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魔法がロクに使えない狼人族の魔法使い【アスカ】

この時間軸は王都近辺で魔物の上位種が発見報告がされた時点まで遡ります。

 そう私達は、臨時のPTだった。


 大剣使いの、セフハラ&パワハラでスキンヘッドの大男。彼がこのPTのリーダーだ。


 狩り人な弓使い《レンジャー》の、長髪でセクハラ&ガリガリ男。


 神経質で嫌味な、お小言が得意な神官の小男。

 

 そして魔法使いの私(アスカ)の合計4人のPTだった。


 4人全員が『銀級』冒険者で、この場所へは魔物の討伐依頼で来ていた。


 王都から南側にあるこの森では、多数のゴブリンが生息している。


 魔物とは言っても、ゴブリン自体は弱いが繁殖力があり、数が増えるのが非常に早い。

 

 放置すると、すぐに増える厄介な魔物だった。


 そして魔物が、そのまま増えていくといずれそこは魔物の巣(ダンジョン化)してしまうのだ。


 なので常時、ゴブリン等の討伐依頼は出されているのだ。


 だけどまあ、今回の依頼は少し違っていた。


 すでにこの場所では、ゴブリンの繁殖が進んでいたようだった。

 ゴブリンの上位種のような姿をした、魔物を見掛けたと報告があったのだ。


 もしかしてゴブリンリーダー? それともホブゴブリン? それとも?


 ゴブリン程度であれば『鉄級』冒険者のソロでも充分だ。

 だがゴブリンの上位種の存在。それが問題だった。


 そのせいもあり今回は『銀級』へ依頼が出された。


 そして、その依頼を受けた銀級冒険者同士が、ギルドを通して臨時でPTを組んだ。


 それが私達の今のPTだった。


 お荷物魔法使いとして有名な私だ。だからそれはすぐバレた。

 そして、やはり何時もと変わらぬ扱いをされている。


 それでも、私の他に魔法使いはギルドに居なかった。

 そして、知識などが豊富な私は、それなりに使える人材だった。


 ただそれだけの理由で、私はこのPTに存在していた。

 純粋な魔法使いとして、求められてここに居るのではない。


 レンジャーの男が、先頭で歩き周囲を索敵。


――合図があった。

 

 どうやら巣は近いようだ。PT全員が戦闘準備を始める。


『……オイ。犬女! さっさと魔力感知とやらで、正確な敵の数を教えろ!』


リーダーの大剣男は、偉そうに私に向けてそう言った。


「……。わかりました」(だから犬じゃないってば)


 私は魔法の『魔力感知(マナサーチ)』で、周囲の魔力を知覚していく。


「6・・・7・・・10。敵の数は10匹! 魔力の大きさから全て通常ゴブリンです!」


 私は魔法で得た情報を、素早くPTへと伝えた。


『ああん? たったゴブリンが10匹? 他にもっといるだろう! もっとよく探せ!』


 と大剣男からの、再度の指示だ。


 だが確かにおかしい。ゴブリンの上位種が確認されたからこそ、ギルドから銀級以上の指定で討伐依頼が来たのだ。


 私はさっきよりも魔法に魔力を込め、魔力感知距離を広げた。


「……! こ、これはっ……! 近くに小型のダンジョンがあります! そこから大きな魔力の反応あり。数は不明。ですが恐ろしい程の魔力です。私達では戦力不足かもしれません。一度撤退し、ギルドへの報告が最優先で宜しいと思われます!」


 私はそう、出来限りの献策をした。だがそれは、やはり無駄だった。


『ああん? ここまで来て撤退だぁ? 全くこの糞犬は適当こくのもいい加減にしろ! 出来立てホヤホヤのゴブリンの巣だぞ? 早い者勝ちだろこんなの!』


 小型ダンジョンと聞いて、お宝にでも目が眩んだのだろうか? でもこの魔力反応は……危険すぎる!


 PTで、私以外の3人は全員どうやらこのままダンジョン攻略をする事に決めたようだった。


 当然私には、これ以上発言する権限は無かった。


 仕方なく、気持ちを切り替えて戦闘の準備を進める。

 近くのゴブリン10匹は、すぐに問題無く倒せた。


 私達はこれでも『銀級』冒険者なのだ。それは間違いない。


 だがそれでも、いざダンジョン(洞窟型)へ入り、そのボスの存在を目の前にした時、もうその自信や余裕は失われたのだったのだが……。


 途中までは順調に、通常種のゴブリン達をなぎ倒しながら進めたのだ。


 だが最後の部屋(広めの空間)に足を運んだ私達の前には……。


 長く薄気味悪い髪、燃えるような赤い眼。

 突き出た歯に、鋭い鉤爪を具えた、醜悪で背の低い老人のような存在の姿があった。


 赤い帽子と鉄製の長靴を身に着け、手には禍々しい斧を持っていた。


「れ……レッドキャップ(殺し屋)!」


 このPTで、私達では、絶対に勝てない存在だ。

 逃げる暇も無かった。瞬く間にPTの男達3人は殺された。


 1人……また1人と殺された。そして次は私の番……。


 邪悪な笑みを浮かべ、何故かゆっくり私に近づいてくるレッドキャップ。


 だが私は、男達のようには殺されなかった。

 まず四肢の骨を折られ、逃げられなくされた。

 そして弄られる様に、少しずつ全身を裸にされた。

 殴られ、踏みつけられ、乳房を齧られながら犯された。

 

 このまま飽きられるまで、犯され続けるのだろう。

 この魔物に孕まされ、魔物の母親となるのだろうか?


 そしていつか、用済みとなり躊躇無く殺されるんだ。


……私という存在は、これで本当の無価値になった。



 レッドキャップは、私という存在を、その魂を、じっくりじっくりと蹂躙し尽くしていく。


 ああ女神様……どうかお慈悲を。

 こんな最後なんて……あんまりです。

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