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《汝その者を怒らす事無かれ》

――彼を救う為に、全力を出した俺達の攻撃によって、ついに変異したカルシファー〖漆黒竜〗は倒れた。


 その意識は最早無く、ただ微かに息をするだけだ。


 俺達はついに、このダンジョンボスのカルシファーを倒した。それも、大成功と言っても良い条件で。


 それはきっと、PT全員がカルシファーの事を思いながら、慎重に攻撃を加えていたからなのだ。それは間違い無い事だろうと俺は思う。

 

――後は仮面の男、ジェスターを倒してカルシファーを救世するだけになった。


 そして、奴は今どうなっているのか? 一言で言えば、ボッコボコ状態であった。


【イヒィーッ! ちょ、待っtアバババッ……ゴフッ】


――奴は使徒レミナに捕まり、サンドバックと化していた。


『何を、言っているか、全く分からない、であります。(ドスッ)

 言いたい、事があるなら、ちゃんと喋れ、であります。(ボゴオッ)

 ですが、もしそれが慈悲を乞う言葉なのでしたら、誠に遺憾ですが、それは断る、であります!(ドガガッ)

 自分の犯した罪を、覚えているでありますか!? (バキャッ)

 覚えていたとしても、それで今までの罪が無条件で、許されると、思っているで、ありますか?

 例えばそれが、神様のほんの気紛れ、貴方の罪が許される事が万が一あったとしても、私は断じて赦しはしない、であります!

 その邪悪な魂が、完全に滅するまで私は、この手で殴る(浄化する)のを止めない、であります!』

 

【グヒャーッァ!】(ベチャリ)


(うわぁ。奴の全身は、すでに原型を留めてない。仮面はとっくに砕け、顔パンパンのボコボコ状態。素顔とか以前に、こいつの正体が全くわからん状態だ)


――女神様の使徒レミナ、コイツはとんでもない撲殺天使だ。


 普段のユルイ雰囲気からは、全く想像もつかない〖悪・即・鉄拳制裁〗というタイプだった訳か。

 

 使徒レミナが冷静に、そして淡々と奴を締め上げる姿に、見ていた俺は恐怖した。


――俺は決して、自分が原因で彼女を怒らせてはならないと、固く心に誓った瞬間だった。


《汝その者を怒らす事無かれ》

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