突然ですが会議をします
「突然ですが会議をします」と俺はそう言った。
『チュッ!』と魔鼠モッチーは、姿勢を正してそう鳴いた。
――ここは王都の宿屋、俺に用意された部屋の中だ。
「議題については【ダンジョン】です!」と俺は続けてそう発言した。
『チュッチュウ!』魔鼠モッチーは、だいぶ興奮して鳴いた。
そうなのだ。今回の依頼の製造作業も、先程終わったので、今王都で一番ナウでホットな話題、つまりはダンジョン攻略とやらを、いっちょここらでやってみようか! と思っていた。
勿論俺だけで。いや正確には1人と1匹で。ウッカリ俺の正体を、他の人に知られる事は絶対にマズイのだ。
だから不用意に、PTは組めない。
(なんだかんだで、俺はそれなりに強い)
そして肝心のダンジョンの情報は、俺と魔鼠で協力してそれなりに集まっていた。
それは以下の通りだ。
①そのダンジョンを、最初に発見したとされる銀級冒険者PT4人が、現在行方不明である事。
②ダンジョン周辺では、ゴブリンの集団の死体があり戦闘の痕が見られた。
③ダンジョンの中でも、ゴブリンの姿を多数確認した。
④女神教では、そのダンジョンを出来れば早期に攻略して潰したい。
⑤他の冒険者達は、高額な報酬に釣られたか、すでに大勢が参加を決めている。
⑥女神教率いる冒険者達が、ダンジョン攻略隊として出発するのは3日後である。
「つまりは、俺達で3日後までにクリアしようぜって事」
魔鼠のモッチーは、真剣な表情でコクコクと肯いている。やばい。めっちゃ可愛いなオイ。
思わず魔鼠に手を伸ばし、全身を撫で回して俺からの寵愛を一身に受ける魔鼠。モッチーも嬉しそうにしている。
「とりあえず、俺とモッチーで突撃。無理そうなら撤退。それでいっか」
何ともいい加減な作戦会議である。だが俺もモッチーも、気配感知などのスキルを完備し索敵も余裕なのだ。
戦闘は俺だけでも充分。ゴブリンとかワンパン。むしろワンチョン?
そして俺には回復魔法もあるし、秘蔵のヤベェ薬もある。そもそもが、俺には自己再生というExスキルもあるのだった。
ああん? 上位ゴブリンのダンジョン? 俺達には全く余裕なのだ。それは間違いない事実。
またダンジョンボスを倒すと、その後ダンジョンの崩壊が始まるそうだ。
だからボス自体の討伐部位や、ダンジョンの崩壊でそれらが証明出来る形になる訳だ。
とっととクリアして、ボスとガチンコ! ボスドロ&レアドロ狙うのだ。ついでに女神教からの報酬GETも忘れずに。
ヘルプ参照し、ダンジョンの場所も検索完了している。
ダンジョンの、内部まではよく分からないが、突撃してダメそうならすぐ撤退すればいいんだ。
「よし明日だ! ダンジョン攻略するぞ!」えいえいおー
『チュッチュー!』
片手を上げて気合を入れる、1人と1匹であった。
――さあ、俺達の初ダンジョン攻略の始まりだぜ。




