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陽動と救出作戦

 ついに俺は、仮面の男に繋がる手掛かりを掴んだ。俺は急ぎ王都周辺の地図を広げ、その場所をもっと詳細に特定させていく。


 やっと尻尾を掴んだぞ。ここだ。ここに奴がいる。間違い無い!


――これ以上、奴の思い通りにさせてたまるものか!


「今さっき発現した、私の新しい能力で仮面の男の居場所を特定出来たよ。勿論彼……カルシファーもそこに居る」


 そう言って俺は、メンバー全員をゆっくりと見渡した。


『……!? ユウコ殿、それは真ですか?』


 普段冷静な鴉さんも、その俺の発言に動揺を隠せなかった。


「うん、まずは落ち着いて聞いて欲しい。居場所は見つけたけれど、これは想定していた中でも、かなり最悪に近い状況なんだ。何故なら、彼と仮面の男が一緒に居るって事は、それだけで私達には最悪に不利な状況だからね」


――鴉さんを特に見つめながら、俺はそう言葉を発した。


『なるほど。でっすがもしや、ユウコ殿には何か良いお考えが?』


「うん、皆の率直な意見も欲しいから、最初に私からいくつか案を出すね? まず1つ目は分断作戦。これは仮面の男と、カルシファーが一緒に居るとかなり厳しい状況になるよね? だから対象を分断する。これなら、かなりのリスクを減らせると思う。どうかな?」


 すると、考え込んだ皆の中で、アスカが顔を上げた。


『ユウコさん、その作戦には穴があります……。もし仮面の男が慎重で臆病な、何かあればすぐ逃げ出す手合いの場合です。そうなると、仮面の男を取り逃がす可能性が出てきます。もしそうだと仮定するとです。逆に言えば、カルシファーさんと一緒に仮面の男が居る事で、最後まで仮面の男も、その場に残るのではないでしょうか? そこを全員で一気に叩く! つまり一点戦力集中です。ゴリ押しで、カルシファーさんも仮面の男も、一気に両方確保しちゃうとかはどうですか?』


……意外と、アスカも考えている。いや、意外とってのは失礼か。頼れる参謀役だからね。


「確かに、こちらが陽動なり何なりを仕掛けて、まず分断作戦を行うとして仮面の男だけが釣れるとは限らない。逆に姿を隠してしまう可能性もある訳だね。一方でゴリ押し作戦だと、最初に言った通りこちらが不利な状況で戦う事になる。カルシファーを、人質に取られているような現状でそのリスクは避けたい。それにもし逃げられたとしても、新スキルを覚えた私からは、もう仮面の男は逃げられない。むしろ分断作戦は、仮面の男だけを先にワザと逃がし、カルシファー単体を相手にする事で、私達で彼を何とか確保するって流れが目的だったりする。どうかな?」


『……誘い出せるのは、きっと仮面の男だけですよね。カルシファーさんが、ダンジョンボス化していたら、今はきっと最深部に居るでしょうし。ボスは最深部から動かないって説が有力ですので』


 ルークも、良い知識を出しフォローしてくれた。


「そうなんだ。だから釣るのは、仮面の男だけになる予定。もしくは今回、わざと逃がしてもいい。例えばダンジョン入り口周辺で、派手にこちらで騒いで陽動してみたり。仮面の男がそれでどう動くか。邪魔者を駆除しに来るのか、それともすぐさま姿を隠すのか。それは今の所……五分五分かなって思う。でもそこで考えなきゃいけないのは、どちらのケースにも私達で対応出来るようにしておかないといけないって事」


『つまりこちらも、PTを分ける必要があるって事ですか?』


「その通りだよルーク君。ダンジョン周辺での陽動担当(仮面の男と接触担当)と、本命であるカルシファー救出班の2つ。だけど、どちらも戦闘になる可能性は覚悟してね?」


――そして、全員で話し合いの結果。陽動担当は俺1人。他のメンバーは、カルシファーの救出班となった。


……ぼ、ボッチちゃうで?

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