最奥に佇む漆黒竜
――そして最後に残るのは、救世スキルの力の残滓とも思える、小さな光の粒子のみだった。
俺達はそれを、大切に両手で救い上げながら、この元は人間達の冥福を祈る事しか出来なかった。
その光の粒子は、俺達の手の上に暫しの間留まり、やがて全て儚く消えていくのだった。
「……先を急ごう。これ以上、同じ様な被害者を増やさない為に。仮面の男ジェスターは、必ずここで倒さなければいけない!」
俺達は顔を見合わせ、静かに大きく頷きあった。
――そしていよいよ、俺達はダンジョンの最深部まで辿り着いた。そして最奥に佇むは、禍々しい姿の漆黒竜だ。
(これが彼……。元は蒼竜カルシファー。流石の威圧感だな)
……そして、彼の変わり果てた姿に思わず鴉さんの顔が強張った。
(それに、あの姿は想像以上に酷いな。もしかしたら手遅れかもしれない)
これまで俺が、救えなかった者達の姿を思わず連想してしまった。クソッ! 弱気になるなよ俺。最初から諦めててどうする。自分で自分を、叱咤激励する。もうやるしかないんだ!
「ルーク! 戦闘開始したら最前衛でヘイトは全て任せるっ! 鴉さんは、カルシファーにまずは会話を! でも不用意に近寄って、彼の攻撃を受けないでね。私とアスカは、まず魔法で味方を支援! 完全に戦闘になったら、デバフや攻撃魔法も開始でいくよ! 様子を見て火力不足なら私も前に出る。レミナさんは、仮面の男を探して相手してて下さい」
そう味方に簡単な指示を出し、戦闘準備を整えた時だった。
【オヤオヤ? また小ネズミが、誘い込まれて来たと思いましたら、コレはコレは~ナカナカどうして、大きなネズミさんが一杯のようデスネェ~?】
カルシファーの後ろの影から、ゆっくりと仮面の男が姿を現したのだった。
コイツがジェスターか! 絶対に、コイツだけは許さない。許してはならないんだ。俺達は一斉に戦闘態勢を取り、仮面の男ジェスターと相対したのだった。




