レポート70 天翔るユメオ
最近、「人面サークル」専用の活動報告ができ、しょっちゅうそこを見てしまう。
見るたびに増える、仲間たちの言葉。そこには志を共にする者への優しさや労りがあり、開けるといつも新しい宝石がある、不思議な宝箱を覗くようだ。
前回の童話バージョンも「人面」挿絵も、そこから生まれた。
ぼく、フラ、アドバイ爺、モフモフペンギンの面々で、旅館に帰った。
「お風呂になさいますか。それともご夕食?」
「今日はたくさん働いて疲れたから、お風呂にしよう。ペンギンは入ってもいいの?」
「もちろんでございます。モフモフ様のお背中をお流ししなかったとあれば、当旅館の名折れで」
みんなで露天風呂に行くと、女将がせっせとペンギンをこすり、
「ああ! モフモフの赤ちゃんペンギンの毛皮の、なんと柔らかいこと!」
もくもくもくもく泡立てるので、女将も含めた全員が泡に包まれてしまった。
「ペンペン、ペンペン」
「気持ちいいのね。こんなにキレイにしてもらったの、初めてなんでしょ?」
「ペンペン、ペンペン」
「へー、やけにフラに懐くな。ママだと思われてるんじゃない?」
「失礼ね。もちろんお姉ちゃんに決まってるでしょ。ねえ、ペンペン?」
「ペンペーン!」
食事の時間になると、ペンギンの前には、生魚の入ったバケツがドンと置かれた。
「ペペペン」
「美味そうに食べるなあ。ところでフラ、今夜もホストクラブに行くの?」
「そんな時間ないわ。明日の特別授業の準備もあるし」
「疲れたろ。早く寝たら?」
「女将さん、わたしの部屋で、ペンペンも一緒に寝ていい?」
「どうぞどうぞ。冷んやり気持ちのいい、石の布団をご用意いたします」
フラとペンギンが自分たちの部屋へ行くと、アドバイ爺がせっせとノートをつけ始めた。
「なに書いてるんですか? アドバイ爺も、明日の授業の準備?」
「いや。『残酷な園児たち』の、ファーストシングルの歌詞を考えておるのじゃ」
ノートを覗いてみた。
あーあー 早くオムツ 替えてよねー
ジージー まだまだ 抱っこ必要なのー
あーあー 一人じゃ お風呂入れないー
ジージー 添い寝しないと いやいやー
「……これを、女子高生に唄わせるんですか?」
「そうじゃ。本物の幼児でないのは残念じゃがの」
ドン! と隣から大きな音がして、ぼくとアドバイ爺は畳から浮きあがった。
「なんだろう。ペンギンが暴れたかな?」
隣の部屋に行ってみた。
「なにやってんの?」
「枕投げ。面白いから、やってみて」
ペンギンに向かって、枕を投げてみた。スポッとモフモフに入る。するとペンギンは、得意そうにニマーッと笑い、フンッと鼻から息を吐いた。
ズドーンと枕が発射され、アドバイ爺を襖までふっとばした。
「面白くないぞよ! わしは部屋に帰る!」
ぼくはフラの部屋に残った。どうしても、やってみたいことがあったのだ。
「ねえ、フラ。2人でモフモフの中に入らない?」
「……なにするつもり?」
「なんにも。2人になりたいだけ。ダメ?」
「ちょっとだけなら」
フラを先に入れて、あとから入った。究極の気持ち良さ。ぼくはフラに抱きついた。
「もおー、なんにもしないって言ったくせに」
「しないよ。こうしてるだけ」
「あのさ、ユメオ」
「なに?」
「わたし、森に住んでたとき、街に行ってみたいって言ったでしょ」
「うん。だから、山越えの冒険もした」
「それはね、遊びたいっていうのもあったけど、別の理由もあるの」
「なに?」
「わたし、モンスターに生まれたから、家族の愛を知らないの」
「ああ……」
「街に行っていろんな人と会って、いろんな話をしたら、わたしにもわかるかもしれないって思ったの。親を愛するってどういうことか、子どもを愛するってどういうことか」
「わかりそう?」
「まだ来たばっかりだから。これから時間をかけて、ゆっくりと勉強するつもり」
「フラなら平気さ」
「わたし心配。結婚して子どもができたとき、愛せるかどうか」
「自然に愛するんじゃない?」
「そう思えたら、楽なんだけどね」
「そう思えたら、結婚しよう」
「わからない。愛せないかもしれない。だって、自分が愛してもらってないのに」
「フラ……」
フラが震えているのがわかった。ぼくはフラの肩にまわした手に、そっと力をこめた。
とーー
「あれ、なんだか揺れてない? ペンギンのやつ、どこか走ってるぞ」
「見て」
フラがモフモフを指で広げて外を見た。ぼくも覗いてみると、そこは客引きたちがわんさといる、繁華街のど真ん中だった。
「わ、いつの間にこんなとこまで。おい、ペンギン。早く旅館に戻れ!」
ぼくはペンギンのお腹を、中からドンドン叩いた。するとペンギンは、フンッと息を吐いた。
ぼくはモフモフから発射され、その勢いで浴衣が脱げて、全裸で夜のネオン街の空を飛翔した。
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我が読書歴 第20回
挿絵の前は、レビュー本の話だった。
そしてぼくが、レビュー本以上に夢中になって読んだのが、ハウツー本、つまり小説の書き方というやつだ。
その中のベストが、
「推理日記」(佐野洋著)です!
ミステリー作家志望の必読書と言われていました。まさに教科書ですね。




