60話 銭湯にて
宴会をしてくれるそうです
道具屋で用事を済ませた一行は、疲れを取る為銭湯へ向かった。一仕事終えた後の銭湯を、ソフィアもティアも本当に楽しみにしている。マサトも2人の嬉しそうな顔を見るのが大好きだ。ここを発てば、暫くはこの村に戻ることはないだろう。ゆっくりお湯を味わわないと。
銭湯に到着すると、ロビーでは宴会の準備が行われていた。
「おお、主役の登場だぞ」
準備をしていた村人たちがぞろぞろと集まってきた。
もう、パラプゾシアが倒されたことはすっかり知れわたり、漁師達は討伐記念に宴会を開こうという話で盛り上がった。加えて、ルシオが銭湯を村に売って、バルビア村に帰るという事まで伝わっており、それなら「送別会も兼ねてここでやろう」という事になったらしい。
漁師達は船を出せるようになったので、恩人のマサト達に最高の魚を食べさせるために船を出し、残った村人はここで設営をしていたのだった。
「この、風呂を復活させた事と言い、海の化け物をやっつけてくれたことと言い、お前さん方には世話になりっぱなしだよ。2、3日後に出発するそうじゃないか。せめて、皆でお礼をさせておくれ。そもそもパラプゾシアと言うのは昔から…」
ちょび髭を蓄えた村長と名乗る人物がニコニコ笑いながら、マサト達元へやって来てべらべらと喋りだした。
ロビーの端には一緒に戦ったテルが椅子に腰を掛け、こちらを向いて手を振っていた。彼も招かれた様だ。
「あの、村長さん。お礼はとても嬉しいんだけど、先にお風呂に入らせてもらってもよろしいかしら?」
話が長くなりそうな気配を感じたソフィアは村長の話を遮った。
「ああ、気が利かなくてすまなかったね。どうぞゆっくり入って、疲れを癒してきておくれ」
ソフィアはペコっと頭を下げ、ティアの手を引いて行ってしまった。
「あの、では、僕もお風呂に行きたいので、しばし失礼します」
そう言ってマサトも風呂に向かった。
いいタイミングで、ソフィアが話を遮ってくれた。なんだかパラプゾシアの話を延々としそうだったものな。でも、取り敢えずは風呂だ。疲れを取らなくちゃね。
まだ、何か言い足りない村長は「あ、ああ…」と言ってもどかしそうにマサトを見送った。
「うわあ、気持ちいい。潮風を浴びて頭が塩っぽくなっていたものなあ。おまけにパラプゾシアに掴まれて、砂に叩き落されて、じゃりじゃりもしていたし。生き返った気分だよ」
宴会準備の為、風呂に入っている人は殆ど無く、静かで貸し切りに近い状態だ。
頭に布切れを載せて、お湯を満喫するマサトの元へテルがやってきた。
テルの裸姿は初めて見たのだが、弓をやっているだけあって筋肉隆々。所々に細かな古傷もあって戦いの巧者を思わせる。はじめて会った時からダンディだったが、今見てもやっぱりダンディ、僕もこんな大人になれたらいいのに。
落ち着いた優しそうな笑みを浮かべながらテルはマサトに話しかけた。
「マサト君は有難う。娘がとてもアンモライトを喜んでね。ネックレスにするって大はしゃぎさ。それに小さな方は1000ピネルで欲しいっていう人が現れてね。丁度、日当と同じだ」
「それはよかったです。こちらも余ったアンモライトが売れて、少し懐が温かくなりました」
ほっとした表情でマサトが返すと
「ところで、これからマサト君はどこへ向かうんだい?」
と尋ねてきた。
マサトはこれからの計画を話して、「なんとかカーポさんの思いを届けたい」と答えた。
「城下町には『セントクリスタル国の紋章』を頂いているので入れるとは思うけど、その後、どうやって王女に会ってネックレスを渡すかなんですよ」
テルは「そうか…」と言って黙りこくってしまった。
次回「銭湯での宴会」です。




