第5話 中間テスト勉強会
「も~やりたくない」
「まだ勉強始めてから1時間もたってないでしょ!」
中間テストまであと一週間となった今日、私たちは図書館で勉強会を開いていた。はじめは私が大橋さんから教わる予定だったのだが……
「ンなこと言われてもよ、この教科書に書いてあることほとんど意味わかんないから萎えちまうんだよ」
と、このように私よりもお馬鹿さんだったのだ。どんな人でも欠点はある、なんて言葉を身をもって教えられた。でもよくこの頭でこの高校に合格したもんだ。
「ああ、それか?受験の時に私の隣にいたやつがめちゃ頭良さそうだったからな。頭の中読んで答えを教えてもらってたんだよ」
「それ、カンニング!!!」
「ばれなきゃ犯罪じゃないんですよ~、というかその不正をされないために監督官がいるんだろ?でも私は注意されなかった。つまり、これは向こう側の不手際ってこと。私は悪くない(QED)」
「そりゃ超能力考慮してる監督官なんておらんわ!」
新たに発覚した大橋さんの秘密、それは手の付けられないどうしようもない『お馬鹿さん』だということだった。
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「でね、ここはこの公式を使うと……」
あの衝撃発言から30分後、私が大橋さんに数学を教えている。あと1週間で大橋さんが全ての科目の赤点回避することは無理難題だと判断した私は、大橋さんの得意科目数学を教えていた。ちなみに、テスト中の超能力使用はしないという約束をしていた。
「おぉ、できたできた。案外簡単だな」
「だって教科書の初めのページの例題だもん……」
「これで中間何点取れそうだ?」
「1点」
「1、1点!?冗談だろ!?」
冗談なんかじゃない。うちの学校は県上位の私立進学校。となれば当然定期テストの大半の問題は教科書の問題をやっただけでは解けるはずがない。おまけのような問題で満点を取ること。それが赤点回避に必要な最低限の要素だった。
「ほらあと19問やって。そしたら次国語やるよ」
「待って!マジ、国語だけは勘弁!特に古文とか漢文とか意味がわからない!」
「ダメダメ、今日は全教科やるまで帰さないよ!」
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あたりは既に真っ暗。
放課後の16時から気付けばもう20時だ。まさかここまでかかるとは思っていなかった。けれど、本日分のノルマは達成したみたいだ。4時間休憩なしのノンストップで勉強していたから、向かいに座る大橋さんが真っ白に燃え尽きていた。
これで赤点回避出来ればいいけど……
気になる中間テストまであと6日。