ダンジョン捜索
『恐らくですが、それで間違いないかもしれません』俺の仮説を聞いた、少年ルークはそう言ってから頷いた。
ダンジョンや、仮面の男などの情報集めを開始した俺達は、合流した少年ルークに今回の件と俺の仮説を説明した。
続けてルークは、俺達にこう言った。
『確かにあの夜、何者かに襲われオレは胸を貫かれました。そして目を覚ましてからは、ユウコさんへの悪意が一気に暴走して行った気がします。どんどん憎しみが増していって、その度に胸がズキズキと痛くなった。今になって思い返せば漠然とですが、自分で自分が違う何かになっていくような感覚がありました。それが魂の侵食、変異をさせられていたと言うならば、確かにその通りだと思いますユウコさん』
――これはビンゴだな。点と点がやっと繋がったようだ。
「私の仮説が立証された訳ね。仮面の男は、カルシファーとも繋がっている。つまり仮面の男を追えば、カルシファーとも再会出来る! そして変異に関わる情報を集めていけば……」
キーとなるのは【変異】だった。
「この周辺で、新たに発生したダンジョンの情報を調べてみましょう。まず私は女神教の教会へ行く。鴉さんとルークは冒険者ギルドへ行って情報を。アスカは……ブルーアイやモッチー達と協力して情報など集めて。次の合流は、お昼の食事も含めてここ【紅の海豚亭】にしましょう」
やっとこうして掴んだ手掛かり、傍から見ていても今の鴉さんは落ち着かない様子だ。これでは危なっかしくて、とても単独行動はさせられないので、少年ルークを同行させてみた。
「鴉さん。まだ慌てるような時間じゃないですよ?」俺は鴉さんに、念を押すようにそう言った。
『……了解しているつもりだ。心配掛けてすまない』そう鴉さんは、俺達へ頭を下げてから冒険者ギルドへと向けて走り出した。
ルークは俺に向け『任せて下さい!』とばかりに、ウィンクと親指を立ててから彼女の後を追う。
……。
ルークって意外とキザなの? 元から? ちょっと不安だけど大丈夫かな? まいっか。そして魔猫達には、その独自の動物ネットワークで情報を集めて貰う。
街の住人達の、そこら辺の噂話から人知れず密談している話しの内容まで。俺の眷属達の能力を持ってすれば、それらの情報を得るのは容易い事だった。
眷属達には、【仮面の男】のイメージ像を思念で送り、情報を集めさせる。勿論ダンジョン情報もあればそれも。
そして俺は、女神教の教会へと向かう。ダンジョン関連の情報で言えばここが大本命だ。そして最初に見掛けたシスターに声を掛けてみる事にした。
「おはようございます。私は【金級】冒険者のユウコと申します。先日は王都付近にて発生した新ダンジョンを攻略した者です。これが冒険者証です。この街で新たなダンジョン発生の情報などは他に御座いませんか? もし情報などあれば、私が攻略に向かうのですが」
話しながら【金級冒険者証】を見せ、更にシスターの手に銀貨を数枚握らせる俺。そしてシスターの耳元で【これは個人的なお気持ちです】と囁いた。
改めて今度は、大銀貨を取り出し教会への寄付としてシスターへと手渡した。シスターはすぐに満面の笑顔で、俺に向けて感謝の祈りをした後『では少々ここでお待ち下さい』とドコかへと歩いて行く。恐らくダンジョン関連の担当か、上司を呼びに向かったのだろう。俺は言われたとおりに大人しく待つことにした。
そして暫し待つと、シスターが司祭らしき男性を連れて戻ってきた。
『金級冒険者の、ユウコ様と言うのは貴女様でしょうか?』
「はいそうです。ダンジョン情報があればと思い、こうしてお伺いしました。何か情報はありますせんか?」
そして改めて、司祭の男性に【金級冒険者証】を見せる。
『ホゥホウゥ、貴女様のような、お若い女性が【金級】冒険者ですか。しかも、この冒険者証の発行は王都の女神教本部ですね? なるほどなるほど、貴女の実力や実績は確かのようです。それではお話ししましょう。この街の周辺で確認された、新たなダンジョンは1つだけです。その場所と、確認された魔物の情報などは全てお渡ししましょう。もしユウコ様が、これから攻略に向かうのであれば、必要な支援が必要でしたらワタクシが手配します。御遠慮なくおっしゃって下さいませ』
こうして俺は、情報だけではなく女神教の支援の約束までを取り付けたのだった。




