レポート53 最後のヒント
ふと思ったことがある。
ネット小説に、音はつけられないかということだ。
例えばこの連載なら、マシンガンを撃ってる場面をタップすると、ダダダダダダっていう効果音が流れたり、巨大蜘蛛の登場シーンで、ジャーンっていう音が出たりとか。
ぼくはメカオンチなので、技術的に可能かどうかわからないけど、もしできたら面白いんじゃないかと思っている。
紙の本では絶対できないことができるなら、ぼくはぜひやってみたい。
「あっ! またバイオ博士マンからのメッセージだ」
今度はレポート3だった。それを逆さ男マンに見せると(内容はレポート3を参照のこと)、
「なんだ。肝腎なことは、今回も書いてないじゃないか」
「バイオ刑事マンって、まだ25歳なんですね。老けてるなー」
「だけど、若いのに老けてるのが、やつの弱点ってわけでもないだろう?」
バイオ博士マンのメッセージには、バイオ刑事マンが若いがゆえに、プライドが高く、自分の欠点を許しがたく思っていると書いてあった。
「老け顔が弱点ってことはないでしょうね。でもサングラスを外したら、意外とブ男で、若さゆえにそれを悩んでるってのはありそうですね」
「そんな中高生みたいな悩みを持つかな。仮にそうだとしても、弱点ってことにはならんな」
「ですかね。まあ、あのマーロウの遺伝子を引き継いでるんだから、それほどブ男になるとは考えにくいですけど」
「3人のうち、誰の遺伝子が強力かにもよるぞ」
「そしたらホームズが濃そうだなー。ところがホームズも、けっこう美男子なんですよね」
「こんなくだらん話してるより、バイオ博士マンの次の通信を見たらどうだ。どっかに書いてあるんだろう?」
バイオ博士マンは、レポート1、2、3の順にメッセージを書き込んでいたが、次を4にすると敵に気づかれそうだということで、今度は番号をとばして記すと書いてあった。
そして、その番号のヒントとして、
〈平仮名の「ひ、ら」に行け〉
とだけ書いてあった。
「逆さ男マン、この意味わかります?」
「わからん。だけど、レポートは52までしかないんだから、その全部を開いていけば、どっかで正解に当たるじゃないか」
「それだと面白くないですよ。せっかくバイオ博士マンが工夫してくれたんだから、ちゃんと推理で到達しないと」
「アホらしい。勝手にやってろ。おれは5階のおもちゃ売り場に行くぞ」
「今すぐですか?」
「そうだ。なぜならおれは、おもちゃが好きだからだ。おれはデパートに来たら、なにがなんでも必ずおもちゃ売り場に寄る」
ずんずんエレベーターに向かうので、仕方なくついて行った。
おもちゃ売り場に来てからも、ずっと「ひ、ら」について考えつづけた。
(みなさんも、先に進む前に考えてみてください)
「平仮名の『ひ、ら』だから、前半だけってことか? 後半がない? 『が、な』がない? それがなんの番号になる? ダメだな、ちっともわからない」
ひ、ら、がある。が、な、がない。などと、いろいろ頭の中でひねくりまわしてみた。
「あ」
ぱっと答えが浮かんだ。
「『ひ』『ら』が『な』。つまり、ひらがなの『ひ、ら』は、どっちも『な』になる。だから『な、な』。正解は7だ!」
ぼくは、レポート7を開いて読んだ。
果たしてそこには、最後のヒントが書いてあった。
(内容については、レポート7を参照のこと)
「そうか。あからさまに書いちゃうと、バイオ刑事マンに見つかって削除される危険があるんだな。この文章を手がかりに、やつの弱点を推理するしかないようだ」
ぼくは何度もそれを読んだ。要するに、バイオ刑事マンは街のみんなを逮捕しちゃったから、いくら刑事の仕事をしても、給料を払ってくれる人がいないことを、博士は指摘していた。
「だけど、そんなのはわかりきったことだ。あいつの頭脳があれば、ほかにいくらでも稼ぐ方法を見つけるだろう。あいつの頭は、ポアロ並みなんだから」
どうもこのヒントではわからない。しかし博士は、これでわかるはずだと書いている。ぼくはなにか、大きな見落としをしているのだろうか?
考えすぎて、頭が痛くなったとき、不気味なすすり泣きの声が聞こえてきた。
「なんだろう。ここにはもう、ぼくと逆さ男マンの2人しかいないのに、小さい子の泣き声が確かにしている」
ぼくはこわごわと、逆さ男マンのほうへ歩いて行った。逆さ男マンは、恐竜のおもちゃを胸に抱き締め、
「ダメだよお! これ、ぼくのなんだからあ!」
泣いていたのは、逆さ男マンだった!
「とらないでよお! イジメないでよお! ぼくのかおがさかさまだからって、どうしてみんな、イジワルするんだよお!」
すすり泣きは、やがて号泣になった。
「逆さ男マン。今あなたは、立派な大人です。マシンガンを抱えた逞ましい男性です。あなたの見ている悪夢はニセモノです。どうか目を醒ましてください」
「つよくなりたいよお! バカにされたくないよお! いつかみんなを、みかえしてやりたいよお!」
「この逆さま野郎っ!!」
不意に、逆さ男マンが抱いていた恐竜が、真っ赤な口をあけて叫んだ。
「弱い自分を隠し、強い男に見せかけるため、書籍化できない禁止用語を連発した罪で逮捕する!」
恐竜が見る見るうちに巨大化し、泣きじゃくる逆さ男マンを、頭からパクリと呑み込んだ。
そしてぼくは、一人になった。
PV1742
LV17
我が読書歴 第4回
漫画ばかり読んでいた小学生時代。
夏休みの課題図書も、ろくに読まなかった。笑い話やイソップ物語などはよかったが、きちんとした小説は、面白くなさそうで手にとる気にもならなかった。
が、その時代、たった1冊だけ、読んであまりにも面白くて感動してしまった本がある。
「クリスマス・キャロル」です!
子ども向けの訳だったけど、いやー、まさに読者を選ばぬ傑作でした。




