反省会? いいえ宴会です
「えー……それでは! 第一回、チキチキダンジョン攻略反省会を行いまーす。パチパチパチ」
ボスを討伐した俺達は、その後何事無く拠点であるこの街へと帰還した。
そして女神教へと、ダンジョンの制覇を報告した後は、ダンジョンの崩壊現象の確認後に報酬を受取ると言う、いつもの流れとなった。
今回、臨時で同行したPTメンバーのルークと鴉さん、そしてアスカは女神教の認定により、晴れて今回【金級】冒険者となった。
俺の方は、今回で2度目のダンジョン制覇であった為、金級の更に1つ上である【霊銀級】冒険者にされてしまったのは誤算だった。
あまり冒険者のランクが上がると、嫌な予感しかないのだが。でも逆に言えば、冒険者としては【箔が付いて】色々と便利な事もあるので、ここは甘んじて受け入れようか。
特に、女神様に連なる組織である【女神教】とは、良好な関係を結んでおいて損は無いだろう。今回の攻略も、女神教の支援がある事で確かに楽になった事も事実なのだ。
そして俺達は、いつもの宿の部屋へと戻って宴会……いや反省会の流れだ。
今回は、美人女将に食材の提供(肉はお裾分けもした)をして調理して貰い、部屋に料理を運んでからの打ち上げ。鴉さんがいるからね。色々と自重しなければいけない。
流石にこれだけ人数が居ると、部屋が狭いと感じるね。部屋には、それそれが思い思いに座り沢山の料理や飲み物を、各自で自由に取って食べる形式だがこれくらいのほうが気楽で良いよね。
適度に大人組にもアルコールが入り、好きなだけ食べた各自がリラックスしたという、その頃合を見て俺は冒頭の【反省会】の開幕を宣言した。
「じゃあまずは私から! 今回のボス戦の序盤で、ちょっと私の自分の火力不足を感じた。これについては、武器(弓)の強化や魔法を基礎からアスカに教わって、そのLvを上げる事で対応したいと思います」
『はいっ! 魔法に関してなら私にお任せですよ~♪ 手取り足取り教えちゃいます~❤ うふふ』
酔っぱらったアスカは、尻尾を大きくぶんぶん振ってご機嫌だ(笑)
『いやしかし、ユウコ殿の回復や支援魔法には助けられた。総合的には決して悪い働きでは無かったと認識しているが』
鴉さんからも、俺への悪くない評価が下されたようだ。
『そうですねー、オレもユウコさんの回復や支援があったから、安心して前衛に集中出来ました』
ルークからも、そう言ってもらえて安心した。
「私の反省点は、そんな感じかな? みんなはどうかな?」
『じゃーオレからいいですか? オレはボスの攻撃を耐えるのが精一杯で。正直もう少し攻撃もして行きたかったかな~と。ユウコさんから貰った装備を100%活かせて無かったとも思う。そこは今後も鍛錬を続けて、実力を付けていくしかないかと思ってます!』
「そこはアレじゃないかな? 下手に攻撃を増やして被弾したり、ヘイトコントロールに失敗して、結果として味方の被害を増やすよりは、今回の防御に専念は悪くなかったと思うよ?」
『然り。ルーク殿がそうしてくれたからこそ、私も攻撃に専念が出来た。今回のボスが手強い相手だったからこそ、安定したタンクがちゃんと居てくれたのは、それだけでPTに多大な貢献をしたと考えます』
『はいは~い! アスカちゃんもそう思いまーす♪ ルーク君ぐっじょぶ!!!』
『みなさん、ありがとうございます! オレこれからも精進します!!!』
うんうん。なかなか良い空気で反省会が出来ているな。このPTでの連携みたいなものも、即席ではあっても出来つつあると思う。
『……次は私で宜しいか? 正直ダンジョンボスが、ここまで強いとは思わなかった。勿論その元の種としてや【個体差】にもよるとは思うのだが、改めて今回ユウコ殿達とPTを組んで頂いて良かったと思っている。目的を達するまでは、今後ともご助力願いたい!』
『鴉さんのアタッカー、とても良かったですよ! 流石の槍捌きでした。こちらこそ、これからも宜しくです!』
『鴉さんは~(ヒック)よかった~!!!(ウイッ)』
……。
アスカ飲みすぎじゃないか? 大丈夫か?
「鴉さんは、実に危なげない立ち回りでした。PTでの近接アタッカーとして、充分な働きだったと思います。今回ソロでは無くPTでしたので、やりにくい部分も(お互いに)あったかもしれませんが、特に問題は無かったと思います」
『はいはーい! 最後はアスカちゃんね~♪ ボスにはデバフ、味方に強化付けて、ガンガン魔法攻撃いっちゃおうとしたのに~上手く行かなかったですぅ~ごめんなさーい! 弱点属性とかも、狙いすぎたかな~って。相手が動物系だから炎属性が効くかな? って安易に炎魔法を最初に使ったのも反省反省~。もっと頑張りマース! いじょっ』
あ、意外とその辺は酔ってても言えるのね(笑)
「うん」
『そっすね!』
『そうであるな。だが悪くはなかったぞ?』
アスカ以外のメンバーも、皆そう思っていたみたいで、苦笑をしながらもそう言って頷いていた。
「モッチーも斥候役お疲れ様! 助かったよ」
俺はすぐ近くにいた、眷属の魔鼠にもそう声を掛け頭を軽く撫でてあげる。
『チュッチュ~ゥ♪』魔鼠のモッチーは、ドヤ顔をしてそう言った。
それが何となく、ニュアンスで皆に伝わったのか、鴉さんまでが俺達と一緒になって大笑いしたのだった。
この反省会も、皆にとってもどうやら実りのある、良い話し合いとなったようだ。




