12話 とっても筋肉痛 (番外 ①)
冒険の間の日常を書きました
起き上がると、ラックの上のバスケットの中で、妖精姿のソフィアはまだ寝ていた。小さな木の人形は机の端に腰を掛けた状態で置かれていた。
(ソフィアも疲れているんだな。ティアも有難う)
ほっこりと2人を眺めた後、制服に着替えて、痛みを堪えながら1階に降りた。筋肉痛になっているのでどことなく変な動きになっていた。
「あんたどうしたの?どこか痛いの?」
心配しているというより、吹き出しそうになりながら母の里美は尋ねた。
「き、昨日体育の授業で張り切りすぎちゃって、体が筋肉痛なんだ」
少々焦り気味で将人は答えた。
「珍しいわね。体育であんたが頑張るなんて。今日雨でも降るんじゃない?」
将人は運動が得意な方ではない。友人が居ないというわけではないが、外に遊びに行ったりするわけでもない。クラブにも特に入らず、家に帰るとゲームをするか本を読むかのどちらかだ。そんな息子が体育で張り切るなど、どういう心境の変化だろう?
それでも、体育で張り切った話を聞き、なんだか少しうれしくなる里美だった。
学校に行く途中で友人の上杉徹に出会った。
「おはよう、将人… 一体どうしたんだ?その歩き方?」
ぎこちない歩き方をしている将人に驚いて徹は尋ねた。
「おはよう、徹。いやあ、昨日の夜、何故か急に走りたくなってさ。折角なら腕も鍛えようと思って軽めの重りを腕につけてランニングをしたんだ。慣れないことはするもんじゃないな。体中が痛いよ」(本当の事を言うと、変人扱いされちゃうよ)
それっぽくなるように口から出まかせな話を作って将人は答えた。
「ええ!珍しいなおまえ。俺も運動したかったんだよ。今晩付き合うぞ」と、やや興奮気味な徹
「いやいやいや、この状態を見てくれよ。走れると思うかい?今日は休養日だよ」
将人は首を横に振り、精一杯のお断りをした。
「なに、将人変な歩き方して」
次は、教室に入り席に着くと、クスクス笑いながら隣の席の斉木みどりが声をかけてきた。
将人とみどりは幼馴染で家も近所だ。将人はみどりの事を『きみどり』と呼んでいる。
「なんだよ、きみどり。ちょっとした筋肉痛さ。昨日急に野球に目覚めて、素振りをいっぱいしたらこのざまだよ」
さっきと言っていること(徹に話した事)が違う。でも、そんなことはお構いなしに苦笑いをして、将人はそう言った。
「なんだよ、さっきと言ってる事が違うじゃねえか」笑いながら、徹が口をはさんだ。
「いいんだよ。別に筋肉痛の理由なんてなんだって。」
2人は、(将人が筋肉痛になるまで運動するなんてどういうことだ?)
それに、筋肉痛で苦しんでいる割には、何時もより快活な将人を不思議に思った。
将人にとって、筋肉痛の理由などどうでもよい。ただただ、早く家に帰ってゲームの続きをやりたいだけなのだ。
一日の授業が終わると、友人の誘いも断り、一目散に帰路についた。
筋肉痛も少しマシになってきた。さあ、今日も冒険をするぞ。
私のつたない物語を読んで頂き有難うございます。
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次回「再びゲームの中へ」です。宜しくお願い致します。
3日以内目標に
最低でも、2週間に1度は更新する予定です。