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漆黒竜と仮面の男

【グルル……。グルアアアァァッ!】


 咆哮を上げたのは、全身が漆黒で禍々しい雰囲気の、とても大きな竜。……いや、最早『竜』と呼ぶには異形過ぎる存在だった。見るもの全てを圧倒する、オーラのようなモノを発しながら咆哮を上げた。


『ヒィーッ! な、何でこんな、ば、化け物が居るんだ? りゅ、竜か?』


『き、聞いてない! こんなダンジョンで、竜が居るなんてッ!』


『撤収ッ! ここから離脱しこの情報をギルドへ持ち帰るぞ!』


『た、助けてくれぇええええ~! お、オレはまだ、死にたくなィいいい』


『死にたくないっ! 死にたくない!』


『逃げろっ! とにかく全力でにg……う、うわぁあ!?』


 全員がそれなりの実力者な冒険者達だった。この者達が新しく()()した、この未知のダンジョンの調査に入り込んだ者達だ。だがこの男達は、このダンジョンボス『漆黒竜』と出会い、そして全力で逃げ出す所だった。


「ソレは~良くないデスネェ~そのまま素直に帰す訳ガー、無いのデスネェ~?」


 冒険者達の逃げる先。このダンジョンの出口を塞ぐように、突如として仮面の男が現れ一番近い冒険者の体をその手で貫いた。


 体を貫かれた、冒険者は即死だった。そして仮面の男は次々と、残る冒険者達をその手で貫きながら始末していく。たった数分の出来事だった。


 そして更に、死んだ冒険者達の体がビクン! と動いた。そしてどんどん、その肉体は変化――異形の者へと変わっていった。


 そして異形と化した者達を、竜は貪り喰らうのだった。

 仮面の男は、その光景を眺めながら満足そうにしている。


「グゥ~ッド、グッド。ソウデスヨ、もっとも~っと食べるのデスネェ。トカゲ君が完全体になるまで、ワタクシがココに人間達(餌)を、もっともーっと誘い込んで、行かなくてはナリマセンネェ~? イヤハヤ。下っ端はこれだから辛いデスネェ。ヤレヤレデスネェ」


 仮面の男は、肩を竦めたようなポーズを取った後で、一瞬でその姿は消えたのだった。 

 

 仮面の男が姿を消した後も、竜はひたすら異形の者達を喰らいその姿を更に禍々しく変化させていく。


 そして、竜はまた咆哮をあげたのだった。


 一筋の血のような涙を、眼から流しながら。

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