」

 ライトの表情が妙に必死だった。二人に手伝いを頼み、荷物を手に食堂から出ようとしたところで、口笛が聞こえて来た。

「イングランドの傷有りじゃねぇか。こんなところで何やってんだ?」

「しかもこの女、スゲェチビだな」

「何でも良いだろう。そちらには関係の無い事だ」

 鬱陶しいそうなイングラムの視線の先には金髪の二人組の男性がいた。左胸の国旗と階級章を見るとドイツ支部の中尉コンビだった。揃ってにやにやと笑っている。

「誰?」

「知らなくていいと思うぞ」

「その通りだな」

 誰何するも、二人して知らなくていいと口にした。ライトとイングラムの対応が気に障ったのか、中尉コンビは揃って顔を顰めた。

「あ゛ん? 俺らを知らねぇってのか?」

「知らないなぁ。さっきのブラックローズ(?)の女性と同系統の人?」

「あんな海軍上がりの悪童と俺らを一緒にするんじゃねぇよ!」

 吼える二人組を見て思った。さっきの少尉を悪童呼ばわりしている。この二人も同系列じゃね?

 そんな事を思っていたらドイツ支部の二人組は格好つけて吼える。

「俺らはドイツ支部が誇る次期精鋭『ツヴァイ・シュヴェアータ』のアーダルベルト・ハイトマンと――」

「アードリアン・リッチュルだ!」

 決め顔で言っているけど、突っ込んでも良いかな? 『ツヴァイ・シュヴェアータ』を直訳すると『二つの剣』になるのか、これ?

「『双剣』じゃなくて『二つの剣』? 普通に『双剣』とかにすればいいのに、『二つの剣』じゃ響きが悪い。オツムの出来の悪さが露呈しそうな、普通に格好悪いネーミングセンスだね。しかも、一回も聞いた事が無いなぁ」

 素直に感想を述べたら、ドイツ支部の二人は胸に手を当てて呻いた。極太矢が刺さっている(?)謎の幻影が見えるけど気にしない。

「しかも、何? 格好悪いって言われただけで傷付くの? 威勢の割にメンタルが脆過ぎでしょ。次期精鋭なのにメンタルが濡れたティッシュ並みの脆さで良いの?」

 言葉を重ねたら室内なのに、ヒュォ~と、風の音を聞いた気がした。ドイツ支部の二人は、自分が喋っている途中で床に蹲った。食堂でなかったら、危うく『濡れたトイレットペーパー』と言ってしまうところだった。

「……確かにメンタルが脆いと言われても仕方が無いな」

「……ああ。出会って数分で蹲るのはどうかと思うぜ」

 絡まれたイングラムは同情に満ちた視線を蹲る二人に送った。ライトは残念な人間を見るような目で二人を見ている。

「濡れたティッシュ並みのメンタルでパイロットが務まるって事は、上官のメンタルケアが上手なんだね」

 最後の言葉を言ってから、二人を連れて今度こそ食堂から出た。あの二人は追って来ない。

「なぁ、あそこまで言って大丈夫なのか?」

「最後に『上官は部下のメンタルケア上手』って褒めたから大丈夫でしょ」

 ライトに『上官を褒めて終わらせたから大丈夫』と返す。でも、イングラムは納得出来ないのか、何か言いたげだった。

「それはどうだろうな。聞きようによっては嫌味にも取れるぞ」

「仮の話。格好つけて言わなければダメージは少ないでしょ」

「そこだけは、……その通りだな」

 三人でのんびりと喋りながら通路を歩く。時々、スマホの地図アプリで進行方向を確認する。日本支部が保有する区画に入るが、自分がいるので絡まれる事は無い。三人で荷物を持っているからだろうけど。

