第一話 『バディ』だなんて認めない!
秋月忍様主催「男女バディ祭」参加作品です。
バナー提供:相内 充希様
全十四話の予定です。
一日二話、午前午後七時に投稿予定です。
喧嘩しながら信頼を深めていくタイプのラブコメです。
よろしくお願いいたします。
対魔獣戦線西地区。
兵士達は、希望の到着を今か今かと待っていた。
「お! 来たぞ!」
到着した馬車の横に、整列する兵士達。
そこに現れたのは銀髪碧眼の青年。
豪奢な服と品位あふれる立居振る舞いが、彼が貴族である事を示していた。
「ジン・レ・トウアー様。よくぞこの地にお越しくださいました」
そこに一歩踏み出した翠の瞳の女性が、長い栗色の髪を揺らして最大限の礼を取った。
ジンと呼ばれた青年は一瞬眉をひそめたが、すぐに美しい笑顔に切り替え、丁寧な礼を返した。
「国を魔獣から護る最前線で戦うあなた方に、心より敬意を示します。トウアー家の名にかけて、そして一魔術師として、共に戦わせてください」
「心強いお言葉、何より嬉しく思います」
女性の言葉に、兵士全員の礼が揃う。
素晴らしい練度だ、とジンは頼もしく思った。
国を脅かす魔獣の襲来。
多くの犠牲の上に完成した戦術が、高位魔術による殲滅。
その発動までの時間を稼ぐ、前線の兵士達。
彼らとなら任務をこなせそうだと、ジンはこれからの任務への不安が軽くなるのを感じた。
「何とも統率の取れた、素晴らしい部隊ですね」
「お褒めの言葉、ありがとうございます」
「『バディ』となる部隊長殿にもご挨拶を差し上げたいのですが、今どちらにいらっしゃいますか?」
「私です」
「……何です?」
目を点にするジンに、女性は苦笑いを浮かべながら再度告げる。
「ですから私が、この部隊をまとめるトイ・ファンイです」
「はあああぁぁぁ!?」
ジンの絶叫に、トイを始め、隊員達が一歩引く。
「部隊に女性がいるだけでも信じられませんのに、部隊長が女性!? おかしいでしょう! ありえません!」
「はぁ!? おかしいって何だ!」
丁寧な口調をかなぐり捨てたトイの言葉にも、ジンの剣幕は崩れない。
「おかしいものはおかしいでしょう! 前線の兵士達は、その身をもって魔獣達と戦う者達! そんな過酷な場に女性がいていいはずがありません!」
「勝手な事ばっかりぬかしてんじゃねぇこの苦労知らずの貴族のボンボンが!」
「く、苦労知らずのボンボン……!?」
「お前ら貴族が安全なところでのうのうとしてる間、魔獣どもの侵攻を食い止めてきたのは、オレとこいつらだ! 侮辱するなら覚悟しな!」
「侮辱はどちらですか! よろしい! 魔獣なんてあなた方なしでも蹴散らしてご覧に入れましょう!」
「上等だ! 次の襲来があった時には、お前のへなちょこ魔術なんざなくても魔獣なんて楽勝だってところを見せてやる!」
「何ですと!」
「何だよ!」
ぎりぎりと睨み合う二人。
慌てて間に割って入る副隊長のルブ・シキレフ。
「あ、あの、お二人は『バディ』になる訳ですから、そんな喧嘩はおやめください……」
「『バディ』!? 冗談ではありません! こんな女性を命を預ける『バディ』だなんて呼びたくありません!」
「そりゃこっちのセリフだ! あー、やだやだ! こんな世間知らずの坊ちゃんのお守りをしなきゃならねぇなんてな!」
「誰が世間知らずですか!」
「女だから兵士に向かない、なんて口に出す時点で、世間知らずが丸わかりじゃねぇか!」
「女性が戦場に適さないなんて常識でしょう!? 世間知らずはどちらですか!」
「言ったな!」
「言ったら何ですか!」
「じ、ジン様は長旅でお疲れの様子だ! 早く宿舎にご案内しろ! 隊長! 執務室の報告書への承認をお願いします!」
ルブはなおも険悪な雰囲気を撒き散らす二人をどうにか引き離し、大きく溜息をついた。
「こんな『バディ』で大丈夫か……?」
読了ありがとうございます。
キャラ名ですが、まずは魔術師ジン・レ・トウアー。
逆から読むと、『アウトレンジ』
遠距離攻撃主体なのでこんな感じにしました。
では次話は本日夜七時。
よろしくお願いいたします。




