臨時PT結成
彼女を、このまま行かせてはならない。
何故なら、俺には視えてしまった。この竜人の彼女が死ぬその姿を、残酷な未来を。死因などの詳細は分からないが、彼女が志半ばで息絶えるというビジョンだった。
悲哀の表情に包まれた、彼女の表情が印象的だった。恐らく彼女は、カルシファーの救出を果たせないまま死ぬのだ。
このまま何も知らぬ振りで、彼女を1人行かせて死なせるのは何だか違う。ならば、俺がやるべき事は1つ。
「そこでちょっと《鴉》さんに、私から提案があるの」
『……提案、ですか?』彼女は少し戸惑った表情だ。
「そう提案。この私『金級冒険者』が貴女を手伝うってのはどうかな?」
「ダンジョンソロ攻略経験もある、とても優秀な人材だよ? そして私には頼れる仲間も居る」
(ここで大きく出て確実に彼女を取り込む。それに全て嘘ではない事だし)
『……貴殿の目的は、何ですか? 善意でのご助力などとは、とても信じられませんが』
(当然そうだろうな。ちゃんと理由も必要か。ならば……)
「しいて言うなら、未知のダンジョンを見つける事はお金になるわ」
(潰すだけで銀貨500枚。まして発見して潰したとなればどれだけ貰えるのか)
『お金だけが目的……ですか?』
(まだ俺を信じられない、という視線だぁ。何でこんなに疑われるの俺?)
「ダンジョン攻略での名声、そしてそのお宝や魔物の素材ドロップも目的の1つです」
(これで納得して貰えるか? 他に何かある?)
『貴女は、ダンジョン攻略で得られる名声やお金、そして素材などのドロップが欲しいと?』
「そういう事。そして《鴉》さんは【彼と仮面の男】を見つける為に助けが欲しい訳でしょ?」
「その為には、まずその未知のダンジョンの場所を探す必要がある」
だが竜人の彼女には、探せるだけの当てが無い状態だ。人手は欲しい筈だ。
「ダンジョン情報については、私には実は女神教に伝手がある。今までのダンジョン攻略の実績があるからね」
「それにもし、仮面の男と出会えば戦闘になるよね? その時にも、私達がいれば戦力になるよ」
そして万が一、彼や仮面の男との戦闘が発生したら、恐らく彼女1人では勝てない。そんな未来が俺には視えている。
「《鴉》さんには、協力者としての私達。私はダンジョン攻略の、名声とお金と素材やら全て」
これならば、お互いの目的も被らない。完璧なWin-Winだ。
『確かに、私にとって悪い条件ではない。それならば是非も無い。当方からもお願い申す!』
……納得してくれたか。
(それに、名声はこれ以上いらないけど、攻略するとカルマ値めちゃくちゃ増えるからね)
ダンジョンは潰せるなら潰したいのだ。見つけたら確実に。
「ダンジョン攻略報酬自体、私が総取りはしないよ。そこはPTで頭割りにしましょう」
「その代わり、お宝やドロップ素材が欲しい。その辺特に色々入用なの」
攻略報酬は、彼女にも分配する予定だった。竜人の彼女もお金は最低限は必要だろう。むしろ名声はいらない。その辺いっそ彼女に丸投げしてしまおうか? との悪い考えも一瞬浮かんだ。
でも道中の、ドロップや素材は是非貰いたい! 魔石は眷属のステータスUPになる。そしてそれにより自分も強化される。
そして得た素材は、すべからく変換に使える。今の俺には、魔物から得られる素材はただのお金よりもその価値がある。
『それで異存は無い。ユウコ殿が助太刀頂けるのは心強い、その働きに期待している!』
俺も、鴉さんを戦力として当然期待しているので、俺もすぐに肯いた。
(ああ、むざむざ殺させたりはしない。何とかしてやる)
これからは、ちょっと危険な冒険になる。他に誰を、PTメンバーとして連れて行くかを、よく考えなければいけない。
「連れて行く私の仲間は、魔術師の少女と盾戦士の少年だよ。後このネズミも連れて行く」
少年ルークと魔狼アスカは、見た目こそは若いがその経験は豊富だし、実力も問題ないだろう。アスカとルークなら、きっと戦力になる。
『ウォン!』 (御主人様、私頑張ります!)尻尾ブンブンだな。
『チュッチュ~ゥ!』魔鼠は敬礼? ビシッとポーズを取る。
魔狼と魔鼠は、非常にやる気を見せていた。
『それは有り難い。戦力が増えるのは大歓迎だ。併せて宜しく頼む!』
そして、フォーメーションとしては
前衛は、竜人の彼女と少年ルーク。
中衛に、魔術師のアスカ。
後衛に、俺が回復役と、弓で攻撃したり色々と担当する予定。
魔鼠は、ダンジョンで先行して貰い斥候役を頼もう。
(ミーナと魔猫は、ちょっと連れて行けないなぁ)
――こうして俺達は、臨時のダンジョン捜索&攻略のPTを組む事になった。
まずは、肝心のダンジョンの情報集めから始めよう!




