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ポンニチ怪談

ポンニチ怪談 その61 戦争をしたがる大人たち

作者: 天城冴

ニホン国与党ジコウ党やその元党首アベノ総理を熱狂的に支持するネト・キョクオ。危うい閣議決定にSNSで支持を表明して、目覚めたら戦禍の中で…

「うわあああ」

耳をつんざくような爆音でネト・キョクオは目が覚めた。

上からバラバラとコンクリートの破片が落ちてきた。

「なんだよ、これ、まるで、戦場じゃないか。俺はいつものようにくっだらない仕事の後でニホン国のために大事なブログとかみて、サヨクだのリベラルだのを叩いてたはずなんだ確か今日もダカス先生のツイートに書き込んで、寝落ちしたはず。いや、アベノ総理の後継者であるダカイチさんにイイネつけてたんだけ」

よけながら叫ぶキョクオ。

「くそお、北からのミサイル攻撃か?そ、それとも中国か!だから敵基地攻撃能力を保有すべきだったんだ!サヨクの奴らが反対するから」

“違うよ”

「え?」

声の方を向くが誰もいない。

「な、なんだ、今の」

「お、おい若いの、このビルはもう崩れるんだ、も、もう逃げないと」

「あ、はい…(このオッサン、誰だっけ、なんとなく見たことがあるような)」

やつれきった中年の男につれられ、ネト・キョクオはビルから、そう遠くない地下室に逃げてきた。

 今では珍しい裸電球一つの薄暗い部屋に数十名がいた。灰色の壁に鉄管がむき出しになった壁にだるそうにもたれかかるものもいれば、敷物もない床に座り込んでいるものもいた。ほとんどが男性だが、女性も数名いる。そして

(なんだか、どこかで見たような人が何人か、いるんだけど…。みんな顔がすすけてるし、髪が乱れて、服もボロボロだし…)

キョクオがふと、隣の初老の男の顔を見ると

「ア、アトウダ元副総理!」

骨と皮ばかりにやせ細った顔だが、独特の口元、反対派にヒョットコなどと揶揄された口元を見て気が付いた。

「ああ、わ、儂をしっとるのか…」

以前の偉そうに分反り返った口調はどこへやら、すっかり弱り切って、息も絶え絶えである。

「い、いったいどういうことなんです。き、昨日、いや、今朝のニュースではお元気そうだったのに」

「け、今朝?そんな馬鹿なことはない…。元総理などと威張っていられたのはもう、何年も前のことだ…。毎日毎日、切り付けられ、銃口を向けられて、今日生きるのがやっとの日々じゃ…それもこれも」

「くそ、やっぱり中国が!」

「違う、違うんじゃ。わ、儂らが悪かったんじゃ、あんな決定をしたからじゃ」

「そ、そうだ、あんなことしたから、なんだ…。なんて俺は馬鹿だったんだ。与党ジコウ党の議員がなんだ、利権がなんだ、安心して眠れることがどんなに幸せな事か、なんでわからなかったんだ。そうすればこんな報いを受けるようなことをしなかったのに」

「ううう、あんなツィートや発言しなきゃよかった。そうすれば娘や夫と暮らせたのよ。学者なんて言って、持ち上げられて調子にのって大口叩いた罰なんですって、ああ、その通りだわ」

アトウダの言葉にキョクオ以外の者たちが力なくうなずく。

「いったい、どういう」

“わかんないの?戦争をしたがるから、戦争に巻き込んであげたんだよ”

「な、なんだ」

キョクオにかまわず、頭に声が響く。

“ほんと、テキキチコウゲキノウリョクとか、言い換えて誤魔化すのが好きなんだよね、ジコウ党とか、ネトキョクウとか、ロクデナシの大人は”

“前の戦争の時もそうだったよね、僕らが飢えようが悲惨に殺されようがかまわない”

“そのくせ、自分で煽っといて責任なんかとりゃしないんだよね。政府のお偉いさんは”

“ほんと、そいつらをちゃんと罰すればよかったんだけど。そいつらの子孫とか、同じようなアホなお兄ちゃんたちがまーた同じことしようとしたからさ”

