最終話 『バディ』だなんて呼びたくない!
魔獣の謎は解け、発生装置も破壊できた。
しかしその代償は大きく……。
最終話、お楽しみください。
「あれからもう一ヶ月か」
トイは花束を持って立つ。
目の前には物言わぬ石碑。
「オレ達、勝ったぞ。オレ達が持ち帰った情報で、他の魔獣発生装置も全部破壊された。南のなんて、ムキムキの女魔術師が一人で潰したってよ。すげぇ奴もいるもんだな」
小さく笑うトイ。その笑いに力はない。
後ろには悲痛な面持ちの隊員達。
中には涙を流している者もいた。
「戦いは終わった。お陰で生きて帰れた。一緒に戦えた事、誇りに思う。そして心より感謝する。共に過ごした時間を忘れない。……ゆっくり眠ってくれ」
石碑に花束を捧げ、敬礼の姿勢を取る。
同時に隊員全員が一分の乱れもなく、敬礼を行った。
「……ありがとな。……さよなら」
トイの目から、二筋涙が流れた。
「よ、待たせたな」
「そう思うなら僕も列席させてくださいよ」
本から目を上げたジンが不満げに言う。
「だって今日は折れた武器の慰霊だぞ? お前別に武器失ってねぇじゃねぇか」
「そうですけど、僕も部隊の一員だった身として、皆さんと思いを共有したいのです!」
「まぁこの後の宴会には参加できるんだからいいじゃねぇか」
からからと笑うトイと対照的に、ジンの表情が暗くなる。
「退任、するんですね……」
「……まぁな。魔獣の脅威もなくなったし、そのうち故郷に家族も戻ってくるだろ。目的は果たせたし、潮時ってやつだよ」
「……僕のせい、ですよね……」
「違ぇよバカ! 目的果たしたっつってんだろ! お前の無茶は関係ねぇ!」
「……」
ジンはうつむいて、魔術が撃てなくなった自分の手を眺める。
その沈んだ様子に、トイは目を逸らし、頬をかく。
「……ま、もうお前以外と『バディ』組みたくねぇってのもあるけど……」
「……トイ……」
顔を上げたジンの視線に堪えかねたように、トイは強引に話題を変える。
「でもな! あれだけ言ったのに無理して魔術撃った事、オレ許してねぇからな! 『バディ』の信頼を裏切りやがって!」
「そ、それは仕方ないでしょう! 命の危険があったんですから! ……悪かったとは、思ってますけど……」
「言い訳はいらねぇんだよ! 二人して退任するし、もう名実共にオレとお前は『バディ』じゃねぇ!」
「……はい」
「だから……!」
トイの語気が急に弱くなる。
落ちていた視線を上げたジンの目に飛び込む、目を潤ませた赤い顔。
「な、何か、別の、名前で、呼べ……! 『バディ』みたいに、がっちり、絆が、つながるやつで……!」
風が吹く。
トイの長い髪が、守り抜いた絆が、ふわりと舞う。
緑がきらりと輝いた。
「……今度は、ちゃんと言いますね」
ジンはトイの震える身体を優しく抱きしめる。
「トイ、君を心から愛しています。僕の恋人になってもらえますか?」
「……し、仕方ねぇ。そこまで言うなら、こ、こ恋人に、なってやる……」
「いずれは妻になってくださいね」
「つ……! ちょ、調子に乗んな! ……もうちょいしたらな……」
怒った口調で嬉しそうに微笑むトイの髪には、幸運の四葉が輝いていた。
最後までお付き合いくださり、ありがとうございます。
はい、安定と安心の甘々ハッピーエンドでした。
企画趣旨にもタグにもハッピーエンドがあるので、刹那の歌展開を入れてみました。
もし一瞬でも「あーん! ジン様が死んだ!」と嘆いてくださる方がいたら、ごめんなさい。
そしてありがとうございます。
秋月 忍様、この素敵な企画に参加させていただき、ありがとうございます!




