魔鼠モッチーは見た
※ 魔鼠モッチー視点
【それでは、仕方ないデスネェ~? 本当に不本意デスガネェ? それならばワタクシも、本気でお相手するしかないデスネェ!】
仮面の男ジェスターは、そう言って両手を手刀のように構えてそう言った。
『さっさと掛かって来い、であります(クイクイッ)』
対峙する使徒レミナは、徒手空拳で独特な構えをしながら片手で挑発をしていた。
(使徒レミナって、もしかして意外と肉体武闘派だった!?)
しかしその姿は、何故か凄く自然体でサマになっていた。片手で、早く来い! と、ジェスターを挑発する仕草も見せていた。
――そしてついに、使徒レミナと仮面の男ジェスターの戦いが始まった。
まずジェスターが先に動いた! ゆらり、と体がブレたように見えたすぐ後に、奴は一瞬で使徒レミナの背後に現れた。
(は、速いッ!)
モッチーを経由した俺の視界では、その動きが全く映らない程だった。もしや、瞬間移動のような? そんなスキルを使っているのだろうか。そうだとしたら、今の俺達ではとても奴には敵わなかっただろう。危なかった。
しかし、これでもジェスターは相当弱体化しているとかどんだけだよ……。何かの冗談だと思いたい。この聖なる結界が無ければ、この何倍もの強さのジェスターに俺は勝てるビジョンは見えなかった。
だが使徒レミナは、その動きにもちゃんと反応していた。振り返り様の裏拳、からの流れる様な無駄の無い動きで奴への足払いのコボ攻撃だ。
裏拳を最初に回避したジェスターも、ほぼ同時の足払い攻撃には慌てて後方小ジャンプで回避。
(くっ! 惜しいッ! 無駄の無い攻撃だったのに)
だが使徒レミナは、ジャンプで隙を見せたジェスターの前へとすでに詰め寄っていた。
詰め寄ってからの、左右の拳で連打、連打連打連打ッ!
(何と言うか、もう速過ぎてその腕が何本にも見えるぞ!?)
ジェスターは、必死に何とかそれを捌いている様子だったが、防戦一方となりジリジリと押し込まれてきていた。
その内、使徒レミナの1発が綺麗にジェスターの右頬に決まり、ジェスターは顔から盛大に錐揉み回転しながら吹き飛んでいく。そして、ダンジョンの壁にめり込んで止まった。
【ギヒィ~!】ジェスターは壁にめり込み、そうぶざまな悲鳴を上げた。
(あ、なんかピクピク痙攣してる。だいぶ効いてるっぽいぞ? マジぱねぇな使徒レミナ)
それにしても、レミナさんちょっと強過ぎ問題だな! でも俺の100倍のステータスだし、当然と言えば当然の結末かな。
――それは、見事なくらい圧倒的な戦闘だった。