“僕らだって黙ってられないよねえ、それにこれは一種の防御だからさ。戦争大好きな気が狂ったオカシナ政治家だのネトキョクウだのから、善良なニホン国の子供たちを守るためのさ”

「お、俺らがおかしいっていうのか!に、ニホン国を守ろうと」

“してないでしょ、もっと外交上の努力とか、味方を増やすとかしたら”

“ホントのコミュ力ってのがないのを誤魔化してるだけだよ。ニホンのお仲間だけで通じるローカルルールで気持ちよくなってるだけで、本当の他人とはどう接していいのかわかんないおバカなんだよ。で、相手と話し合いができないから武力とやらに頼ってるんだよ”

“あ、それとリケンってやつ、国民支配とかさ、独裁とかしたいんだよ、悪い大人だ”

“戦争を知らない子供って歌があったけど、戦争をしたがる大人たちってやつだよね、こいつら”

“自分が能無しで、どうしようもないのを相手のせいにしたがるんだよ。だから国とかにすがって、相手国に文句をつけてるんだよ、そんなんだから好かれないんだよねえ”

「うわああ、うるさい、うるさい!」

子供たちの声で脳が破裂しそうだ。

「も、もしかして、声が聞こえとるのか」

「聞こえてるに決まってる。ここに来ちまったってことは」

「また、増えちゃったのね。食べ物とかどうするの」

「大丈夫だろ、来たって…。どんどん減ってくから、増えやしないよ。来ても来ても生き延びる奴らなんて、ホント少ないだろ。この間、ダケナカ・ヘイゾウやハシゲン・テツとかが串刺しにされたし、その前はハギュウダンが喰われたじゃないか」

「アレは喰われたんじゃなくて喰ったんだろ…。どうしようもなかったんだ、アイツ、肉付きが良かったし」

そのセリフを聞いてネト・キョクオは震えあがった。

「せ、政調会長のハギュウダンさんを喰っちゃったって、あ、アンタがた、それでもニホン人か」

「しょうがないだろう、アイツは手足がもぎれて、ほっといても死んでたし」

「いや、あれは死んでからだろう。儂らもさすがにそこまでは」

「わ、私は腕をちょっとだけよ、ホントに死にそうだったから」

青くなるネト・キョクオ。

(ま、まさか、ニホン国の敵基地攻撃能力の保有に賛成したから、こんなとこに来たのか、仲間まで喰わざるを得ないような)

“だって、戦争したいんでしょ。誤魔化したって、相手を攻撃する準備したらもう戦争仕掛けてるって思われたって仕方ないよね”

“あ、戦争したって自分だけは戦禍を免れるって思ってた?だから、やりたがるんだよね。酷いよね。反対した人がそんな目に遭うのは理不尽だと思うんだよね”

“だから、思う存分、君らがやりたがってた戦争を味わってもらうよ、夜明けまで”

(夜明け…じゃ、これは夢なのか。いや、夢でなくたって、朝になれば)

だが

(まてよ、アトウダさんは何年もって、ひょっとして…)

「す、すみません、アトウダ…さん、ここに来る前に何時ごろ寝たんですか」

「寝た?もう何年もロクに寝取らんよ…。4年か、5年か。飯食ってすぐ寝たんだっけ。ああ、あの銀座の飯は本当にうまかったなあ」

(アトウダさんは19時ごろに寝ることがあるって聞いたが…。お、俺が最後に時計を見たのは22時過ぎ…ひょっとして、一時間が一年にあたるのか!しかも今日は)

“冬至だよ、一番夜が長いよねえ”

“夜明けまで生きていられるといいよねえ。死んだら、ずーっと、ここだから”

長い長い夜が始まった。


どこぞの国ではよく考えもせず防衛費がー敵基地をーとか言ってますけど、アブナイ国とみなされ逆に攻撃の口実を与えまくってしまうとか、どっちにしろ宗主国の許可が下りずに、やられ放題で焼け野原とか、国民が生活できずに死ぬか逃げるかになるとか、考えてないんでしょうね、たぶん。

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