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遅過ぎた救済

『オレは賛成です』


『異議無し』


『大事の前の小事ですね! 私も賛成です~』


『チュッチュー(御意!)』


「このPTメンバー、全員の賛成意思を確認した。ありがとう。他に気になる件は多々ありますが、確実に対象の居場所など現在把握出来ている、こちらの件が最優先だと私は判断しました。私達はこれから直ちに、この王都に巣食う『異形者』の捕縛、並びに可能ならば『救済』を、私が出来る限り行いたいと思います。まずはスラム街へ向かい、潜んでいる対象の捕縛に向かいます。捕縛には、この()()()()を使って下さい」


 捕縛用に、俺がとても頑丈に作った特製縄を、PTメンバー全員へと渡していく。恐らく相手は元人間だが、異形化したその能力は未知数だ。ミイラ取りがミイラ、皆には思わぬ怪我をして欲しくないからね。その為の特製捕縛縄だった。


 そして俺達は、モッチー達と共に進み街に潜む異形者達を次々と捕らえていった。


 その異形者達は、元が人間だったとは思えない程にまで、その姿は禍々しく変異していたのだった。全身に大きな浮腫があり、まるで葡萄のような姿になっている者。腕や足だけではなく、各部位のサイズが全部バラバラに膨れ上がっている者。1本の腕や足が、更に複数に別れている者等々。


 それらを慎重に捕縛し、救済の為1箇所に集めて隔離したのだが、そこは正に地獄絵図だった。


 ルークは大きく顔を歪め、何とか堪えていたが、アスカは建物の隅で盛大に吐いていた。流石の鴉さんでさえも、その場の光景に顔を背けるくらいだ。


「さあ、救世を始めようか」


 俺達は異形者達に、まだ何が治療で有効なのかは判明していない為、様々な治療行為を治験的に行っていった。


 神聖魔法による回復や状態異常の回復。回復剤や秘蔵の薬等々。

 そして俺の体液をこっそり混ぜた水だ。


 それらを惜しみなく与えてみたが、期待した様な効果は最後まで現れる事はなかった。


――だが正直、ここまでは予想していた。ここまでは。


 魔術師ギルドからなどの情報で、異形者に治療行為は一切効果が無い事を知っていたからだ。だからこそ、本番はこれからだった。


「おいキミ! 私の声が聞こえるか? もし元の自分に戻りたいと思うなら、これから私がスキルを使ってキミを助けたいと思う! だから私から注ぎ込む力には抵抗しないようにしてくれないか。まだ少しでも意識があるなら、元の自分に戻りたいと強く強く願うんだ! いいね?」


 俺は異形者の1人1人に、そう言い聞かせながら順番に救世を発動させていった。


……。


 だが結果として、俺は誰一人として《救世》出来なかった。

 俺が救世の光を注ぎ込むと、その異形者達の姿はすぐ崩れ去り、そして儚く消えていったのだ。


――俺は本当に、どうしようもなく無力だった。救世と言うスキルを得てから、俺ならもしかして? などと、ちょっと過信していたのかもしれない。

 

 それでも、この者達が望まぬ形の【悪夢のような生】を終わらせてあげられた事が、せめてもの救いだろうか?


……俺達は、全員で黙祷しこの者達の冥福を祈った。魂さえも消え去ってしまった、この者達に恐らく来世は無い。


――それは俺だけが分かっていた。


 黙祷する中、アスカは堪えきれないように静かにただ涙を流していた。俺は優しく、その涙を拭って彼女が泣き止むまで頭を撫で続けるしかなかった。


 俺の救世の力が、まだまだ足りないのか? それとも他に何か要因があるのか? しかしそれは俺にもまだ何も分からない。だけど、この者達の魂までを弄んだ者がもし仮に存在し、それが仮面の男の仕業なのだとしたら。


「俺は絶対に仮面の男を許さない」

 

 俺は。俺達は。その時、全員が同じ気持ちだった。


 元は人間だった人達、その最後の光の欠片が俺達の周囲を漂い、やがて儚く消えていった。

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