『共闘』
「オイオイ、こんなの、嘘だろッ!? マジかよ……?」
――この女神様の使徒レミナ、その圧倒的なステータスを俺は見せつけられた。とても信じられない力、その凄まじい能力を目の当たりにして俺は、ただ驚愕するしかなかった。
クッ……予想外だな。これはとんだ誤算かもしれない。上には上がいるくらいは、当然俺も分かってはいた。だがまさか、ここまでの差があるのか。
女神様の使徒とは、こんなにも強いのか。もう凄まじい力だとしか言い様が無い。
使徒レミナ、その脅威のステータスは、今の俺と比較しても100倍以上の差があった。
しかもだ、この俺よりも10倍以上、仮面の男が強いだって!? それだと、今回の作戦はもう破綻している。
本当に、この女神の使徒の言う通りだとすると、このままでは救出班の命が危ない。
どうしたら良いんだ? クソッ! このままではマズイ。もっとよく考えるんだ俺。
――俺は必死に、作戦の練り直しをしようと思考する。
『これで少しは、考えが変わったでありますか? ダンジョンボスに関しても、それは同じ事であります。私達女神の使徒が、このダンジョンを今回見つけた理由も、まずはそこにあるのであります。つい先日、この場所からは、今までに無い強大な力の波動を感知したからこそ、こうして私が急ぎ派遣されたのであります。ですから、相手がこのダンジョンのボスだけだとしても、今の皆様には強敵過ぎるであります。急ぎユウコ殿は、お仲間と合流して早急に撤退するのが賢明であります。後は全てこの私が任されるのであります』
……それが事実ならばそうしたい。でも、それじゃダメだ。それでは自分達の命しか、救えないじゃないか。
きっとここで、今回カルシファーを救えなければ、もう彼を救済する事は出来ないだろう。そうなれば、鴉さんは後悔と絶望した人生をこれから過ごす事になるだろう。
彼女を放って置けないから、ここまで来たんじゃないか。それじゃ意味が無いんだ。
それに、今の俺の未来視スキルでは、鴉さんの絶望ENDは見えてはいないのだ。それはつまり、俺達で何とか出来るって事だからだろう? よく考えろ俺。どうすれば助けられる?
「よく分かった。とりあえず、こちらの作戦は変更する。私はこれから急いでPTメンバーと合流することにする。そこからの話しなんだけど……。使徒レミナ、貴女に1つ頼みがある。聞いてくれるか?」
『はい、どうぞであります?』
「使徒レミナには、私達と一緒に行動して欲しい。つまり共闘。ジェスター(仮面の男)が、私達には手に負えない存在なのは理解した。だから使徒レミナは、当初の予定通りに奴の相手をして欲しい。その間に私達が、全力でダンジョンボスの方を何とかするから。それで私達が、全員倒されるような場合になったら、後はもう使徒レミナの好きにして構わない。これでどうだろう?」
こんな他力本願な頼み、言ってて自分でも情け無くなる。しかしこれが、お互いの妥協点だろう。
『なるほど確かに、それがお互いに妥当な線であります。しかしそれでも、ユウコ殿達には大変リスキーなのであります。……しかし、そこまでしないと納得出来ない、という貴方達の気持ちも、理解は出来るのであります。……了解したであります。それでは御一緒に、ダンジョン最深部まで急ぐであります!』
――こうして俺は、使徒レミナと一緒にダンジョンへと突入したのだった。




