前世の記憶
(そう言えばヘルプ先生って、どんどん便利になっていくよね)って俺は思っている。
実際にその通りだし。以前は、ヘルプ参照しても『フワッとした感じ』の説明しかなかったものが多かったが、今では詳細な内容を教えてくれるようになっていた。
例えば、人(相手)を参照した時だ。以前は名前、種族、性別くらいしか表示されなかった。
今ではHPやMP、各種ステータス状態などまでが分かる。
もしかして、獲得したスキル【情報管理権限Lv3】の効果だろうか?
何だかどんどん、危険な領域に自分から足を突っ込んでいる気が、しない訳ではないのだが。
ああ、スローライフが遠のいて行く。気を付けよう。
――問題はコレなんだよ。
『ヘルプ音声の新Verの追加』
だいぶ前から追加されていたのだけど、チラッと見てすぐ見なかった事にした。
何故ならそこには……。
ガイド音声1 CV:ララフェ(義妹設定音声)
ガイド音声2 CV:ララフェ(義姉設定音声)
ガイド音声3 CV:ララフェ(義母設定音声)
……戦慄するような内容が並んでいたのだ。
「女神様って、案外ヒマなのかな?」と言う俺の正直な気持ちだ。だがまあ、そこまでは我慢出来たのだ。
極めつけは……。
ガイド音声の
『CV:名前秘密』
『CV:名前秘密』
『CV:名前秘密』達だ。
俺の歴代の、元カノ達の音声だと? 何故知っている? いやまあ女神か。
しかしどんな苦行なんだよそれ! 普通に精神が削られるんだが? 俺のSAN値がピンチなんだが!
「女神様? ちょっとお茶目が過ぎるよね。今度会ったら頬っぺたつねっていいよね?」割と本気で、心の底からそう思った。
ちょっと力の無駄使いじゃないですかね?(怒)
そして、俺は前世の事をふと思い浮かべた。それはあの『修羅場』にいた女性達だ。
その女性達は3人。それぞれ個性的で魅力がある女性だったのは覚えている。
刃物沙汰は絶対に良くないし、彼女が不幸にしかならない。だがそれで、俺が刺される事になるとは。
『邪魔すんな! 氏ね!』とゴスロリ女に容赦なく刺されたんだっけな。実際死んだ。
――だがあえて言わせて欲しい。
「いきなり刺し殺す事はないだろ!」
それはただの『悲劇』だったのかもしれない。俺は本当に馬鹿だった。
彼女にとっては、俺が何か余計な事をしたのかもしれない。
『許さない絶対に。殺してやる!』と呟いていたゴスロリ女。
(いや俺は殺されたけどね。本当にナイスガッツ)
あの感じじゃあ、残る2人もきっと彼女に刺し殺された可能性が高いな。
どうしてそうなった……。
気が付けば、俺は魂だけの存在となり、あの女神様と出会う事になったんだ。
……修羅場とかもう勘弁。本当にツライわ。何なのアレ? あれが普通なの? 女性って本当に怖いし、もう本当に無理。実際あった女性同士の苛めとか、本当に陰険だったし、きっと女性特有の【共感】とか【同調】を周囲に求める習性? なんかがきっと関係しているんだよね。
それと前世の俺は、ソッチ系の人に無駄にアプローチされた経験もあり、ソッチ系の男性が凄く苦手だ。ホモやゲイやBLとか、むしろ女性とだって、恋愛とか考えたくも無い状態。本当に無理だわ精神的にも。吐きそう。
だから俺は、もうそう言うのは全部いらない。
新しい人生があるなら、そんなものに振り回されずに、もっと気楽に生きてみたい。そう思った。
(もっと平和な人生が良い。自分の寿命を全う出来るくらい、のんびりと田舎とかでスローライフって憧れるなぁ~)
――刺されて殺された時に、俺はそう思ったんだ。
決して平和じゃない、この世界に何故か生まれ変わった訳ですがね? 解せぬ。