 そうそう。移動途中で二人とメールアドレスを交換した。イングラムがガーベラのパイロット派遣について何か判ったら教えて欲しいと希望したからだ。

 暫く歩いて、目的地の部屋に到着した。ドア横のパネルを操作して三人で入る。

「失礼します。工藤中将、持って来ました」

「おう、来たか――って、どぅええええええっ!?」

 工藤中将は自分達を見るなり奇声を上げて椅子から転げ落ちた。佐藤大佐含む他の面々は思いっきり吹いた。そして、同時に頭を抱えた。

「……どうしました?」

 室内にいた面々の行動の意味が解らず、首を傾げて尋ねるが回答はすぐには来なかった。近くのテーブルの上に持って来たものを置く。

「なぁ、下級士官向けの食堂のものだけど、良いのか?」

「さっき椅子から転げ落ちた工藤中将からのリクエストだよ」

 ライトの疑問への回答として、イングラムにスマホの画面を見せる。日本語が出来ると言っていたから、イングラムだったら多分読める筈。

「本当だ」

「えぇ!?」

 日本語が読めるイングラムが肯定すると、ライトは困惑した。スマホをポケットに仕舞い、二人に礼を言って荷物を受け取りテーブルに並べる。

「星崎! 何でおめぇは、虫をくっ付けて来るんですのよ!? つーか、どうやったら二つも同時にくっ付けられるんですのよぉおおおっ!」

 立ち上がった工藤中将が叫んだ。他の面々は工藤中将と同じ事を思ったのか、全員で首を縦に振った。

 でも、虫の意味が解らない。イメージ的に『虫=昆虫』だと判断して反応を返す。

「虫? 月面基地に昆虫はいませんよ?」

「そっちの虫じゃないのよぉおおおおっ!?」

 工藤中将が『ムンクの叫び』と同じポーズを取った。佐藤大佐は額に手を当てて天井を仰ぎ、他の面々は両手で顔を覆った。

 訳の分からない反応だ。

「すみません。二人を区画の外にまで送りますので――」

「待て! 俺が行く! さっきじゃんけんに負けて、全員分のコーヒーを買って来る事になったんだ!」

 自分の言葉を食うように、将官服の男性が血相を変えて叫んだ。

「あっ!? きったねぇぞ!」

「うるせぇ! 早いもん勝ちだ!!」

 そう言うなり、男性はライトとイングラムを連れて退出した。慌ただしく去って行ったが、どうしたんだろう。

「星崎、ちょっといいかしら?」

 三人が去り、何とも言えない沈黙が下りた。その沈黙を破るように女性将官に呼ばれた。反応を返すと、これまた奇妙な質問が恐る恐る来た。

「さっきの二人と、メールアドレスの交換とか、してないわよね?」

「どうして分かったんですか?」

 スゲェ、エスパーか。驚きの余り、疑問で返してしまった。質問者の女性将官は顔を険して質問を重ねた。

「何で交換したの? 理由を教えてくれないかしら?」

「あとで松永大佐に聞いて、教える事が出来たからです」

「……何を聞くの?」

 女性将官だけでなく、室内にいる全員が怪訝そうな顔をした。機密情報を漏らすと疑われているのかな? 松永大佐なら、機密情報か否かの判断は出来るだろうと思って受けただけなんだが。イングラムからの質問を教えれば良いかな?

「先程一緒にいた、イギリス支部の男性から『ガーベラのパイロット派遣の受け入れ状況について』質問を受けたからです」

「何をどーしたら、イギリス支部の人からそんな質問を受けるの?」

「日本語が出来るから、パイロットの派遣候補に名前が上がった人だったそうです。日本支部からの回答が来ていないからどうなっているのかと、質問を受けました」

「何やってんのよ、あそこの支部は」

「? ? ?」

 質問者の女性将官は天井を仰いだ。言っている意味が解らず首を傾げた。再度口を開いて意味を問うよりも前に、工藤中将が叫ぶ。

「お前は気にするな! い・い・な! んな事よりも、何を持って来たんだ」

「パンとおにぎりです。パンは菓子パンもお願いしました」

 回答するなり、佐藤大佐が立ち上がった。女性陣も目の色を変える。

「よくやった」

「佐藤、お前は最後だ!」「一番食べるんだから最後にしてちょうだい!」

「何故だ!?」

 憤慨する佐藤大佐と、工藤中将と女性将官が割って入る。何と言えば良いのか、コントじみている。

 特に佐藤大佐は、日本支部の最速撃墜数の記録保持者なのに、どうして真面目なところを見せてくれないのか。本当に謎だ。

 先におにぎりを配り、続いてパンを配る。菓子パンは最後だ。配り終え、幾つかの質問に答えると、『艦に帰れ』と工藤中将を中心に追い出された。

「あれ? 手伝いは不要ですか?」

「不要だ。つーか、下級士官のお前に見せられない情報が混じっているからな」

 松永大佐の仕事を手伝っているのに何故と思ったが、工藤中将が言った『見せられない情報』に、知られたくない情報が混じっているのだろう。

 自己完結だが、そう結論付けて艦に戻る道を歩いた。

 戻れと言われたんだし、シャワーを浴びよう。ついでにターゲスと佐藤大佐に関する報告も纏めよう。

「あ」

 佐藤大佐で思い出したが、『ブラックローズ』とドイツの『ツヴァイ、何とか』の事を聞くのを忘れた。次に会うまでに、佐藤大佐が無理でも、松永大佐に聞けば良いか。年齢が四十を超えているなら、最低でも二十年は在籍している事になるし。

 それまでにボイスレコーダーの内容を聞き直そう。


 そう考えていたが、一時間後に再び同じ部屋に呼び出された。入室すると、何故かツクヨミにいる筈の、支部長と大林少佐と松永大佐がいる。

 最も謎なのは、戦後処理の仕事をしている面々が、全員、床の上で正座している。

 何一つ分からない状況に、首を傾げるしか出来なかった。


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