レポート13 分岐B フラ
あらすじで「通常の小説ではない」と書きましたが、では小説の定義とはなにか?
上の文を書いたときに頭にあったのは、ディーン・R・クーンツが『ベストセラー小説の書き方』の中で述べた、
「プロットのないものは、それが古典的な小説の定義に当てはまらないという理由で、小説ではない」
という言葉です(記憶で書いているので、正確な引用ではありません)。
とすると、これはまさしく小説ではありません。むしろプロットがないことを特徴とした実験ですから。
が、にもかかわらず、作者の想像では、小説と呼ぶしかないものができるだろうと思っています。
長くなりましたので、続きは後書きで。
「ユメオ、わたしあいつらと、決闘する!」
美女軍団の輪に、フラが飛び込んでいった。
フラは相当な猛者だが、多勢に無勢。50人くらいに袋叩きにされて、服をビリビリに破かれた。
「アドバイ爺」
ぼくは見かねて言った。
「あれじゃあフラがかわいそうだ。美女軍団は、元いた泉に帰してくれ」
「フォッ、フォッ、フォ。おぬし、惚れたの」
アドバイ爺がそれっと手を振ると、美女たちは我れ先に泉に飛び込んでいった。
「これでハーレムの夢はついえた。でもいいのだ。ぼくはフラとの純愛に生きたい」
「良い決断をしたの、ユメオ殿。ついでにフラ殿の傷を治して、服も元どおりにしておいたぞ」
「……どうも」
(なんだよ。フラをいたわるのは、ぼくの役目じゃないか)
「あ?」
急にアドバイ爺の口調が、険しくなった。
「今おまえ、くそジジイって言った?」
「言ってませんよ」
ぼくは驚いて、すぐに否定した。
「聞こえてんだよ、こっちは。マジ一生許さねえかんな」
「言ってませんって」
「わしの一生、マジ長いし。なめんなって話」
「ホントに言ってませんって! 本文の4行目を見てください」
ぼくが涙目になって訴えると、心なしか、アドバイ爺の口元が嬉しそうに緩んだ。
「4行目? ……おお、本当じゃ。おぬしは確かに、アドバイ爺と言っておる。すまなんだ」
「でしょ? あー、焦った。アドバイ爺に嫌われたら、この先電源をどうしようかと思いましたよ」
「堪忍、堪忍。お詫びと言ってはなんじゃが、この世界のあちこちにコンセントを作っておいたぞ。セーブポイントみたいなもんじゃな。それを探して歩くのも、また乙なもんじゃろうて」
「助かります、アドバイ爺」
(まったく……年寄りには気を遣うな)
「あ?」
アドバイ爺が、顔をぐっと近づけてきた。
「てめー、今くそジジイっつったろ」
「言ってませんって! 5行前を見てください!」
「5行前じゃねーよ。さっきから、てめーのモノローグは全部読めてんだよ。カッコで閉じてたら見えねーだろうってか? 書き直せバーカ」
ではもう一度。
「助かります。アドバイ爺」
(まったく……こんな素敵なご老人が、この世に二人といるだろうか。いや、いない)
アドバイ爺が、フォッフォと笑った。
「では純愛を育むのじゃな。あた会おうぞ」
アドバイ爺は、つむじ風に巻かれて消えた。
「大丈夫、フラ?」
「ありがとう、ユメオ」
ぼくらは見つめ合った。ぼくは決して、この子を悲しませるようなことはしない。
「よそ見をしちゃ嫌よ」
「するもんか」
「愛してる?」
「愛してるさ」
「どのくらい?」
「宇宙超え」
「じゃあさ、むさくるしいジジイなんかとイチャイチャしないで、わたしとだけしゃべって」
「やめろ!」
フラの口を手で押さえたが、遅かった。
「見えてるっつってんだろ!」
天から雷が落ちたかと思うと、泉からゴキチョンの群れが大量に湧き出し、ぼくとフラを覆いつくして鼻や口から侵入してきた。
オエーッ。分岐B、投稿。
PV306
LV3
あ、レベル上がった。
ぼくは小説とは、なんでもありだと思っています。
それだけの懐、幅、自由度が、小説にはある。
ただし、一つだけ条件があります。面白いことです。
ぼくは、小説ならすべて面白いはずだと思っています。なぜなら、これまでたくさん読んできて、ぼくには難しかったもの、ぼくの肌には合わなかったものなどはあっても、ただの一作も面白くなかったものはないからです。
誰が読んで面白くない。もしそういうものがあったら、それはたぶん小説ではありません。論文かなにかでしょう。
だから、
「なんでもありの面白いもの」
が、ぼくにとっての小説の定義です。




