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魔人狼

――だから俺は、もう迷わない。


 ただ静かに、素早く。持てる力を全て出して移動する。

 未だにお楽しみ中な、ボスの死角へ、その背後へと俺は移動した。


 俺の最大の武器は、この拳。利き手であるこの右腕だ。


 硬く硬く、この拳を握り締め、腕を最大まで増大させ、そのままボスの後頭部へと、全力で叩き付けた!


 後頭部へのインパクトの瞬間、俺は抑えていた感情を同時に解放し同時に叩き付けた。


「潰れろ」(ドシュッ!)


 俺が放ったその一撃で、レッドキャップの頭は粉々に吹き飛んだ。


 飛び散る脳漿が、体液が、俺と獣人女性の全身に激しく降りそそぐ。ボスを倒した事などに、何の感動も無かった。


 そして自動ドロップされる戦利品。禍々しい、とても異質な斧と魔石が残されていた。それとこれは黒魔鉱石か。


 俺はただただ呆然と、獣人女性を見つめていた。


『チュッ~……』モッチーも、すでに戦闘終了したのが分かったのだろう。


 返り血を浴びながら、呆然と立ち尽くす俺に近づき、心配そうに鳴いたのだった。


 その鳴き声に、ハッとした俺はすぐ獣人女性に駆け寄る。急いで擬態の戦闘モードを解除、普段の装備を含めた通常形態に戻る。


 女性は生きているのか? もし生きているなら助けなければならない。


……生きていた。獣人女性は、瀕死ではあるがかろうじて生きていたのだ。


 だが生きている、とこれは言うべきなのだろうか?


「ねえ大丈夫? 聞こえてる? 聞こえているなら返事をして!」


 俺は必死に呼びかけながら、とにかく治療を開始しようとした。


『・・ろ、して・・』女性から微かに声が聞こえた。


その声、そして言葉の意味を知った俺は、その動きを止めた。


――その獣人女性は、自分の死を望んでいたのだ。


 ボスによって、今までに散々蹂躙され尽くしてきたのだ。女性の状態を見れば、それはすぐに分かった。


 その心は、魂が、死に掛かっている。それは無理もない事なのだろう。生きる気力を失っていた。


 いやむしろ、このまま生き残る事のほうが、彼女にとって地獄でしかないのかもしれない。


 俺は迷った。


「しっかりして! 体の傷は私が治せる。折れた四肢も、潰れた眼も全部再生出来るから! 生きるのを諦めないで!」


 そう必死に呼びかけるが、女性は『死にたい』と繰り返すだけだった。


 本人に、生きるという気持ちが、心が死んでいたら、俺の治療行為は全く意味が無いのだ。


 ただの迷惑な、自己満足に成り果てる。助けてやりたいのに、彼女は死にたがっている。


 だが悩んでいる時間の余裕もない。女性はそのまま、死へと確実に向かっていたのだから。


 俺は必死に声を掛け続けるが、女性は治療を拒み続ける。


 そして俺は、自分の葛藤を振り切り覚悟を決め、女性へと最後に話しかけた。


「分かった。これで最後の会話にする。勝手な治療はしないと約束する。だから少しの間だけ私の話を聞いて!」


「死にたい気持ちなのは、私にだって分かる。だけど本当にそれでいいの? それで満足なの?」


「死ぬ前にやり残した事、やりたかった事は無いの? 後悔は無いの?」


「私なら貴女を助けられる。体も治してあげられる。だから生きて、そのやり残した事を果たしてみない?」


 そう必死に、俺は本心からの声を掛けた。


……ただの偽善行為かもしれない。


 やれるだけやった、という自己満足を、俺は欲しいだけなのかもしれない。


 それに、例え死んでもその魂は輪廻する世界なのだ。


 これから生き延びると言う、地獄のような日々に比べたら、いっそ死んだほうが遥かに楽なのかもしれない。


『……やり、残した事も、後悔も……あるわ』


 小さい声で、やっと彼女は返事をしてくれた。俺は我慢強く次の言葉を待った。


『……けれど、それは、生き延びても……決して、叶わない。言わば、私の夢……願望』


 このまま生き延びても叶わない夢……か。


「それは何? 絶対に無理なの?」俺は諦めたくない。


『……それは無理なの。だって不可能だもの。生まれ変わりでもしなければ、絶対に叶わない夢。だからお願い。このまま私を死なせて頂戴』


 その言葉に、俺は大きく目を見開いた。


「本当? もし生まれ変わったなら、その夢は叶うの? それなら本当にいいの?」


『それは本当。今の私じゃなくて、生まれ変われるなら、やりたい事がある。やり直した事も沢山。でもそれは絶対に不可能』


「生まれ変わりたいのね? それは嘘じゃないのね?」


『……貴女、一体何をする気? もういいから死なせてよ! お願いだから!』


「最後まで話を聞いて!貴女がもし、生まれ変われるとしたら、それに文句は無い? 大人しく私の言うことを聞ける? 別に取って食いはしない。悪いようには決してしない。本当にそれでもいい?」


