第十話 宴会は酒飲むためだけの場じゃない!
買い物で二人の距離は縮まったような、そうでないような。
迎撃を終え、ジンは何かに気付いた様子。
どうぞお楽しみください。
響く轟音。
吹き飛ぶ魔獣。
三度目の侵攻を退けたジンは、違和感を覚えていた。
(やはり五日……、そして魔獣は前回と同じ六十……。規則的すぎる……。何か意図的な力が働いているのか……?)
物見櫓から魔獣の来る方角を見つめるジン。
その先に何かがあるという確信めいた予感が、胸に湧き上がる。
(もしその何かが判明すれば、この戦いを終わらせる何かになるかもしれない……!)
物見櫓を降り、引き上げてくる隊員達の元へ向かう。
「トイ!」
「よぉジン! 今日もお前のおかげで被害ゼロ、逃走ゼロの大勝利だ! 今夜も宴会だぜ!」
「そんな事よりもこれまでの戦闘記録、全て見せてください!」
「そんな事!?」
兜を外したトイの目がつり上がる。
「おい! 命がけで戦ったこいつらへのねぎらいを、そんな事とはどういうつもりだ!」
「あ! ……いや、その、すみません……」
隊員達の顔に悲しみとも寂しさともつかないものが浮かんでいるのを見て、ジンは失言に気が付いた。
前回酒に手をつけなかった事について、トイから隊員に軽く話はあったが、何とはなしに薄いわだかまりが残っていた。
仲間から楽しみを否定された、そんな気持ちになっているのだろう。
(しまった……!)
失言を悔やむが、出た言葉はもう戻せない。
そんな中、トイが声を張り上げる。
「なーにー!? お詫びの印に行商人から買った一番高ぇ酒と燻製肉で宴会を盛り上げてくれるだとー!?」
わざとらしい大声に、ジンもすぐに意図を理解した。
「え? あ、はい! お祝いのために買っておいたお酒ですので、差し入れさせてもらいます!」
「話がわかるじゃねぇか! なら水に流すぞ! いいな野郎共!」
『おおーっ!』
隊員達が喜びの雄叫びをあげるのを聞いて、胸を撫で下ろすジン。
その肩を引き寄せたトイが、耳元でささやく。
「……命かけた奴らのねぎらいをおろそかにすんなよバカ」
「す、すみません……。気がはやって……。助かりました」
素直な謝罪に、トイの顔から険が落ちる。
「……何か気になる事でもあるのか」
「……まだ確証はありません。ですが私の推論が正しければ、この戦いを終わらせられるかもしれません……」
「……! わかった……。明日昼過ぎたらオレの執務室に来てくれ。資料は全部見せる」
「ありがとうございます……!」
頬が触れそうな距離でトイがニヤリと笑い、ジンもそれに微笑みで返す。
「そしたら飲むぞ! さすがに今日は付き合えよ?」
「勿論です!」
「本当に飲めるんだろうな? 一口なめてバターンなんてカッコ悪い事するなよ?」
「……ご心配なく。僕は正しいお酒の楽しみ方を心得ていますから」
「あぁ!? まるでオレの飲み方が間違ってるような言い草じゃねぇか!」
「正しくはないでしょう! ただ酔えば良い、ただ量を飲めれば良いだなんて、お酒に対して失礼とは思わないんですか!?」
「酒飲んで酔わねぇ方が失礼だろうが! はっ! どうせお上品にちびちび飲んで、うんちくこねくり回すような飲み方してんだろ!?」
「聞き捨てなりませんね! ならばどちらの飲み方が正しいか、勝負しましょう!」
「望むところだ!」
二人だけで盛り上がっているところに、ルブがおずおずと声をかける。
「えっと、じゃあ今日の宴会は延期、ですかね?」
「バカ言ってんじゃねぇ! 一緒にやるに決まってんだろ! ……そうだ! お前らも参加しろ!」
「えぇ……。俺らは普通に飲めたらそれで……」
「何だと!?」
「何です!?」
「参加します! 参加させていただきます!」
息のあった矛先の変更に、ルブは慌てて何度も頷く。
「風呂入ったらすぐ集合だぞ! 今日という今日はお前を徹底的に負かしてやる!」
「望むところです! その鼻っ柱、よーく洗っておく事ですね!」
「そっちこそ涙溜めるバケツでも用意しておくんだな!」
「えぇ用意しておきますよ! あなたが泣いた時に使えるでしょうからね!」
「何だと!」
「何ですか!」
「おーし全員装備外して、風呂入ったら宴会の準備だー。遅れるなよー」
『りょーかい』
睨み合う二人をよそに、何もかもを諦めた顔のルブの指揮の元で、隊員達はさっさと宿舎へと戻っていった。
読了ありがとうございます。
バディだから肩組んでも恥ずかしくないもん。
次話はお酒回なのに、朝七時に投稿予定です。
致し方なし。
よろしくお願いいたします。




