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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

白昼夢

作者: くれな。

※スプラッターな描写があります。苦手な方はブラウザバックお願いします※


" 白昼夢 "


ズキッ――


普段生活している中で、ふとした時に頭に少し痛みが走る。



これは合図だ。

『目を瞑れ』そう訴えかけてくる。



そして私は、現実の世界と見分けが付かない、とてもリアルな"白昼夢"の世界に誘われる。

不思議なのが、この"白昼夢"の中で歩いたり、走ったりできるのだが、この"白昼夢"での行動はそのまま現実世界でも同じ動作をしているのだ。

傍からみると、目を瞑っていて危なっかしいらしいが、私は"白昼夢"でしっかりと見ている。


現に、数多の人が行き交うスクランブル交差点でも人にぶつからずに渡っている。




じゃあなんでこの"白昼夢"が夢だとわかるのか。


それは遡ること小学生の頃。

下校時の事だった。

歩道を歩いていて、ふと対面から車が走ってきた。

それを見て、何か嫌な予感がした。



ズキッ――



嫌な予感と初めての痛みに怖くなり、反射的に目を瞑った。それが始まりだった。

目を瞑ったのに、しっかりと周りが見える。

私の横を車が走って――何かを避けようとしたのかハンドルを切り、


電柱に激しくぶつかった。


運転席がひしゃげ、乗っている人も大怪我しただろう。そんな事故が起きた。



"白昼夢"の中では。



目を開けると、電柱に当たったサイドミラーが転がっているだけだった。


そう、これが一番最初の"白昼夢"。

ただ事故が起きたり、誰かが大怪我するだけの"白昼夢"で、しかもそのまま現実には起こらなかった。


如何にリアルな世界で、同じ行動を取ることが出来ても、結果に差異がある。

だからこれが夢なんだと認識出来た。




そしてある日のこと。

家族と親戚で旅行に行く時の事だった。

大人数のちょっとしたバスツアーだった。

最初の目的地に向かう為に高速を走っているとき、



ズキッ――



たまにあるあの痛みがした。

そうして見せてくれる世界は、

無理な運転をした自動車が目の前で事故を起こし、そこにバスが突っ込んでしまう所だった。


でもそうなると、折角の楽しみだったバスツアーが無くなってしまうかもしれない。

それがとても嫌だった私は、その"白昼夢"の中で急ブレーキを踏んで何とかぶつからずに、何とかかわせるようにした。


現実も実際にぶつかる直前で止まり、何とかかわせそうだった。





でも、後ろの40tトラックは止まれなかった。





直後にドンと大きく揺れ、斜めに動いて壁にぶつかった。

重たい荷を載せたトラックはまだ止まれない。

壁とトラックに挟まれ、車体がどんどん圧縮されていく。

座席と、そこに座っている人ごと全て潰していった……





何故か私は骨折だけで済んだ。

確かにとても痛かったし、目が覚めた場所は病院だった。


そして一週間後に知った。

優しい叔父も叔母も、仲の良かった従兄弟も、

そしてお父さんとお母さん、更には弟までも。

全部、なにもかもが潰されたと聞いた。


本当に旅行が楽しみで、ずっと待ち遠しかった。

なのに……

まだ幼い子供だった私は孤独になってしまった。


最初は信じられなかった。

急にお父さんもお母さんも、弟も居なくなってしまうなんて。

絶対に嘘だ。怪我をして別の病室に居るだけだ!!

そう思いたかった。



でも、骨折の鈍い痛みに合わせて、


「これが現実だ、受け止めろ」


と囁き声が聴こえたような気がした。





しかし、それだけでは終わらなかった。

明らかな"ペナルティー"が加わったのだ。


それはリハビリがてら、松葉杖をつきながら病院の敷地内を歩いている時だった。



ズキッ――



トラウマのあの痛みで、恐怖のあまり思わず転んでしまった。


それは病院の壁面の塗装をする為の足場からだった。


何かで使う細いパイプのような物が降ってきた。

それを避けようと思うも、うまく力が入らない。



嫌だ……!!



こっちに降って来ないで!左にズレて!!

そう一瞬思った。

でも、前の事故を思い出すと、下手にねじ曲げるのは駄目。そう思い受け入れる事にした。

段々と時間がゆっくりに感じる中、パイプは私の胸に触れる。



バキッと肋骨が折れる感覚とともに、異物が穿いていく。

とても激しい、熱い痛みとともに、何かが溢れ出していく。

何が起きたのか、理解できるけどしたくない、それに激しい痛みが邪魔をする。

やがて、とても熱かったのが一気にどんどん寒くなっていく。

末端の感覚がなくなり、四肢も感覚がなくなり、夢の中なのに眠くなる……




そうして"白昼夢"が醒めた。

視界の右にパイプが生えていた。

どうやら、耳からほんの少し離れた所に刺さったようだった。

もし、一瞬だけ思ったように左に動かしていたら...



