空のかけら
ある朝、空が欠けていた。
いつものように目が覚めて、着替えて朝ごはんを食べて家の外に出ると、みんなが空を見上げていた。
何だろうと思って自分も上の方を見ると、空の一部が黒くなっている。
学校に着くと友人Kがやってきた。
「おはよう」
「おはよう。お前もあの黒い穴を見たか?」
「見た。あれはなんだろう」
「ニュースでも騒ぎになっているみたいで、宇宙人が作ったとか、異世界とつながったとか、某国の兵器だとか、いろいろ言っているぞ」
どうやら自然現象ではないらしい。
昼休みになっても空の穴の話ばかりだった。
友人Kが、
「ちょっと屋上に行ってみようぜ」
と誘ってきた。
「今行ったら人だらけだろうに」
「それもそうだな。じゃあ、部室棟の屋上に行こう。あそこなら人がいない」
少し離れたところにある部室棟。
屋上に行く道は閉鎖されていたが、友人Kが勝手に通り道を作ったらしい。
なんて奴だ。
狭い通路をくぐり抜けて屋上に出た。
「けっこう広いな」
「そうだろう」
ふと見ると、黒い六角形の石が落ちていた。まるで黒曜石のようだ。
手に取って友人Kに見せようとしたら、
「あれ、なんだか小さくなってないか?」
と言うので空の方を見た。
確かに朝見た時よりも穴が小さくなっているようだ。
空の穴は少しづつ小さくなり、夕方にはほとんど見えなくなってしまった。
いろんな専門家がコメントしていたが、結局何が起こったかわからないみたいだ。
オカルトなところは大変盛り上がっていたらしいが。
帰宅して着替えようとした時、ズボンのポケットに石があるのに気が付いた。
部室棟の屋上で拾った石をそのまま持って帰っていたらしい。
友人Kに聞き損ねたな。
まあ、明日会って聞いてみるかと思い、その日はそのまま寝ることにした。
次の朝、目が覚めて着替えていると、ズボンのポケットに石が残っていた。
入れっぱなしにしていたらしい。
そのまま朝ごはんを食べて家の外に出ると、昨日と同じようにみんなが空を見上げていた。
やっぱり空が欠けていた。
けれども周りにいたのは、みんな宇宙人だった。