やがて儚く消えていった
『承知であります! ではダンジョン最深部まで急ぐであります』
使徒レミナと一緒に、こうして俺はダンジョンへと急ぎ突入した。
俺はまず眷属達に、思念で作戦変更を伝えてから、こちらへの合流を優先するように連絡。
未知を戻り、とにかく俺との合流を優先させる。敵との戦闘は避けて行動させ、暫くして無事に救出班と俺達は合流出来たのだった。
「ここで、あまり長々と喋る時間は無いから、簡潔に今後の作戦を説明するね! まずここにいるエルフさんは、私達の味方でレミナさん。今回の、飛び入り助っ人的ポジション。レミナさんから得た敵の新情報からすると、今の私達では完全に手に負えない敵だと判断しました。そこでレミナさんは、仮面の男を担当し、私達と一緒に今回戦ってくれる事になりました。そして私達は全員、ダンジョンボスの彼を担当になります。カルシファーの、今の状態次第にはなるけれど。彼とは、間違いなく戦闘になるって覚悟だけはして欲しい。最低でも、変異した彼を瀕死程度まで追い込まないと、私の救済スキルが効果が無いのでそこだけ注意して欲しい。彼を救う為に」
そして、まずは鴉さんがカルシファーと、単独で会話を試みる事や、問答無用で戦闘になった場合でも、彼へのトドメは刺さずに、必ず瀕死状態で捕縛する事をマストとした。
不自然なくらい、常に自然体の使徒レミナを除いて、俺達PTメンバーには、程良い緊張感が生まれたようだった。
臨時会議も終わり、俺達は斥候のモッチーを先頭にし、避けられる戦闘は避けながら、慎重にダンジョンを進んで行く。
PTの最前衛は、タンクのルークと使徒レミナが左右に陣取る形で担当した。
鴉さんは、そのすぐ後ろで敵のタゲが来ないであろう位置取りだ。
アスカは中衛に配置し、敵の近接からは届かない位置から魔法攻撃や支援を(バフ・デバフ)する。もし敵に後衛職が居たら、それを俺と一緒に魔法で優先的に狙っていく形だ。
そして俺は、最後尾に位置取って背後を警戒&サーチしつつ、アスカと同じく遠距離攻撃や魔法支援などを随時行っていく感じだ。
前回の反省点を踏まえ、ボス単独での戦闘では様子を見て、早めに前に出て火力を上げる予定だ。今回は手加減が必要な相手なので、細心の注意が必要だ。
またこのダンジョンは、魔獣や魔物だけではなく様々な異形者達で溢れ返っていた。
サーチ持ちが多い俺達は、的確で有利なこちらからの奇襲攻撃により、魔獣や魔物などは即座に倒して行く。ドロップした物や素材などは、全て擬態にこっそり収納した。
……だがやはり、異形者だけは粗雑に扱えずにいた。時間に迫られていなければ、キチンと埋葬してやりたいのだが。
どこか諦めきれず、俺は必ず最後に救世を試みたが、やはり以前と同じで異形者の誰一人として救うことが出来なかった。救世スキルは決して万能では無いのだと痛感した。
俺が救世スキルを使うと、その力が異形者の体の中に入り込み、異形者達はその体を急速に崩壊させていき、やがて消えていくのだ。
「……やっぱりダメか。すまない。成仏してくれ」
きっとこうなる、くらいは分かっていた。事実として、異形者達は全員が崩れ去り、最後に一欠けらの肉片も残らない。唯一最後に残るのは、救世スキルの力の残滓と思える、小さな光の粒子のみだった。
俺達はそれを、大切に両手で救い上げながら、異形者達の冥福を祈るしか出来なかった。
その光の粒子は、俺達の手の上に暫しの間留まり続け、やがて儚く消えていったのだった。




