3話 希望の種
少し希望が見えてきそうです。
まだ成長期である将人の身長は162㎝、体重は55㎏でやや細身の体型だ。全長30㎝程度のソフィアに比べると相当大きいが、シャーロットワールドでのヒト型での大きさに近い。中学3年生と言うのはこの世界ではまだ子供で、更に名前は、武田と言う性と将人と言う名に分かれているということもわかった。
ソフィアはふと考えた。
(この巨人たちを従えることができたならラシアンの軍勢も倒すことが可能なのでは…)
「あの…マサトさんと呼んでもいいのかしら。この国の仲間はどれくらい居るの?あなた達の他にも生命体はどれだけいるの?」
「えっと、この国を支配しているのは人間で、他にも生き物はいて…」と将人はしどろもどろに答えていると、突如閃いたように、社会の教科書を取り出した。
「これを読んで!意味のあるものだったらイメージで取り込めるんでしょ?」
ソフィアは目の前に置かれた社会の教科書にそっと手を触れ、中身のイメージを読み取った。人種が分かれていること、時代によっては同族同士で争っていた事、貧富の差があったこと、そしてその科学力、現在のこの国の状態はどうなのかを大まかに知ることができた。
そこでわかったことは、知的生命体であるヒトがこの国を支配しており、科学力も高い。しかし魔術は使えないようだ。代わりに争う際には技術を駆使した火力を使う。我々も火力は使うが、火力はあくまでも魔術の補助だ。争いでの勝敗は火力よりも魔術の質と大きさによって決まる。何らかの状況により、彼らと我々が争ったなら、魔術を使える我々が相手ではこの国のヒト達はなすすべはないだろう。
ソフィアは「他にも色々な書物を見せえほしい」と言って将人の部屋に置いてある教科書や辞典、参考書等を読み取り、この世界の知識を吸収していった。
(この星の中でも、マサトのいる国は比較的豊かな国で、友好的で性質も現在は穏やかだ。仮に、私達の国の争いに協力をしてくれると言ったとしても、今の私にはこの国の人たちをシャーロットワールドに転送できる能力もない。仮に転送できたとしても、争いで使う武器や弾薬が尽きれば魔力の前では無力になろう。いまの現状ではとてもラシアンにはかなうまい。)
ソフィアが、少し考え込みがっかりした様子でうなだれていると
「疲れたんでしょ、そのベッドで休んでから帰り道を探したらいいよ。僕は少しゲームで遊んでいるから」
と言って将人はテレビゲームをやりだした。
ソフィアがテレビゲームの方へ眼をやると、物語のイメージが断片的に流れ込んできた。
そのイメージには経験によって体力を上げ、魔術を習得し、魔物を討伐する物語になっていた。
「マサトさん。それはいったい何?」
将人はソフィの方へ振り向き、
「これはテレビゲームだよ。ガードをゲーム機に入れたら色々なゲームを楽しめるんだ」と数あるメモリーカードの1枚を手に取って見せた。
「そんでもって、今やっているのは『竜討伐の物語』って言う、大人気のテレビゲームなんだよ。主人公がゲームの中で強くなって、魔法を使い、悪者をやっつけるんだ」
「魔法って何?」
「普通の人間が出来ない特別な力の事だよ。火を出したり、凍らせたり」
(魔法?私のところでいう魔術と同等なものか)
「マサトさんも魔法を使えるの?」
「照れ臭いから『マサト』でいいよ。現実の世界の人間は魔法を使えないんだよ」
やはりこの世界の人間は、魔術は使えない。ただ、魔術(魔法)という観念はある様だ。
「魔法使えたらかっこいいよね」と将人は興奮気味に語った。
(ゲームの中のイメージを具現化すれば、その中では魔術(魔法)は使えるけどね)
と、ソフィアは単純にそう思った。そして少し考えこみ
(そうだ! 具現化した世界の中で魔術(魔法)が使うことが出来るようになれれば、そもそもイメージによって具現化されているシャーロットワールドの中でも、覚えた魔術(魔法)が使えるんじゃ?このゲームで習得した色々な魔術(魔法)を駆使すれば、ラシアン帝国を止めることが出来るかも…)
ソフィアはそう思うといてもたっても居られなくなった。でも、1人で行くにはこの世界の事を知らなさすぎる。
「ねえ、マサト。ゲームの中に入ってみたい?」
「うん。あの中で魔法を使ってみたいし、戦いもしてみたい」
屈託のない表情で将人は答えた。
よし、マサトが食いついた。
「入ってみる?」
ソフィアがいたずらっぽく笑った。
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