4話 リワインドタイマーお披露目
リワインドタイマーの登場です
「え?」
突然のソフィアのセリフにどの様に返答していいのかわからず将人は戸惑いながら
「あ、え、でも、僕受験生だし、ゲームは1日1時間以内って親に決められているから」とつじつまの合わない返答をした。自信に満ちたソフィアの言葉に動揺の色を隠せない。
だが、少し考えた後、
「本当に入れるの?危なくないの?」と不安げに尋ねてきた。興味はあるようだ。
確かに、この世界のこの国では長らく大きな争い事は起こっていない為、将人は命を懸けて戦った経験もないのだろう。ましてや、行ったきり帰れるかどうかもわからないし、実際に戦うとなると危険も伴う。不安になるのはもっともな話だ。
だが、不安げな表情で見つめている将人を気遣う様子もなくソフィアは自信満々の表情で
「そりゃ、冒険だもの。危険は伴うわ。でも安心して。私も一緒に行ってあげる。あなたを死なせたりしないし、勿論ちゃんと帰ってこられるわ」
「ン…でも2人きりじゃちょっと不安よね、そうだ!もう1人仲間を作りましょう」
そう言って、部屋をきょろきょろ見渡し、小さな木の人形を見つた。
「ねえマサト、これ貰ってもいい?」と言うと、人形を手に取り何やらぶつぶつ呟いた。
その瞬間ソフィアの手から木の人形は姿を消した。
「あ、僕の人形…大切な人形なんだよ!」 突然の事に戸惑う将人を横目で見ながら
「実はね、私は空想を具現化する魔法(魔術)を持っているの。つまり、ゲームの中に入る事ができるのよ」
「この人形さんにも魔法をかけたわ。ゲームの中で頼もしい仲間になっているわよ」とあえてこの国の言い方「魔法」を使い、笑顔で答えた。
だが、将人は不安を隠しきれず
「そりゃ行きたいのはやまやまだけど、毎日学校もあるし、そんなに時間もないよ、怪我でもしたら怖いし」
としどろもどろに答えた。
煮え切らない将人にソフィアはしびれを切らし、
「ちょっと、そこのガラスコップを持ってみて」と将人に指示し、リワインドタイマーを取り出し、 第2のボタンを押した。そして
「そのガラスコップを落としてみて」
将人は驚いて「ええ!だめだよ。割れちゃうよ」と言ったが、「いいからいいから」とソフィアは将人の手を突っついた。
「わっ」
将人はびっくりして手を放してしまった。床に落ちたガラスコップは割れて破片が飛び散った。
「ああ、どうしてくれるの、お母さんに怒られるよ」と身を震わせ悚然となった。
「見ててね」と自信満々にソフィアが将人の手を握り、リワインドタイマーの第2ボタンをもう一度押すと、割れたはずのガラスコップが何事もなかったように将人の手の中にあった。
「え、どうなっているの?」と目を白黒させた。
「これはリワインドタイマーと言って、時間を元に戻すことのできる器械なの。これを持っている者と、繋がりのある者だけはその間に起きた経験も受け継がれるの」
敵か味方かもわからぬ者に、リワインドタイマーの存在を明かすのは危険を伴う。しかし、ひょんなきっかけで見つけた一路の希望を何とか繋ぎ止めたい。ゲームの中で強くなるなんて、時間もかかるし地味な作業だ。本当に強くなるかどうかもわからないが、他に手段も思いつかない。
マサト、悪いけど国の為に付きあってもらうわ。
ソフィアは開き直り、
「これがあれば、時間を気にせずゲームの中の現実を堪能できるわ。危なくなったら時間も元に戻せるし、どう?」
いたずらっぽく笑った。
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