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私という無価値な存在【アスカ】

この話しの時間軸は、王都近辺で魔物の上位種が発見報告がされた時点まで遡ります。

『オラッ! おせーぞ糞犬ゥ! 全く……トロトロしてんじゃねーぞ!』


 そう大声を上げているのは、大剣を背中に担いだ大男の《スキンヘッド》だ。


 その言葉に、周囲のPTメンバーも、苦笑などで同意を示していく……。


(クソッ……私は犬なんかじゃない! 誇り高き狼人族だ)


 そう心の中では、そう思ってはいても、今の私はそう口には一切出せない。


……何故なら、私はこのPTの()()()だったから。


 正確に言うと、成長が止まった私のステータス【魔力】のせいだった。


 何とか1つのPTを組んでは、それが分かると毎度お荷物扱いされ、そのPTを追い出される日々に、もう私は慣れてきっていた。


――そんな私は、狼人族では珍しく生まれつきに【初期魔力値】が高かった。


 これはきっと、魔法に適正があるに違いない! と喜んだ両親達により、私は小さい頃からとある有名な魔法学園で正統的な魔法を学んだのだった。


 自分なりには、頑張って勉強をしていた。当然だ。

 それこそ、座学で学年で一番こそは取れなかったが、魔法の実技は特に得意だったものだ。


――だがいつからだ?

 私が周囲の者達に、魔法で遅れを取るようになったのは。


 小さい頃から、魔法の天才だと持て囃されてきたが、今ではその見る影も無い。


 年齢を重ねる事で、体も精神も大きく成長し自然と伸びていく身体能力の中に【魔力】の成長だけは一切無かったのだ。


 それが分かってからは、必死に寝る間も惜しんで魔法の勉強をした。


 座学だけならば、それこそ何度も首席を取る程までに。


 だがやはり、今では不得手となってしまっていた、魔法の実技の成績で躓いてしまう。


 魔法の知識を高め、同じく経験を積んでどんどん成長していく周囲に、増えない魔力のせいで、私は全く追いつけなくなったのだ。


 私がいくら魔法の知識を高め、覚えた魔法のLVを上げても、私が撃てる魔法の回数などが増える事は一切なかった。


(※ 魔力が成長せず、それにより最大MPが伸びないので上級魔法なども含めて、簡単な魔法もロクに何度も使えないのが実情だった)


『頭でっかちのプライドだけ高い狼人族の女』


 それが、この魔法学園を卒業した私の、周囲の評価だ。


「自分に魔法の才能なんて無かったんだ」

 

――そんな事、今更気が付いても遅いのに。


 そんな私だから、宮廷魔術師などの花形職につける訳もなく、学園卒業後は失意のまま、故郷には帰れないまま流れ者の冒険者になった。


 今の私は、それでもそれなりに経験を積み、冒険者のランクは【銀級】のベテランと呼ばれる階級まで何とか上がれた。


――確かに、初級冒険者の頃は何とかなった。上手く誤魔化せた。


 魔法だけではない、豊富な知識と適切な最小限での魔法の使用で、これまでは何とか乗り切れてきた。


 しかし【銀級】になってから、それは通用しなくなった。

 味方の実力も、敵の強さも当然上がり、私の実力に一切の誤魔化しが通用しなくなった。


――それからは、PTでのお荷物扱いが始まったのだ。


 PTメンバーの、人間関係も当然悪くなる。

 そうなると、精神的にも毎日キツいものがある。


『せめて俺達の性処理でもして、PTの役に立ってみろ』と言われる事も正直何度もあった。


 私の体が目当てで、PTを組んだ男達に肉体関係を強要される事が増え、何とかその場その場を切り抜ける日々だが、断られた男達の態度は当然、日増しにどんどん悪くなっていく……。振られた腹いせって奴なんだろうか。


 それが私はもう嫌で、自分からPTを抜ける事を私は何度も何度も今まで繰り返してきたのだ。


 だがもう、ここまでが限界だった。自分でもそれがわかる。


 これ以上のランクに上がるには、どうしようもないくらいに、私は完全に実力不足なのだった。


 知識だけの、魔法がロクに使えない狼人族の女魔法使いのお荷物。


――それが私という、無価値な存在だった。



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