2話 異世界にて
王によってどこかに飛ばされたソフィアの話です。
ソフィアは気を失い、ある部屋のベッドに横たわっていた。ふと目を覚ますと、自分がこれまで生きてきたシャーロットワールドとは全く違う家具が並んでいる。何やら気配を感じ、横を見るとソフィアから見れば巨人のような少年が呆然と立ちすくんでいた。
ソフィアはヒト型から妖精に戻っていた。ヒト型から妖精に戻ったソフィアは少年が巨人の様に見えたのだ。
(な、なんだこれ…う、動いた…)少年は身震いをした。
ソフィアも状況がまだ整理できていない。が、身の危険を感じる。何とか逃げ出す方法はないか…。ソフィアはあたりを見渡した。真正面に窓、後ろには扉、何やら黒い箱、そして寝具。寝具の下にはスペースがある。いざとなったら寝具の下に身を隠し、逃げ出す方法を考えねば、と思案した。その時
「よ、妖精か?」と子供は喋った。
(この生き物は会話ができる、ちょっと待てよ、落ち着かなきゃ。よく見るとこの扉と言い、衣類を纏っているという事は、高い文明があるじゃない)
ソフィアは何時でも退避出来るような体制を取り、念思を送ってみた。
「私はシャーロットワールドのグリン国から来たソフィアと言います。ここはどこ、あなたは誰なの?」
子供は目をぱちくりさせ
「わあ、喋った。喋れるんだ」と少年は興奮気味に答えた。
その妖精は少し西洋人っぽい顔立ちで、髪は金髪、目はエメラルドグリーン。とても小さいが人間そっくり。それでいてとても可愛らしい。見た目は女の子のようだ。
少年は物珍しく眺めていると、
「いえ、実際に喋っているわけではないの。言葉や、物、書物に至っても法則があって、何らかの意味を持っているの。その意味をイメージとして理解しているの。だから、言語そのものが違っても意味は分かるし、私からも相手にそのイメージを伝えることで会話をしているように感じるのよ」と説明をしだした。
「んん?よくわからないけど、凄そうだね。所で、ここで何をしてるの?」
興味津々な表情で少年は尋ねた。
ソフィアは、今、この状況がどのような事になっているのか理解ができていない以上、正直に現状を言うわけにはいかない。少し考えた後、
「おうちに帰る途中、道に迷ってしまって一休みしていたところよ。でも、あなたのような大きな生物は見たことないわ。折角なので少しこの世界の事を教えてくれないかしら」
と笑顔で返した。
「ねえ、ソフィア。これをちょっと見てくれる?」
と少年は本棚から1冊の本を取り出し、妖精の挿絵を見せた。
その挿絵はソフィアと同じく背中に羽が生えており、この世界の生き物と一緒に居るところを描かれていた。丁度、今いる2人の大きさと同じようなものだった。
「ほら見て、この国ではこの絵の人を妖精って言うんだ。ソフィアにそっくりでしょ。空想の生き物ってなっているんだよ。でもほんとに居たんだね」
少年は目をぱちくりさせながら答えた。
ソフィアはその挿絵を見て驚いた。正に自分の仲間が描かれていたのだ。
この世界に我々の仲間が私の様に迷い込んだか、はたまた、気づかれないように別の種族が存在しているのだろうか…挿絵からすると友好関係を築いているようにも見える。
今、置かれている現状を思索していると少年は
「僕は武田将人って言うんだ。15歳。中学3年生だよ」屈託のない笑顔で将人は自己紹介をした。
読んで頂き有難うございます。
最低でも、2週間に1度は更新する予定です。