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ドラゴン退治とか、させられないよね?

『……ユウコさん。こんなオレを、救ってくれて、本当にありがとう』


 この少年はルークだ、そして俺に深く頭を下げそう言った。


「私の方こそ。こんな形でしか、貴方を救えなかった。そんな姿にしてしまってごめん!」


『それは違いますユウコさん! 逆、なんです。あのまま命が助かったとしても、オレはきっと、ここまで救われる事は無かったんです。オレは……この姿になって初めて、人生の()()()()()()()()()を貰えたんです。それに勝る救いはありません。これこそがオレの本当の意味での救済なんです!』


 そう言われて、やっと俺も気持ちを和らげる事が出来た。


(そうか。ルークにとって、これが本当の意味での救い)


……真なる救世か。俺にそんな事が出来たんだな。


「それじゃルーク。これからどうする? その姿になってから特に体の支障は無い? どこか具合が悪いとか。それと、もし良ければ私と一緒に王都へ行くとかどう? 1ヶ月くらい仕事の予定なんだけどさ」


『王都行きの件ですよね? 知っています。それよりも、ユウコさんちょっと見てくださいコレ! (ヒョイッ)こんな重たい物も、今では片手で持ち上げられるんです。以前の体では、考えられないくらいの凄い力です。それに加えて、今までのオレの記憶や磨いたスキルはそのまま使えるのって、まさかこんな事ってあるんですね。全く不思議だけど、最高ですよユウコさん!』


 そ、そうなのか? それは思わぬ副産物だった。


『はい、だからオレ……。まずは自分で、今度こそ本気で頑張ってみたいんです! 冒険者として最初から、やり直したいんです。いつかオレが、ユウコさんみたいに強くなれたら、ユウコさんと対等に肩を並べて戦えるようになったら、本当の意味での仲間として、オレとPTを組ませてくれませんか? 是非お願いします』


 そうか。俺も何となくだけど、その気持ちわかる。


「わかった。それなら精一杯頑張って。とりあえず冒険者ランクはセーブして。金級【ゴールド】くらいまでにしてね? あまり有名人になられても困るのよ(苦笑)。それと私は、いつか世界中を、楽しみながら観光して回りたいんだ。そしてここだ! と思った場所で、家を買って仲間や家族と団欒して、のんびり暮らしたいんだ。毎日美味しい物を食べ、たまに温泉に入って寝るみたいな、そんな平和なスローライフを送りたい。でもその夢が、有名になったルークに巻き込まれ、ドラゴン退治を指名依頼される様に事になったら、私は絶対に嫌だからね?」


『あはは。そこはせいぜい気を付けます(笑)それじゃオレは、この街でもう一度冒険者をやり直してみますね。そしてどこかでダンジョンも挑戦してみたり、とにかく鍛錬を頑張ります!』


――そう言った笑顔のルークは、本当に幸せそうだった。


 そしてルークには、生活費として【銀貨20枚】新しい衣服や装備一式などを買ってあげた。


 後はルーク次第だ。頑張れよ少年!


「後、宿屋はここを使うといいよ。女将は美人で親切だし、料理は美味い! 私は1ヶ月くらいで王都から戻る予定」


 女将にも説明し、少年ルークが私の部屋をそのまま借りられるようにしてやった。


 冒険者ギルドにも同行し、ルークの新たな冒険者プレートも発行してった。全く至れり尽くせりだな俺。


「ルークがもし、長期不在するとか何か伝言があれば、その時はここの女将に伝言してね?」


『わかりました。そうします』


『ユウコさん、孤児院の少女さんの方は、オレも気に掛けておきます。だからご心配なく! 王都でお仕事頑張ってきて下さい!』


 頼もしいと感じる、少年ルークの発言を受け俺は準備された王都行きの馬車に乗り込んだのだった。


――いよいよ王都か。


 観光や美味しい食べ物を楽しみ、特産品など買い占めて新しい商品開発もしまくって、またガンガン稼いでやるぜ!


……本当に、俺ドラゴン退治とかさせられないよね?

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