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第四話 あいつに女扱いされたくない!

『バディ』であるジンとトイの仲が悪い事を憂う副隊長ルブ。

ジンから話を聞き、一筋縄ではいかない事を痛感した彼は、トイに報告に向かう。

苦労人の運命やいかに。


どうぞお楽しみください。

「隊長、よろしいですか?」

「ルブか。入んな」

「失礼します」


 執務室の扉を叩いたルブは、いつも通りの声色のトイに少し安心して扉を開いた。

 気持ちの切り替えが早いのが、トイの隊長としての強みの一つだ。


「今日の戦果ですが……」

「あぁ今見た。くっそ、悔しいけど今までで一番被害が少ねぇな。逃走八体は、まぁ仕方ねぇ」

「えぇ。これなら警戒しつつも次の襲撃までに十分準備ができます」

「気に入らねぇ野郎だが、戦力としては認めざるを得ねぇって事か」

「はい」


 忌々しそうに言いながらも、ジンを高く評価しているトイに、ルブは一縷の希望を抱いた。


「で、今ちょっとジン様と話をして来たんですけど……」

「あ?」


 戦乙女の目で睨まれて、希望が砕け散るのを感じるルブ。

 それでも何とか気持ちを立て直し、話を続ける。


「その、ジン様のお母様も魔術師で、戦場で亡くなられたみたいでして……」

「……で?」

「だから誰も戦わなくていいように、魔術師になったそうで……」

「……そうかよ」

「ですから、その、戦う目的は一緒だと思うんです! だから……」

「だから何だ? 仲良しこよしをやれってか? 女が戦場にいるのがありえねぇって言い切ったあの野郎と?」

「……いえ、その……」


 怒気をはらんだ声に、ルブは言葉に詰まる。

 しかし恐れていた叱責は飛ばず、代わりに大きな溜息がルブの耳に入った。


「……だからって別に意味もなく喧嘩する気もねぇよ。仮にもオレは隊長だぞ?」

「え?」

「確かにこっちの事情も知らねぇで文句垂れたのは気に入らねぇけど、それはそれ、これはこれだ」

「そ、そうですか……」


 ルブは胸を撫で下ろす。

 トイと同じ部隊になって数年、あそこまで激したのは久しぶりだったので不安に思っていたが、どうやら大丈夫そうだ。


「他に何か言ってたか?」

「えっと……」


 真っ先に脳裏に浮かんだのは、自信をへし折ってのくだりで、次が嫁の貰い手の話だったが、そんな事を話すほどルブは破滅願望に満ちてはいない。


「何か言ってたんだな? 言えよ」

「あ、はい……」


 言い淀んだ事で、何かしら答えないと納得しない。

 必死に頭を回したルブは、


「そ、そう言えば、隊長の事、美しい、なんて言ってましたよ」


 何を踏んでも地雷と覚悟して、それでも一番無難そうなものを答えた。


「……へぇ、オレを美しいって、そう言ったのかあの野郎?」

「は、はい!」

「所詮はあいつも男かよ。まぁ貴族様だろうが勃つもんは勃つんだろうしな」

「あ、いや、その、そんな感じではなくて」

「何だ? お前もあいつの肩を持つのか?」

「何でもないです!」


 今まで脂ぎった上官や、邪な目で見てくる同僚を軽々どころかコテンパンにあしらってきたトイの反応に、ルブはもう何も言えない。


「とりあえずそんな助平貴族様でも大事な戦力だ。あいつが次の襲撃の時に万全でやれるように、色々面倒見てやれ」

「は、はい」

「あと魔術を使う時に時間があるほど負担が少ねぇって聞くから、食い止めの訓練をしっかりやらせとけ」

「わかりました!」

「よし、行っていいぞ」

「失礼します!」


 執務室を辞したルブは、盛大に溜息をこぼした。


「はぁ……」

「おいルブ」

「はい!」


 扉越しにかけられた声に、思わず背筋が伸びる。

 溜息を咎められるのかと思ったルブにかけられた言葉には、


「世話の一環として、色街に連れてってやってもいいからな? 金なら出してやる」


 煮立つような悪意が込められていた。


「い、いやその」

「たぁっぷり可愛がってもらった貴族のお坊っちゃんがどんな顔するのか、楽しみだな! なぁ?」

「し、失礼いたします!」


 小走りで執務室を離れ、先程より大きな溜息をついたルブは、遠い目をして呟いた。


「……この部隊、もう駄目かも知れない……」

読了ありがとうございます。


ルブの心労は増すばかり。


次話は明日朝七時に投稿予定です。

よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 何を踏んでも地雷と分かっていて踏みにいくルブさんの勇姿に敬礼! その内、胃痛で倒れて二階級特進とかしてしまいそう(汗) [気になる点] 口は悪いものの、ちゃんとジンさんの負担が軽くなるよう…
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