 俺は一気にそう捲くし立てた。本人の意思と言質を取りに。


『もう死なせてよ……。ええもう、何でもいいわよ。今の私ではなく、本当に生まれ変われるなら、もう後は何だっていい! 例え貴女の奴隷にされても構わない』


……よし! 言質は取ったぞ。


()()()()。それじゃまずこれを飲め!」


 有無を言わさず、女性の口の中に指先から俺の体液を出し飲ませる。そして、彼女の全身にも液体を降り注いだ。


 そして最後に、彼女に触れながら俺の想いを注ぐ。


「今からお前を救世する!」そして宣言する。


「今からお前は生まれ変わる! もう元には戻れない。だが安心しろ。お前が望むなら、可能な限りの自由を与える。悪いようには決してしない。だが決して、私に逆らえなくなる。それでも構わなければ、私の力【救世】を心から望み受け入れるんだ。そうすればお前は、きっと生まれ変われる」


 そして俺は、救世を発動させた。


「難しく考えなくていい。生まれ変わりたいなら、ただ受け入れればいい」


……。


(……よしやっと受け入れたか)



 やがて眩い光に辺りは包まれ、それが収まった時。そこには子犬のような少女の姿があった。


 そして彼女(アスカ)は、()()()()()()()



――俺の新しい眷属【魔人狼】として。


 可愛い魔人狼の少女へと、彼女は生まれ変わったのだ。



----------------------------------------------------


リザルト


○固有スキル:救世Lv2へ上昇


○スキル:応急手当Lv2へ上昇


○スキル:擬態戦闘Lv4へ上昇


○スキル:静音移動Lv3へ上昇


○スキル:気配感知Lv3へ上昇


○スキル:気配遮断Lv3へ上昇


○スキル:殺気Lv1 発現


○武技:『バーストインパクト』会得しました


○初武技獲得:ボーナスExp獲得+100


○ダンジョンボス討伐:Exp+1500 獲得 討伐証獲

得 大魔石x1 黒魔鉱石x1 禍々しい斧x1獲得


○初ダンジョンボス討伐ボーナスExp獲得+1000


○ダンジョンボス討伐により、ダンジョン(小型)崩壊しました。


世界の救世行動『善行』:カルマ値+500+5 獲得


○称号「ダンジョンブレイカー」獲得 ダンジョン内での全行動に大成功率ボーナス+5%獲得


○獲得したExpにより、レベルが14に上昇、各種ステータスもそれぞれ上昇しました


○レベル上昇に伴い、カルマ値が(+10+5)x5上昇


○レベル10達成による、Exスキルの成長ボーナスを獲得

Lv10以下のそれぞれのExスキルレベルが1上昇しました


「擬態」スキル上昇に伴い、Exスキル『擬態抽出Lv1』と『擬態変換Lv1』が発現しました


「ヘルプ」機能が強化され「情報管理権限Lv3」獲得


○レベルアップによる派生効果、ボディの活動エネルギーの超回復が発生


それにより本体のエネルギー容量の最大値も増えました


○眷属『魔人狼』獲得 眷属の各ステータスが加算されました


魔法:攻撃魔法Lv5 支援魔法Lv5 生活魔法Lv5 が共有化されLv1が使用可能となりました


○スキル:『料理Lv3』『杖術Lv3』『体術Lv3』『召使いLv3』 が共有化されLv1が使用可能となりました


○『気配感知Lv3』と『魔力感知Lv5』獲得により、新たなExスキル『存在看破Lv1』が発現しました


○『気配遮断Lv3』と『魔力隠蔽Lv5』獲得により、新たなExスキル『存在隠蔽Lv1』が発現しました


○眷属3種以上からの『各感覚鋭敏』特性が統合され、新たなExスキル『知覚増幅Lv1』が発現しました


○称号「ウルフマスター」獲得 狼種族との相性度+50


○「魂の救済」行動による善行:カルマ値+500+5


○カルマ値が一定値を超えた事で各種『恩恵』が強化されました


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