表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/445

レポート13 分岐B フラ

 あらすじで「通常の小説ではない」と書きましたが、では小説の定義とはなにか?


 上の文を書いたときに頭にあったのは、ディーン・R・クーンツが『ベストセラー小説の書き方』の中で述べた、


「プロットのないものは、それが古典的な小説の定義に当てはまらないという理由で、小説ではない」


 という言葉です(記憶で書いているので、正確な引用ではありません)。


 とすると、これはまさしく小説ではありません。むしろプロットがないことを特徴とした実験ですから。


 が、にもかかわらず、作者の想像では、小説と呼ぶしかないものができるだろうと思っています。


 長くなりましたので、続きは後書きで。

「ユメオ、わたしあいつらと、決闘する!」


 美女軍団の輪に、フラが飛び込んでいった。


 フラは相当な猛者だが、多勢に無勢。50人くらいに袋叩きにされて、服をビリビリに破かれた。


「アドバイ爺」


 ぼくは見かねて言った。


「あれじゃあフラがかわいそうだ。美女軍団は、元いた泉に帰してくれ」


「フォッ、フォッ、フォ。おぬし、惚れたの」


 アドバイ爺がそれっと手を振ると、美女たちは我れ先に泉に飛び込んでいった。


「これでハーレムの夢はついえた。でもいいのだ。ぼくはフラとの純愛に生きたい」


「良い決断をしたの、ユメオ殿。ついでにフラ殿の傷を治して、服も元どおりにしておいたぞ」


「……どうも」


(なんだよ。フラをいたわるのは、ぼくの役目じゃないか)


「あ?」


 急にアドバイ爺の口調が、険しくなった。


「今おまえ、くそジジイって言った?」


「言ってませんよ」


 ぼくは驚いて、すぐに否定した。


「聞こえてんだよ、こっちは。マジ一生許さねえかんな」


「言ってませんって」


「わしの一生、マジ長いし。なめんなって話」


「ホントに言ってませんって! 本文の4行目を見てください」


 ぼくが涙目になって訴えると、心なしか、アドバイ爺の口元が嬉しそうに緩んだ。


「4行目? ……おお、本当じゃ。おぬしは確かに、アドバイ爺と言っておる。すまなんだ」


「でしょ? あー、焦った。アドバイ爺に嫌われたら、この先電源をどうしようかと思いましたよ」


「堪忍、堪忍。お詫びと言ってはなんじゃが、この世界のあちこちにコンセントを作っておいたぞ。セーブポイントみたいなもんじゃな。それを探して歩くのも、また乙なもんじゃろうて」


「助かります、アドバイ爺」


(まったく……年寄りには気を遣うな)


「あ?」


 アドバイ爺が、顔をぐっと近づけてきた。


「てめー、今くそジジイっつったろ」


「言ってませんって! 5行前を見てください!」


「5行前じゃねーよ。さっきから、てめーのモノローグは全部読めてんだよ。カッコで閉じてたら見えねーだろうってか? 書き直せバーカ」


 ではもう一度。


「助かります。アドバイ爺」


(まったく……こんな素敵なご老人が、この世に二人といるだろうか。いや、いない)


 アドバイ爺が、フォッフォと笑った。


「では純愛を育むのじゃな。あた会おうぞ」


 アドバイ爺は、つむじ風に巻かれて消えた。


「大丈夫、フラ?」


「ありがとう、ユメオ」


 ぼくらは見つめ合った。ぼくは決して、この子を悲しませるようなことはしない。


「よそ見をしちゃ嫌よ」


「するもんか」


「愛してる?」


「愛してるさ」


「どのくらい?」


「宇宙超え」


「じゃあさ、むさくるしいジジイなんかとイチャイチャしないで、わたしとだけしゃべって」


「やめろ!」


 フラの口を手で押さえたが、遅かった。


「見えてるっつってんだろ!」


 天から雷が落ちたかと思うと、泉からゴキチョンの群れが大量に湧き出し、ぼくとフラを覆いつくして鼻や口から侵入してきた。


 オエーッ。分岐B、投稿。


 PV306

 LV3


 あ、レベル上がった。


 ぼくは小説とは、なんでもありだと思っています。


 それだけの懐、幅、自由度が、小説にはある。


 ただし、一つだけ条件があります。面白いことです。


 ぼくは、小説ならすべて面白いはずだと思っています。なぜなら、これまでたくさん読んできて、ぼくには難しかったもの、ぼくの肌には合わなかったものなどはあっても、ただの一作も面白くなかったものはないからです。


 誰が読んで面白くない。もしそういうものがあったら、それはたぶん小説ではありません。論文かなにかでしょう。


 だから、


「なんでもありの面白いもの」


 が、ぼくにとっての小説の定義です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