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魔獣の巣《ダンジョン》

「鴉さん、もしここに仮面の男やカルシファーが居ても、不用意に飛び出さないでね? 最悪なケースを想定するとして、仮面の男と彼が両方ここに居た場合は、仮面の男に彼を人質のように扱われてしまうと、貴女が何も出来ずに殺される状況になるから。もし彼だけが居た場合では、貴女は本気で彼とは戦えないでしょう? いえ最後まで戦おうとせず、貴女は彼に殺されるかもしれない」


 そうさせない為に、俺はこうして同行しているのだ。彼女にもそれは理解して貰いたい。そんな状況だからこそ、冷静な判断や行動が必要になるのだ。


『……かたじけない。確かにそのような場合は、私は動きを大きく制限されてしまうのだろう。なので約束しよう。そのような場面になったら、私はユウコ殿の判断や行動、命令を何より優先すると。1人で飛び出すような真似は決してしないと』


「(コクッ)それなら良いよ。心配しなくても、私の手が届く範囲で、《鴉》さんがむざむざ殺されるような真似はさせないから。だから、それだけは約束してね」


『承知した。肝に銘じよう』


 まずはこれで一安心かな。それではダンジョンへ突入しよう!


 モッチーを地面に下ろしてやると、張り切ってダンジョンへと飛び出して行った。偵察の為だ。


 モッチーは魔鼠だ。鼠にしては大きいが、それでも人間と比べれば体は小さい。ダンジョンの罠なども、ほぼ全てがモッチーには作動しないので安全だ。


 更には持ち前の《野生の勘》と言うべき、危険感知能力により更に安全が確保されている状態。


 そしてお馴染みの、サーチ系スキル《存在看破》と《知覚増幅》により索敵なども万全だ。そして更に自身も、その小さい体に《存在隠蔽》スキルと《静音移動》により、周囲からは非常に発見されにくい状態。


――正に頼りになる完璧な斥候役と言えよう。


 モッチーからの情報を、逐一思念により送受信する。そうしてリアルタイムで、俺からPTへとその情報を共有する事で、俺達は誰よりも有利にどんどんとダンジョンを進める。


 途中の分かれ道、敵の存在が都度確認されれば、俺がPTへ指示などを出して対処していく。


 このダンジョンは魔物……と言うよりは【魔獣】の多いダンジョンだった。猪や熊や猿など、それらが突然進化し魔獣化したものだった。


 人型を相手するのとは違うせいか、野生の獣の動きに最初は対応できず、俺達は予想以上に苦戦を強いられた。


 ルークはひたすら前衛で、敵のヘイトを確実に稼ぎつつ、その盾で敵の攻撃に耐える。

 鴉さんは槍を器用に使い、魔獣の動きに対応しながら攻撃をしている。


 アスカは魔法で、味方に支援魔法を掛けたり敵の長所を削るようなデバフを与えたり、時に複数の敵を削り殺していくと言う立ち回りをしている。大活躍と言えるだろう。


 俺は皆を観察しながらも、素早い弓の連射で敵を攻撃して倒す。そして味方が傷ついた時は、軽傷でも即座に回復魔法を飛ばした。


 そしていざ、皆が魔獣への対応に慣れてくれば、後はもう余裕の勝利パターンが確立した。戦利品の《素材の剥ぎ取り》のほうが苦労したくらいだ。


――それにしても、今回は大収穫だ。その魔獣の牙や爪、毛皮や肉などがとにかく大量GETだ!


 特に猪の魔獣の肉は、食用になるし美味いのだ! 今夜は焼肉パーティだぜ! ヒャッホー♪

くらいの心境である。まあしないけど。まだダンジョン攻略中だ。


 その肉は、小分けにしてから綺麗な布で包み、こっそり擬態へ他の素材と一緒にどんどん収納させていく俺。


 戦利品を遠慮なく回収していく割りに、パッと見あまり荷物が増えない俺達を、鴉さんが少し不思議そうにしていたが、俗に言う《アイテムバッグ》その容量が拡張された魔法か何かの魔道具を持っているんだろう? くらいの感じで勝手に上手く誤魔化せている。


 ドロップ品や素材は、全て俺達が貰う約束を事前にしていたので、鴉さんは元から素材への興味が薄いせいもあってか、それほど深く考えてもいない様子だ。


 そんな鴉さんにも、ちゃんとこの美味しいお肉は、後でちゃんと振舞うつもりだ。


 そんなこんなで、俺達は何度かの休息を挟みつつ、このダンジョンの最深部のすぐ手前まで辿り着いた。


「……ハズレ」と残念そうに俺は呟いた。


 鴉さんは、その言葉の意味をすぐ理解したようだ。


『……彼はここに、居ないのだな? そして仮面の男の匂いもしない……』


 寂しそうな表情で、彼女はそう呟いた。


 ここが魔獣の多いダンジョンだっただけに、恐らくはボスもそうかもしれないと、途中から俺達は予想していたのだ。


 だがやはり実際に、自分の目でボスを確認すると落ち込むのは仕方が無い事なのだろう。


――このダンジョンのボスは、大きな熊の魔獣だった。


 やはり普通ではない、禍々しい雰囲気を放つその魔獣。キラーグリズリーと呼ばれる魔獣の【変異種】だろう。


 体の大きさは通常種の倍以上。しかも全身から、強い魔力が発せられているのを感じる。


……何という魔力! もしやコイツは魔法も使うのか!? 一応皆に伝えるべきか。


 こうして念入りにPTで打ち合わせ、持続型の支援魔法などをPT全員へと掛けて充分に準備をした俺達と、【ダンジョンボス】キラーグリズリー《変異種》との戦いが始まるのだった。



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リザルト


○知覚増幅Lv3へ上昇


○存在看破Lv3へ上昇


○弓術Lv3へ上昇


○統率Lv3へ上昇


○静音移動Lv4へ上昇


○存在隠蔽Lv2へ上昇


○探索Lv2へ上昇


○罠感知Lv1が発現


○魔物討伐:合計経験値1350獲得、討伐証部位や各種素材を大量獲得。


魔石は全部モッチーの胃袋へIn。これによりモッチーの能力が更に上昇。

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