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女の子と猫

「お願いします! この猫を治療して下さい! お金はちゃんと払います!」


 教会まで必死に走り、やっと神父? 《カッパ頭》みたいな人を見つけた俺はそう捲くし立てた。


 その人は、最初チラっと俺と腕の中の猫を見たがすぐに視線を僕達から逸らした。


『……神の奇跡の御業は、犬や猫にまで与えるものではありません』


……残酷にもこのザビエル野郎は、僕にそう冷たく言い放った。


「嘘!? お金は……。ちゃんと払う。今の手持ちで足りなければ分割で払う。絶対に全部払うから! どうかお願いします!」


 そう僕が必死に頼んでいるのに、カッパ頭はすでに僕から背を向けて歩き始めていた。


 僕の両目から、自然と透明な涙がこぼれ落ちた。


――こんな体になっても、涙はちゃんと出るんだ……。


 神父にいくら泣きついても、お金を払うと言っても駄目だった。


 悔しくて、悲しくて、半ば追い出されるように教会から出た。


 それでもまだ諦めきれなくて、教会の周囲をフラフラと僕は猫を抱え泣きながら歩いていた。


 僕は……この猫を助けてやれない。

 自分の不甲斐無さに泣き、カッパ頭の対応に、ただただ憤慨した。


「何が神の御業だ! この世界では命の価値にはそんなに違いがあるってのか? ふざけんな!」


『ニャ~……』 か細い声で猫が鳴き、そんな僕を見上げていた。


 そして猫が少しだけ動いた。僕の腕の中で少しバランスが崩れ、重心の位置調整をしようとその猫を優しく抱き上げたが、猫は俺に顔を近づけてきて丁度お互いに頬ずりをするような形になった。


「ごめん……。ごめんな」 僕は何度も猫に謝る。


――謝るしかなかった。


 その猫は、僕の目から流れ落ちる涙をそっと舐めてくれた。それはまるで、僕の事を逆に慰めてくれているかのようだった。


『ねぇ……おねえちゃん、どうしてないてるの?』


 その声にハッと気が付くと、僕の目の前には小さな女の子が立っていた。


 どうやら僕は、教会の裏手にある孤児院の近くまで泣きながら歩いていたらしい。


 こんな小さな子にまで、泣いている姿を見られてしまったな。


『そのねこちゃん? しんじゃうの? だから、おねえちゃんないてるの?』


 目の前の女の子も、そう言って悲しそうにしていた。


「この猫はまだ生きてるよ。……でも病気みたいで……。治してあげられないんだ。でもこのままだと今すぐに死んじゃうかもしれない」


 神父にも断られた事も伝え、僕にはもう打つ手がない事を話した。


 この猫はもうすぐ死ぬのだ。避けられない死。

 もう目を開けることも出来ず、浅い呼吸をするだけの猫。


 小さな女の子も、それがわかったのか一緒に猫を優しく撫でている。


 そして女の子は、この猫が死んでもせめて天国に行ける様に、最後のお別れのお祈りをしようと僕に言い出した。


『おおいなるそんざい、ららふぇさま、そのじひぶかいおこころによって、どうかこのねこちゃんが、てんごくにいけますように、どうかおみちびきください』と、だいぶサマになった言い方でお祈りを捧げ始めた。


 僕も何となくだけど、真似してそれを復唱する事にした。


――その時だ。


……!?


 僕達2人は体に電流が流れたように同時に体をビクン! とさせた。


……痛みなどは無い。ただ単にビックリしたのだ。


 そして頭の中に聞こえてきたのは、あの女神様の声だった……。


『……私の声が聞こえますか? 今ならまだ何とか間に合います。今は何も聞かず、ただ私の指示に従って下さい。今からその女のミーナ()()させます。そうすればきっとその猫を覚醒した力で助けられるでしょう。ですが急いで下さい。時間は残されていません』


 女神様の突然の声に、ミーナも驚いているみたいだった。だがしきりに肯いている様子から、女神様の指示に従うようにしたようだ。


「か、覚醒って何?」とか、僕の頭の中は色々疑問だらけだったけれど、すぐに意識を切り替え女神様の指示に従うことにした。


 僕と女の子の2人が手を繋ぎ、お互いにもう片方の手で猫に触れる。


 目を閉じ、頭の中から聞こえてくる女神様の声の通りに、僕達はその言葉を復唱していく。


「……いぶつなるもの、じょうかさせたまえ、きよめたまえ。病気治癒! 《キュア・ディジーズ》」


 僕の中で生まれた不思議な力が、繋いだ手から女の子へと伝わっていく。それが女の子の体を通し増幅され、瀕死の猫へと注ぎ込まれたように感じた。


「……やったか!?」


 僕たちが見守る中で、猫はゆっくりとその目を開けた。尻尾も元気そうに大きく動いた。


『ほんとうになおった? ねこちゃんもうだいじょうぶ?』


【ニャー!】


 その猫は目の前にいる、命の恩人の僕達を見上げ嬉しそうに大きく鳴いたのだった。


……僕と女の子は大声で泣いた。嬉しくて泣いたのだ。うるさいこっち見んな!


「良かった。助かって本当に……良かった」グスッ


 僕達は大泣きしながら、ずっとその猫を撫で回し続けた。


 猫はちょっとだけ迷惑そうに『ニャ~……』と鳴いた。


――それが僕と女の子、そしてこの猫との運命の出会いだった。



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リザルト


○スキル:神託Lv1 が発現しました


「学習」スキル効果により、神聖魔法Lv1の習得に成功


○初めての「魔法」獲得によるボーナスExp100獲得


○レベルが4に上がりました それにより各ステータスも上昇しました


○レベル上昇により、カルマ値+10


○ボディの活動エネルギーが超回復&最大値がUP


○Exスキル:「眷属化Lv1」が発現しました


○眷属「魔猫」獲得 全てのステータスが眷属の能力値分上昇しました


○眷属スキル:「暗視」「軽業」「静音移動」「気配察知」「気配遮断」「野生の勘」が共有化されLv1で使用可能となりました 眷属とは意識共有も可能です


○眷属初獲得によるボーナスExp100獲得


○称号「ネコ友」獲得 猫種族との相性度が+20上昇します


○称号「ネコ魂フレンズ」獲得 猫種族との相性度が+30上昇します


○称号「ネコマスター」獲得 猫種族との相性度が+50上昇します


○「生命の尊重」善行:カルマ値+5


一定のカルマ値を達成した為「恩恵」が強化されました(全ステータス1%上昇が付与されました)

まだまだ素人ですが、『お星さま』と『ブックマーク』頂ければとても励みになります。

宜しくお願い致します。

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