とても恐ろしい思いだった。

いろんな人が駆けつけて、心配してくれていても、"白昼夢"で味わった色んな感覚が生々しく訴えてくる。


これまでは、明らかに誰かが死んでしまう"白昼夢"は見なかった。

それに自分はそこまで大きな怪我すらしなかった。

それが、大怪我どころじゃなかった。ましてや、下手に捻じ曲げると、それが自分の顔に刺さっていただろう。


気がつけば、転んだ痛み、骨折の鈍い痛み、

そして身体中の感覚が、全て"恐怖"の前に消え失せていた。



痛いのは嫌だ、死にたくない……!!



そう思うなら、

その為には"白昼夢"の中で、そうならないといけない。


"恐怖"が、そんな感じに囁いているようだった。




それ以来"白昼夢"の中では、そうなってしまうようになった。

嫌な、生々しい感覚とともに。




そうして年月は過ぎ、ある日のこと。




電車通学をする私は、乗り換えの為に先頭車両に毎日乗っていた。

その日も、先頭車両に乗るためにホームの隅に一人で立っていた。


いつもと同じ時間に、向かいのホームを通過しようとする反対に向かう車両。



ズキッ――



今度はその通過しようとする電車が、ホームの直前に脱線するようだった。

私の方に向かわず、向かい側のホームを蹂躪しようとしていて、嫌な予感がした。

その直感に従い、"私だけ"に直撃し、別の方向に進んで止まるような夢にした。


相変わらず、生々しい感覚に慣れない。


でも"白昼夢"から醒めると、電車が両方のホームを蹂躪した後だった。

どうやら線路とホームの段差で跳ねた車両は私の頭上スレスレを通過し、

前から2両目の場所で待っていた人から全てを薙ぎ倒したようだった。


そう、"私だけ"無事なようだった。


辺りは紅い色で染まり、数多のうめき声が木霊する中、立ち尽くしていた。

確かに、夢を変えなければ、実際は私にぶつかっていたかもしれないし、

そうじゃなかったかもしれない。

どっちにしても、"私だけ"にしたら、"私だけ"になってしまった。

その事実の方がよっぽど恐ろしかった。

あの病院の時以来の"恐怖"だった。


それ以来、"白昼夢"では私と、私の近くに居る人は死んでしまう事となった。


「それが正解」


いつもの囁き声が聴こえたような気がした。




もちろん今もそう。


"白昼夢"を見ながら歩くスクランブル交差点、ちょうど真ん中辺りのときにそれは現れた。

建築現場で使う足場を満載したトラックだった。

足場を見て、ふと病院でのことを思い出す。

それでも、"白昼夢"を見なければならない。


どうやら、『ブレーキが壊れた』らしい。

まぁ私が壊したとも言う。

どうにかハンドルを切って、何かにぶつけて止まろうとしてるらしいが、もう遅い。

さらに、積荷の数多の足場を固定していた固定具もどうやら『壊れていた』らしい。


トラックは積み荷を踊らせながら赤信号のスクランブル交差点に侵入し、ボウリングのように薙ぎ倒していく。

なるべく人を躱そうと慌てて切ったハンドルは弧を描き、遠心力で弾き飛んだ固定具とともに大量の足場や建材の雨が横から降ってくる。


暴走したトラックは止まれないし、運良く進路上に居なかった人は、横から何かのパイプとかに串刺しにされていく。


ちなみに私は弾き飛ばされた上、

地面に刺さっていた細長く、鋭いパイプに臀部から着地して、口から吐き出した。

串刺し人間の完成である。


そんな私を中心に、数多の彼岸花が咲き乱れ、世界が紅く染まっていった。



そうして"白昼夢"から醒めた私は、目を丸くした。

トラックは、ハンドルを切って歩道に突っ込み色々と薙いだあと、建物に衝突して運転席を大きくひしゃげさせて、紅い壁画を描いていた。



あぁ、歩道とトラックの運転手を失念していた。




この、"悪夢を見なければならない呪い"を忌々しく思いつつ、今日も一日が過ぎていく。

読んで戴きありがとう御座います。

拙い作品ですが、感想を戴けると嬉しいです。


※9/27 14:00 細かい所や誤字脱字の修正、改行を増やしました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] なかなかホラーな内容で面白いです。 「世にも奇妙な」であれば、病院で植物状態の主人公が見ている夢、というオチがつきそうですね。 [気になる点] 内容には関係ありませんが、主人公の性別がはっ…
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