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第八話 勘違いしてんじゃない!

ルブの計らいで行商人のところに買い物に行く事になったジンとトイ。

側から見たらデートですが、果たして。


どうぞお楽しみください。

「おう、待たせた」

「いえ、僕も今しがた来たところです」


 約束通り、トイとジンは北側の広場で落ち合った。


「……隊服なのですね」

「当たり前だろ。駐屯地の中じゃこれが一番楽だからな」

「そうなのでしょうが……」

「何だ? 私服は可愛いワンピースとか思ってたのか? オレにそんなの似合う訳ないだろ。はっはっは」

「似合うと思いますよ」

「は?」


 ジンの真剣な言葉に、冗談めかしていたトイの目が点になる。


「部隊を指揮している時は女性という事を隠さないといけないのは理解しますが、休務日にまで押し込める必要はないと思います」

「っかー! 余計なお世話だ! オレはこれでうまくやってんだ! あんたを魔獣と戦う仲間としちゃ信頼してるが、そこまで口出されたくはねぇな!」

「……失礼。そうですね」

「……」

「……」


 何とも言えない重苦しい空気。

 そこに、


「あ、隊長。買い物ですか?」


 隊員の一人が通りがかる。


「ん、あぁ、ちょっとな」

「また酒、お願いしますね!」

「わかってる。本当好きだなお前」

「隊長ほどじゃないですよ。ジン様も買い物で?」

「僕は特にこれを買いたいというのはないですけど、良い物があったら買おうかなと思っています」

「そうですか。では良い休務日を!」


 隊員は走り去っていった。


「……じゃあ、行くか」

「……えぇ……」


 何となく空気が変わり、二人は行商人達が広げたブースに向かう。


「とりあえず一通り回ったら、あいつらのために酒買わないとな」

「……もしかして宴会の時のお酒は、あなたが買ってるのですか?」

「あぁ、そうだよ。あいつらには支給品じゃ足りないからな」

「……なら僕も買います。買わせてください!」


 ジンの迫力に一瞬気圧されるも、トイは手を軽く振る。


「気持ちだけもらっとくよ。酒は私が一番飲むから買ってんだ。飲まねぇあんたに買わせる理由はねぇ」

「ですが僕とあなたは『バディ』です! 同格です! ならば僕も酒を振る舞わなければ、本当の仲間にはなれません!」

「……くっだらねぇ」

「な、何がですか!」

「酒を奢るくれぇで仲間になれるとか思ってんじゃねぇよバーカ」

「ぐ……」

「……あんたはもう私達の仲間だろうが……」

「……あ……」


 喜色をにじませるジンから目を逸らすように、トイは歩き出す。


「おら行くぞ!」

「ありがとうございます! でも仲間への差し入れとして、お酒は買わせてくださいね」

「あんたしつけぇな! ……差し入れなら好きにすりゃいいじゃねぇか……」


 そんな二人を見つめるいくつもの視線。


「副隊長! 俺いい仕事しましたよね!」

「あぁよくやった。今後もあの二人の空気が悪くなったら、通りすがりの顔をして空気を変えるんだ」

「しかし隊長が恋かぁ……。嬉しいような寂しいような……」

「でも俺達のために今まで女の部分を殺してやってきてくれたんだから、幸せになってほしいよなぁ……」

「何か、世話になった先生が嫁に行く気分……」

「わかる! 寂しいけど、祝わねぇとな……」


 しんみりする隊員に、ルブの小声の指示が飛ぶ。


「よし、お前達はここで待機! 俺は東側の班に指示を出しに行く!」

『了解!』

「だが二人がどう動くかはわからん! こっち側でトラブルがあった場合には臨機応変に対応する事!」

『了解!』

「くれぐれも後押ししようなんて考えるな! 道はできている! 俺達は小石を取り除くだけでいい!」

『了解!』


 これまでのどんな任務よりも、部隊の心が一つになった瞬間であった。

読了ありがとうございます。


ルブは待てのできる子。


次話はデート回続き。

明日朝七時に投稿予定です。

よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 待合せのやりとりはカップルっぽくて良いですね。 もう仲間だ、の言葉はトイさんに言われるからこそジンさんも喜びもひとしおと言った感じでしょうか。 喜んでるジンさんが少し犬っぽく見えてしまい…
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